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シンポジウム2024パネルディスカッション⑤- PREX Island

日本の専門家 SDGs
パネルディスカッション:世界とともに歩む。~国際協力=日本と世界をつなぐヒト・コト~⑤

コミュニティづくりから国際協力へ

コーディネーター 大野 泉氏

では、ここから個別に聞いていきます。
まず日比野さん、河添さん。
日比野さんは長田区から始まって神戸市、それから河添さんは海士町を拠点に活動していらっしゃいます。
お二人とも、コミュニティづくりに取り組み、国際協力へと展開してきたと理解しました。
そういった展開を可能としたものは何なのか。
また、そこで直面する課題を解決する上で、国際協力の文脈から得られたポジティブなヒントがあるでしょうか?

日比野 純一氏

1995年の阪神・淡路大震災以降、ずっと長田のコミュニティにへばりついて、綺麗な言葉で言えば「多文化共生のまちづくり」に携わりました。
コミュニティの課題解決など、コミュニティのことを深堀り、深堀り、深堀り、深堀り、深掘りしたら、ぱっと世界の人につながってしまった、それは、同じ課題を持っている仲間たちが世界中にいるということです。
例えば、私たちの場合は、災害にあったコミュニティをどう復興していくのかとか、災害に強い、弾力性のある地域をどうやってつくったらいいのか、マイノリティも生きやすい社会をどうやってつくっていくのかという課題です。
文化も国も全然違う、言葉も違う、けれども、語れる仲間たちが世界にいて、私たちがやってきたことは、世界の人たちのヒントにもなるかもしれないし、彼らがやってきたことが、私たちの街のヒントにもなります。
要は、コミュニティを深掘りしたら世界のコミュニティの人たちに出会った、それが、私たちが言う、「国際協力」です。
私たちの活動は、阪神・淡路大震災の被災地の神戸で始まった活動です。
このJICA関西も含めて、世界に「防災」を伝えていくということは、日本の国際協力の活動で大切なことです。
たくさんの経験、知識を持っていると考えています。
ですが、例えば、インドネシアで活動していた時に、「ゴトンロヨン」という、ジャワの人たちが使っている相互助け合いを意味する言葉を知りました。
「ゴトンロヨン」は、誰も地域の中で孤立することはない、地域をつくっていく中でみんな助け合うということです。
一方、災害があった日本の社会では、例えば復興住宅で、「孤独死」があります。
孤立をしていて、コミュニティの中で助け合えることがなかなか難しい状況です。
インドネシアで活動していく中で相互に助け合えるコミュニティをどうつくっていくのかということをたくさん教えてもらいました。
それを長田区や私の住んでいる垂水区という自分のコミュニティで、実践していくことになっています。
それぞれが持っているものを分かち合い、学んでいくということで、自分が生きているコミュニティをより良くしていく活動は、世界のいろんなところで行われていて、仲間たちが世界にいます。
その仲間たちと、何年かに一度、世界のカンファレンスとかで会うと、その後の、例えば2年、3年、4年の頑張りにもなります。
それにいろんな人たちが参加したらいいと思っています。

コーディネーター 大野 泉氏

ありがとうございます。
「コミュニティ」を大事に、それを共有していくと、その先に国際協力があるということですね。
このように多文化共生と国際協力を繋ぎ、展開していけたのは、コミュニティ活動を情熱を持って続けられたからだと思います。
日比野さんがこの活動を継続していける秘訣、情熱の原点は何でしょうか。

日比野 純一氏

活動を継続する秘訣は、いろいろな立場、言葉も含めていろいろな文化、いろいろな違った人たちと一緒に楽しみながら活動する、楽しむということです。
活動していたら、当然辛いこともたくさんありますが、でも、楽しみながら活動しています。
「ファンワーク」という言葉があります。
インドネシアの仲間から教わりました。
難しい顔をして活動するのではなく、難しくてもフワっと楽しもうということです。
これは、私たちが阪神・淡路大震災後、神戸長田の活動でやってきたことだと、インドネシアで活動する中で教わりました。

コーディネーター 大野 泉氏

ありがとうございます。
では、河添さん、かつての過疎地から逆転して生徒数が増えたという例を、先ほどご紹介くださりました。
子どもたちが、海士町で育ち、いろんな人たちと付き合いに恵まれ、世界を見て育った。
こうして成長した青年たちが、新しいインパクトや好影響を与えている事例がありますか?

河添 靖宏氏

現在は、世界が身近になっています。
世界と混ざり合っている状況の中で、暮らしやすい世の中をどう作っていけるのかだと思います。
大きな課題としては、人口が減り、担い手が減り、できることが減っていく、そして社会機能が回らないという点をいかに克服していくのかです。
海士町では、魅力ある人を育み、関係人口を拡大し、社会を維持していく政策をとりました。
魅力ある人の具体像として、JICAの研修講師、つまり、発信力を有する人を育てることを重視しました。
それにJICAも協力させていただきました。
魅力ある地域を作るのは、魅力ある人です。
その魅力ある人をいかに育んでいくのかという点が重要だと思います。
ブータンの人たちと関わる中で、学ぶことがあります。
ブータンは観光立国です。
山の中にある小さな70万人ぐらいの国ですが、「観光」については非常に新しい考え方を持っています。
例えば、観光税を導入しています。
ブータンの人が海士町に来て「キレイな海がある。海の幸が豊かだ。有効活用してますか?」と言います。
「島の入口で観光税を取ってみたら?」と提言してくれることもあります。
研修の中で、日本側がインプットする研修ではなくて、意見を引き出しながら、地域のために意見を活かすような取り組みがこれからは重要だと思わせてくれました。
そういう世界のいいところを学ぶ機会は、国際協力をやっているから生まれます。
人と人とが交わることによって、そういった知恵も得られます。
高校生が社会人になり、いいインパクトがあったかという点について、もちろん、担い手として戻ってきてくれる人たちもいます。
海士町は、農業や漁業といった一次産業が主ですが、担い手になってくれる人はいます。
また、人の循環、還流も重要な視点です。
海士町で育った人が、日本、あるいは世界のどこかで活躍してくれれば全体最適に叶っているとも言えます。
海士町で学んだ人たちが世界、日本で活躍し、その中で、海士町が好きな人たちはここに残って一緒にやっていく、そういう人のサイクルをどんどん作っているところが特徴だと思います。
ここで学んだことを島に還元してほしいという希望もありますが、むしろ、いろいろなところで還元できればいいと広い心で見ている人が多い様に思います。

コーディネーター 大野 泉氏

ありがとうございました。

シンポジウム2024パネルディスカッション⑥へ

  • 掲載日:2024年4月6日
  • 研修名:PREX×JICA関西シンポジウム
  • 氏名:大野 泉氏,日比野 純一氏,河添 靖宏氏
  • 役職・職名:大野 泉氏(政策研究大学院大学(GRIPS)教授)
    日比野 純一氏(特定非営利活動法人エフエムわいわい理事)
    河添 靖宏氏(海士町郷づくり特命担当グローカルコーディネーター)

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