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シンポジウム2019パネルディスカッション②- PREX Island

SDGs
パネルディスカッション:世界とシェアする日本の未来②

左から高橋 基樹氏 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究 研究科教授、神戸大学名誉教授)
フェルダ ゲレゲン氏 (UNIDO東京投資・技術移転促進事務所 次長)
ウスビ・サコ 氏(京都精華大学 学長)
高津 玉枝氏(株式会社 福市 代表取締役)
西堀 耕太郎氏(株式会社 日吉屋 代表取締役)

変わることの難しさ

コーディネーター 高橋氏:
これから「世界とシェアする日本の未来」ということでいくつか議論をしてまいります。
変わるということはとても「痛いこと」ですので、非常に難しい面もあります。
そこでまず「難しさ」ということを考えてみたいと思います。
今年の8月に重要な日本のグローバル化を考える上で重要な催し物が開かれます。「TICAD7(第七回アフリカ開発会議)」です。
民間企業からは、日本の政府に対して
「安倍首相は『アフリカは最後のフロンティア。今がチャンスだから行け』と言われる。
しかし調査すればするほどアフリカに出ていくのは、すごく大変だということがわかる。
今回のTICAD7では、企業がアフリカに出ていく難しさをいろいろ取り除き、円滑にしていけるように話し合ってほしい」
と要望が出されています。
そこでゲレゲン氏に、
先進国の企業がアフリカをはじめとする途上国に進出する際、どういう難しさがあるか、
UNIDOはそれに対して取り組まれているか、
教えていただきたいと思います。

ゲレゲン氏:
アフリカだけでなく途上国に行くときは、懸念やリスクが多くあります。
多くの企業は、まず訪問して、現地でパートナーと一緒にビジネスをするか、それとも100%その企業の力で進めるかを考えます。
その時、相手国政府のどこの誰に相談したらいいかわからない。
そのような場合、私たちが規制や法律関係の担当である投資庁の人を紹介することが多いです。
よくあるのは、企業が、ビジネス立ち上げのためにコンサルタントや、弁護士、会計士を雇うのですが、
その方のアドバイスには、間違いもあります。
その対策としては、様々な政府機関に情報確認しながら仕事を進める必要があります。
そのサポートを国際機関であるUNIDOとして行っています。
リスクはどこにでもあります。
どのくらいリスクをとるのかは考えなければなりません。

問題にぶつかったら、動きながら考えること。

高橋氏:
高津さんは、問題なくすらすらとビジネスを行っているように見えますが、苦しかったことはありますか?

高津氏:
フェアトレードという概念が非常にあやふやで、私自身、フェアトレードを始めることに、ものすごく躊躇しました。
例えば、フェアトレードのマークに依存して「これはフェアトレードだ」というのは違うなと、もやもやしていました。
そこでフェアトレードインターナショナル(フェアトレードのマーク認証の団体)に行って悩みをぶつけました。
フェアトレードインターナショナルの方は
「世の中に完璧なものができるまで待って動いていては遅いことがいっぱいある。物事というのは走りながら考えることもできるのではないか」
とおっしゃいました。
その言葉は、腑に落ち、これだけ変化の激しい時代に生きていて、全部が整ってから何かをしようというのはなかなか難しいと再度、認識しました。
本気でやりたいとき、行動力がモノをいいます。
難しい部分でお話すると、途上国の人から注文とは違う個数や形状のものが送られてくることがあります。
その度改善策を整えながら、そして辛抱強く途上国の人々と向き合いながら変えること、守ること等を話し合ってきました。
最初から違うこと理解することは非常に重要です。
そして、お互いのミッションを共有することで、やり方は違ったとしても目指す世界が一緒であれば、また頑張っていくことができると思います。

現在店舗がある阪急百貨店は、商品の品質に対して、日本で厳しい基準を設けているところの一つです。
もちろん商店街の空き店舗で静かに販売もできましたが、メインストリームに乗せて販売できることを証明したいと思ったので
基準が大変厳しいところで日々戦っているというのが現実です。

高橋氏:
私はケニアのナイロビのスラム街の横にあるモノづくりの場所に行って調査をしております。
そこの人たちにオーダー通りにモノを作ってもらうということがいかに大変かということは想像がつきます。
非常に印象に残った言葉は、「辛抱強く」ということです。
基調講演でお話しいただいたサコ氏は「衝突することを恐れず、勇気を持つことが重要だ」とおっしゃいましたが、勇気をもってぶつかった後、関係が終わってはだめなんですよね。
そのあとも、話を続け、食い違いを探し、辛抱強く絆を紡ぎなおさなければならない。
忍耐強さも大事で、日本人はそこが、非常に欠けていると思います。

熱意と継続した努力で難しさを克服する

高橋氏:
「難しさ」ということで西堀さんにもお話を伺いたい。
匠の技術を継承していくのは本当に大変なことで、先ほどおっしゃった「馬鹿者・若者・よそ者」を取り込んで、発展していかないといけないと思います。
それから65歳の職人さんに自己をアピールする場を作ったとおっしゃっていましたが、すべての方が海外にアピールできるとは思えません。
その辺の難しさというのをご紹介いただきたいです。

西堀氏:
伝統産業とひとまとめにすると語弊もありますけれど、誇りがあり、新しく変えるということに抵抗がある方も多く、変えることは逆に「悪」という話がでたりします。
それを繰り返してきた人にとってそれが存在意義であり、それが技術の塊でもあるので、尊敬しています。
ですが、結局どれだけ素晴らしくてもお客様に伝わらなければ価値がないのと同じではないでしょうか。
伝統工芸に限らず、新しいことに挑戦するのは抵抗、不安、心配等があります。
最初、和傘の照明をやると言った時は社内や先代に、傘のない傘屋と言われたんですね。
そういう声は努力して結果を出せば変わることもあります。
例えば、数年前から支援させて頂いている方で60代のある伝統工芸の職人さんは、初めにお会いした時は本当に暗い顔をされていましたし、
スマホもメールも使ったことはなく、英語などできませんでした。
ところが、今では世界で活躍されています。
年齢が高くても、ITが得意じゃなくても、英語が出来なくても熱意と継続した努力が、彼を支えていたと思います。
はじめから結果がでるわけはありません。
周りに何を言われても価値があると主張し、変化しようとする努力が大切です。

外国の方と働く難しさは?

高橋氏:
私は、以前は5年間サラリーマンをやっておりまして、その時、同調する人間はまとも、同調しない人間は変わっていると言われておりました。
異なる人という意味の異人をとりいれていくことは非常に難しいですが、例えば外国の方々が日本の伝統工芸を継いでいくということもあるかもしれません。
それには、多大なご苦労があると思いますし、逆に希望があるかもしれない。

西堀氏:
外国の方と何かをするのは言葉で書くと、とても難しいことだと思います。
文化的な背景、生活習慣、距離、宗教等、違いがあるからです。
それぞれの国に違う素晴らしさがあるので、お互いに尊重し、認め合える関係を作ることも大事です。
それと同時に主張もしなければならない。
慣れていなくても、挑戦していかなければならないと思います。

シンポジウム2019パネルディスカッション③へ続く

  • 掲載日:2019年5月26日
  • 氏名:高橋 基樹氏,フェルダ ゲレゲン氏,ウスビ・サコ 氏,高津 玉枝氏,西堀 耕太郎氏
  • 役職・職名:高橋 基樹氏 (京都大学大学院)
    フェルダ ゲレゲン氏 (UNIDO東京投資・技術移転促進事務所 次長)
    ウスビ・サコ 氏(京都精華大学 学長)
    高津 玉枝氏(株式会社福市 代表取締役)
    西堀 耕太郎氏(株式会社日吉屋 代表取締役)

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