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シンポジウム2024パネルディスカッション⑥- PREX Island

日本の専門家 SDGs
パネルディスカッション:世界とともに歩む。~国際協力=日本と世界をつなぐヒト・コト~⑥

活動の原点は、青年海外協力隊

コーディネーター 大野 泉氏

次は、半井さんに伺います。
半井さんは、ザンビアで海外協力隊を経験し、それからコーエイアフリカを設立し、今度は起業されたそうですね。
早速、シンポジウムの視聴者から
「すごい感銘を受けた。半井さんの活動の原点は、青年海外協力隊での活動ではないか。その活動の経験が、自分に及ぼした影響を聞きたい。私も、協力隊に応募して、あなたの後に続きたい」
というメッセージが届いています。
また「なぜスポーツなのか」についてもお聞きしたいです。

半井 真明氏

大変励まされるコメントをありがとうございます。
私の原体験というのは青年海外協力隊での活動にあります。
協力隊に参加する前は、国内で都市計画のコンサルタントをしておりまして、現地の方に「教える」気満々でした。
実際その2年間は、私の方が、人生経験も含めて多くを学んだ大変貴重な経験でした。
具体的には、私は、GISや、都市設計、建築設計などプランニングのノウハウを指導しに行きました。
しかし、うまく技術が定着しなかったものもありました。
その過程で、やはり、「技術のローカライズ」が非常に重要だということを痛感しました。
これが今に至る大きな学びになっています。

CAD(コンピュータ製図)のノウハウを教えた時に、それを使って副業を始めた方がいました。
個人として建築の設計をするようになり、所得が増えるので、どんどんとその技術を身に着けていきました。
「ローカライズ」や「ニーズに沿ったフォーマットの提供」により、その後の技術定着に繋がるという学びでした。

「なぜスポーツなのか」というのは、よく聞かれる質問で、端的に言うと、私自身スポーツがすごく好きだということです。
スポーツには、社会的な垣根、例えば宗教や民族をブレイクスルーする力があります。
CHEZAの共同代表している雨宮は、彼女がアフリカに滞在している時に、ケニアの難民キャンプで支援をしていました。
難民キャンプは、いろんな民族の方がいて、コミュニティ形成が非常に難しい環境でした。
それをうまく組成するために、民族を越え子どもたちのチームを作って対戦するスポーツイベントを開催しました。
トーナメントが始まった頃は、違う民族の子どもたちのことを応援できない親御さんがいたのですが、勝ち上がっていくにつれて、どんどんと違う民族の子でも応援するようになっていきました。
これは非常にいい例です。
スポーツの中にはこういう事例が眠っています。
海外で日本人が現地の方と一緒になってプロジェクトを進めていく上で、民族のコンフリクトをどう解消して進めていくかはセンシティブかつ重要な視点で、これらの知見は重要なヒントになっています。
スポーツから規律性や協調性を身につけることもでき、人材育成にスポーツの要素を交えて進めたいと考えています。

コーディネーター 大野 泉氏

ありがとうございます。

海外での経験を仕事にどんなふうに生かすか?

コーディネーター 大野 泉氏

次は、遠山さんに伺いたいと思います。
遠山さんは学生時代に東南アジアに行き、また中国の南京大学にも留学し、中国の方といろいろな話をしたと聞きました。
そういった海外での経験は、今のお仕事に就くときに、どんなふうに生かされていますか?

遠山 晴香氏

今までの経験が今の仕事にどう生かされているかという点について、私自身は転勤族で、いろいろな国に住んだことがあり、大学時代には留学しておりましたので、常に自分が日本代表として評価されているという自覚が日頃から身についていたというのが大きいと思っています。
今、現在も大きい組織の肩書きがなかったとしても、自分が個人としていかに信頼を構築できるかというところに重点を置いています。
個人として信頼を得られないとその先に続く話が出てこないので、まずは一個人として好きになってもらう、日本というバックグラウンドを好きになってもらう、ダイキンという会社自体を好きになってもらうという点に気を遣って日々過ごしています。
例えば、自分が相手と同じ目線に立って話をすることやどっちが上という目線を持たないこと、ギブアンドテイクで、常に相手にとって「この人から得られるものがあるかもしれない、一緒に何かをしたい」と思っていただけるような情報共有を常に心掛けています。

コーディネーター 大野 泉氏

日々のお仕事で、フィリピンの政府の人、町のエアコンを売っているお兄ちゃんやおじさん、おばさんとも話をされるなかで、「信頼」がどういうふうに役立つのか、ご経験があれば教えてください。

遠山 晴香氏

お会いする方がどういう人なのか、どういうことに興味があるのかというのは、常にアンテナを張って、事前にリサーチをした状態でいきます。
いろいろな引き出しを持っていくことによって、その人と対話した時に、「あなた、このウェブサイトでこういう発信をしていたでしょう」と示すことで、その人が「あ、この人は自分に興味があるんだな、好意を持ってくれているんだな」と感じて、距離感を詰めることができるのと思います。

コーディネーター 大野 泉氏

視聴者から、こんな質問をいただいています。
世界の気候変動や温暖化への対応に関連して、会社の利益と住民の利益が反したことはないですか?
もしあれば、教えてください。

遠山 晴香氏

先程のプレゼンテーションでは、きれいなお話をしましたが、その裏側には、非常に泥臭いことや苦労もあります。
例えば、フィリピンの今で言いますと、より省エネ性の高い商品を市場に広めるためには、省エネ性の低い商品を「足切り」をしていかないといけません。
実際には、省エネ性の低い商品であっても、それを売って生計を立てている人や、その商品を生産している工場で働く人があり、相反する利権の人がいます。
その人たちとも同じ目的に向かっていけるようコミュニケーションを取って相互理解を進めようという取り組みをなるべくしようとしています。
競合する大きい企業同士では利益が相反することもあります。
ただ、同じ産業のアソシエーションに参加しているので、個人的に距離を掴んで、実情を伺ったり、こっそりと話をさせてもらったりして、どういった共通の認識があり、歩み寄っていけるかというのを、日々試行錯誤しています。

コーディネーター 大野 泉氏

人間力を感じました。
どういう社会を作りたいか、どういう生活をしていきたいかを、いろいろな人たちとお話しながら、日々コミュニケーションをとっているのですね。

遠山 晴香氏

上の方から町の電気屋のおじさんまで、いろいろな人と話します。
さまざまな引き出しを求められて、 時には粗相をしてしまうこともありますが、人間力が魅力的であれば、一度失敗をしてしまったとしても、その関係をまた再構築する可能性を作れると思います。
そういう意味でも、なるべく「いい人」でありたいと意識しています。

コーディネーター 大野 泉氏

まさに、若い時の経験がフルに生きていますね。

海士町とJICAのつながりのキッカケ

コーディネーター 大野 泉氏

河添さん、グローカルの取り組みが進んだきっかけとして、JICAとの関わりがあったと思いますが、海士町はどういうきっかけでJICAとの関係ができたのでしょうか。
協力隊の方が随分来ているとのことですが、いつ頃から、どんなことがきっかけだったのでしょうか。

河添 靖宏氏

JICAと海士町が研修事業を始めたのは2016年で、教育の魅力化が始まったのが2008年です。
海士町には、教育の魅力化の一環で、ブータンのグロス・ナショナル・ハピネス(国民総幸福量:経済よりも幸福を求める国づくり)に注目し、そういう島にしていきたいという有志がいました。
ブータンに学ぶことあるだろうということで、ブータンの研修事業が作られました。
JICAが提案を受けた形です。
JICAボランティアの帰国者が海士町内には10名ほどいます。
長い方で約10年前に移住してきた方がいます。
主に初中等、高等教育分野に従事されている方が多く、保健師として勤務されている方もいます。
「学びの島」海士町ならではの特徴ある教育が進められていること、本土と比べると教師の裁量や自由度が大きくやりがいがあることなどの要因があると思います。

シンポジウム2024パネルディスカッション⑦へ

  • 掲載日:2024年4月6日
  • 研修名:PREX×JICA関西シンポジウム
  • 氏名:大野 泉氏,半井 真明氏,遠山 晴香氏,河添 靖宏氏
  • 役職・職名:大野 泉氏(政策研究大学院大学(GRIPS)教授)
    半井 真明氏(合同会社CHEZA(チェザ)共同代表)
    遠山 晴香氏(ダイキン工業株式会社 ダイキンフィリピン社 出向 営業企画マネージャー)
    河添 靖宏氏(海士町郷づくり特命担当グローカルコーディネーター)

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