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【PREXリレーコラム №16】途上国の発展と安定のため、PREXの地道な支援、努力を望みたい- PREX Island

日本の公的機関
PREX監事 大阪国際フォーラム 会長 萩尾 千里 氏

私が朝日新聞社を退職し、関西経済同友会の事務局長に就任してしばらくするとPECC(太平洋経済協力会議)第6回日本総会が大阪で開かれることがわかった。
そんなことは事前に一切知らされていなかった。そればかりか、その総会が1年後に控えているのに、その実行組織も資金調達も手がついていなかった。
実行組織は関西経済同友会が担うのは当然としても、お金の調達をどうするかが頭痛の種だった。世界各国から多数の要人が来阪する。その会議に要する費用は1億5千万円。そのうち半額の7500万円は国が持つとしても、7500万円は受け入れ側の関西経済同友会が負担しなければならない。同友会にそんな負担能力はない。
私は転職早々に大変なお荷物を背負い込んだと心を痛めた。それでもダイキン工業の山田稔社長(当時)と三和銀行の神田延祐副頭取(当時)の奔走と、ダイキン工業の井上義國副社長(当時)と私の尽力で何とか乗り越えた。

それ以上に難題だったのは、この会議の目玉としてアジア・太平洋地域の途上国の発展を支援するため人材養成機関をつくろうとプロジェクトを打ち出したことである。
その趣旨は、日本は敗戦で廃墟の中から世界第2位の経済大国に成長した。その成果を途上国の発展に貢献しようという大変高邁な理想に根差している。
ただその理念は尊いとしても、これも多額なお金とその人材養成に協力してくれる企業を必要とする。果たしてこんな立派なプロジェクトが実現できるだろうか。私は再び心を痛めた。井上義國さんと2人で東京に出向いて、外務省高官に協力をお願いしたら「そんなことをするより貧しい人に寄付でもした方が良いのでは」と軽くあしらわれた。
山田さんはまず30億円を集めようと打ち出した。私は「それだけの高額を目標にして集まらなければ恥をかきますよ。それより最初は3億円から出発して、小さく産んで大きく育てた方が賢明ではないですか」と反論した。結果はどうか。井上さんと私が走りまわったこともあるが、山田さんと神田さんの先見の明と尽力で30億円を超える基金が集まった。

そして今日、公益財団法人 太平洋人材交流センター(PREX)はとどまることなく延々と役割を果たし続けている。事務局の人たちの多大な努力のお蔭である。
ロシアのウクライナ侵攻、中国、北朝鮮の覇権主義がますます強まる中、自由・民主主義、司法、人権などの普遍的価値観を共有する諸国の結束が強力に求められている。PREX設立の先見の明が今、改めて評価される。

アジアを始めとする途上国の発展と安定のため、PREXの地道な支援、努力を望みたい。そのことが日本の普遍的価値観を守る礎となる。がんばってください。

元 関西経済同友会 事務局長  萩尾 千里

  • 掲載日:2022年11月14日
  • 企業名:大阪国際フォーラム 会長
  • 氏名:萩尾 千里 氏
  • 役職・職名:PREX監事

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