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シンポジウム2019パネルディスカッション①- PREX Island

日本の専門家 SDGs
パネルディスカッション:世界とシェアする日本の未来①

左から高橋 基樹氏 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究 研究科教授、神戸大学名誉教授)
フェルダ ゲレゲン氏 (UNIDO東京投資・技術移転促進事務所 次長)
ウスビ・サコ 氏(京都精華大学 学長)
高津 玉枝氏(株式会社 福市 代表取締役)
西堀 耕太郎氏(株式会社 日吉屋 代表取締役)

パネルディスカッション登壇者紹介

コーディネーター 高橋 基樹 氏:
後半部のパネルティスカッションに登壇いただく方々をご紹介します。
国連工業開発機関(UNIDO)の東京投資技術移転促進事務所次長のフェルダ・ゲレゲンさん。
株式会社福市の代表で、セレクトショップ Love&sense を率いる新しい時代のフェアトレードのリーダー、高津玉枝さん。
和傘づくりをはじめ和紙を使ったさまざまな照明等のつくり手、株式会社日吉屋5代目当主の西堀耕太郎さんです。
同時に西堀さんはTCI 研究所で中小企業のアドバイスを手掛けておられます。

基調講演のウスビ・サコ氏から「個人の変化が社会の変化につながる」というお話がありました。
「企業」が変わるということも個人が変わることと同様、重要です。
このパネルディスカッションでは、重要な社会の一員である「企業」のあり方についても議論を深めたいと思います。

UNIDOとは??

ゲレゲン氏(UNIDO東京投資・技術移転促進事務所 次長):
UNIDOのゲレゲンと申します。
私はトルコ生まれ。UNIDOの仕事のため、23年前に日本に来ました。
国連職員という立場から、さまざまな国に出向き、その国の人と仕事をしています。
UNIDOは1960,70年代の高度経済成長期に、途上国のリーダーによる産業開発・貧困削減を援助することを目的として生まれました。
ニューヨークで発足し、1981年にウィーンに本部ができ、81年から国連専門機関となりました。
東京事務所も1981年に設立されました。

UNIDOの事業内容に関連したSDGsと民間企業のつながり

ゲレゲン氏:
SDGsは、17の目標を2030年までに達成するということです。
その中で、UNIDOは、No.8「働きがいと経済成長」とNo.9「産業と技術革新の基盤づくり」を特に注力しています。
我々の主な仕事は、途上国の投資促進機関と日本企業>のビジネスマッチングやその後のサポートです。
例を3つ挙げますと、1つ目はユニクロ。
2008年にバングラデシュの投資庁の方を招待し、ビジネスマッチングと投資の手伝いをしました。
2つ目は矢崎と住友電工。
モロッコで11の工場建設をサポートし、約28,000人の雇用を創出しました。
産業サプライチェーンが改善し、輸出もしています。
3つ目は横浜の中小企業のヒロキ。
エチオピア産の羊の皮を使いファッション用品を製造しています。
この企業は約100人の雇用を創出しました。
羊の皮はとても柔らかく、洋裁が難しいので、職業訓練に特に力をいれています。
この3つの例は、各社とも、SDGsについて考えて事業が生まれた訳ではありませんが、結果としては、SDGsに貢献しています。
SDGsについては、企業がどう対応し、どう報告するかが非常に大事なポイントになります。
これから途上国に投資される方はぜひ考えていただきたい点です。

高橋氏:
多くの企業は、あまり意識していなくても、SDGsに貢献しています。
意識してSDGsに貢献し、社会全体に対して企業責任を、証明・説明することで、企業の価値も上がっていくでしょう。
ゲレゲン氏のお話はどちらかというと日本企業の途上国進出のお話でしたが、グローバル化の中では、むしろ途上国の人や商品が日本に入ってくることを、どう考え、それにどう寄り添っていくかを考える必要があります。

持続可能な社会に向けて行動する人を増やしたい

高津 玉枝氏(株式会社福市 代表取締役):
みなさん、こんにちは。
株式会社福市の代表をしております高津玉枝と申します。
私たちはフェアトレードのセレクトショップ「Love&sense」をやっております。
私たちの会社のやっていることは大まかに下の3つです。
1.消費者向けのセレクトショップ
2.企業向け研修
3.京都市と共同事業 イノベーション・キュレーター塾
私たちの会社のミッションは、「持続可能な社会に向けて行動する人を増やす」です。
持続可能な社会を実現するために、行動できる人をどうやって増やしてくのかを考えているのが私たちの会社でございます。

私は、元々はマーケティングの会社をやっていました。
「日の目を見ない商品にスポットライトを当てることで、人が豊かになることを推進したい」と思っていましたが、

気づけばデフレで安いものを大量に消費させる方法ばかり考える会社になっていました。
それに誇りが持てなくなってきた2000年ごろ、フェアトレードの概念を知り、自分たちでも形にしてみようと今の会社を作りました。

フェアトレード商品をもっとクールに

高津氏:
3年前くらいだとこの会場にいらっしゃる半数ぐらいの方しかフェアトレードをご存じありませんでした。
途上国の貧困地域、もしくはなにか障害を抱えている人たちから、ものを適正価格で購入し、市場で販売し、仕事の機会を創出している、女性のエンパワメント等に貢献しているというのが1つのフェアトレードの形です。
たぶんみなさんの中でフェアトレードの商品というと、とても民族的で、壊れやすく、普段の生活で使いにくいものとイメージされる方が多いかと思います。私たちはもっとクールなモノを取り扱っています。

例えば私たちが販売している、プルトップでできたバッグがあります。
ブラジルでリサイクルのプルタブを洗い、叩き、きれいにして、編んでいます。とてもクールな商品と思いませんか?
こういうものを販売することによって、ブラジルの貧富の格差、ブラジルで職のない女性たちがものを作っていることを知っていただき、これを持っていることが「すごくかっこいいね」と思ってもらえる、そういう文化をこのフェアトレードを通して伝えていきたい、というのが私たちの根本的な思いです。
会社の顔として外にSDGsの活動を訴えるということもしています。
例えば、高島屋や阪急百貨店のSDGsの取り組みの一環として、一階の一番いいスペースでイベントを展開しています。

最後に一言お伝えしたいのは、「世界のことも100年後のこともすべて私と繋がっている」ということです。
今日の皆さんの行動がどうSDGsに繋がるかだけではなく、100年後、もっと先までどう繋がっていくか。
個人が、企業が、どう変わっていくか、私たちはその時代の転換期にいると思います。
その中で私たちの活動が何かのお役に立てたらうれしいです。
「あなたはどんなアクション起こしていきますか」という投げかけをして、私の発表を終わりたいと思います。

高橋氏:
フェアトレードは、途上国のかわいそうな現実に対して、意識高い系の人々が高いお金を払って買う。
少々壊れやすかろうが、長持ちしないで嗜好にも合わなくても、無理して買うというイメージがあったと思います。
高津さんはそうではなくて、先進国、日本の市場でも勝負できる商品開発を追求しておられます。
フェアトレードも、かなり新しい時代に入ってきたと思います。
今、「個人や企業が世界を俯瞰して、世界のことをよく考えて変わっていかなければならない」というお話がありました。
一方で日本には古い歴史があります。人口が減少し、世界に開かれても生き残れないのではないかという不安もあります。
次は、日吉屋、TCI研究所の代表取締役の西堀耕太郎さんにお話ししていただきます。

伝統工芸も、フェアトレードも、途上国も抱える問題は同じ

西堀 耕太郎氏 (株式会社日吉屋 TCI研究所 代表取締役):
みなさんこんにちは。
日吉屋の西堀です。
本日のシンポジウムのテーマは、「世界とシェアする日本の未来」ですが、今日グローバル化が促進されている1つの理由は、インターネット等で世界中の人が気軽に繋がれることがあげられると思います。
その中で、デジタルとは全く反対のアナログ的な職人の仕事がどうやって価値を生み出せるのかということを考えています。
我々は、京都で、1000年程度の歴史がある和傘を作っています。
和傘は、最初は雨具ではなく、神様の魔除けとして作られたもので、時代に合わせて変化してきました。
和傘の最盛期だった昭和は1,700万本の生産量がありました。現在では、日常で和傘を使用している方はおらず、日本の伝統芸能的なところで小道具として使われています。
これでは、業界として存続できません。
そこで、現在は、竹の骨組みを加工して和紙を貼り、開閉できる電灯の傘を製造しています。
国内では、インバウンドの関係で宿泊施設等でもご使用いただいています。
和素材を使いながら先端の建築様式の中でもフィットするものを作っていきたいと思っております。
デジタル時代の中、量産できないなどの問題もあるのですが、手作りだからこそ、価値があるとも思います。
和傘の技術を活用した照明器具として、日常生活の中で繊細な美の世界や、日本の伝統技術の価値を感じていただきたい。
そして、国内外のデザイナーやクリエーターの方々と意見交換をしながら新しい価値を生み出す必要があると感じています。

伝統は革新の連続

西堀氏:
また、TCI研究所の事業もございます。
日本が持っている職人美を価値とし、グローバルに展開できれば、我々も世界と共生し切磋琢磨できるのではないかと思い、日本中の地域支援、職人支援を行っています。
SDGsでテーマとなるのは、途上国や新興国のことかと思われますが、伝統工芸の職人もまた絶滅危惧種です。
和傘を作る工房は、京都で1件、全国でも10件しか残っていません。
職人は、全国合わせても、多分50人もいないでしょう。本当は天然記念物のように。保護していただきたい状態です。(笑)
日本の伝統工芸が廃れる原因は、食べていけないからです。
日本の文化を担う職人たちも途上国と同じような問題を抱えています。
生活できないからやめる、子供に継がせない、誇りを持てないから続けられない、ということが多いです。
フェアトレードのお話もありましたが、伝統工芸も単に伝統だから作るのが大変だからと言っても、
おしゃれだからとか、格好良いから、綺麗だから、、、つまり、本当にいいから欲しいと思わない限り買っていただけません。
値を図る基準になる、お金をだしてでも欲しいといっていただけるものを作り出さないといけません。
和傘に限らず文化全体、着物等を含め持続可能な方法で発展していく方法を考える必要があると感じています。
「伝統は革新の連続」。固定化されたものではなくて、常に、今にあった考え方でイノベーションを連続していくことが大事です。

イノベーションを起こすものよそ者・馬鹿者・若者?

西堀氏:
今までと違うことに挑戦することでイノベーションは生まれると思います。
よそから来た人とかは向こう見ずなことも失敗も恐れない。
最初はおかしいといわれるでしょうが、それを恐れず、恥ずかしがらず、やり続けられるかが重要です。

シンポジウム2019パネルディスカッション②へ続く

  • 掲載日:2019年6月7日
  • 氏名:高橋 基樹氏,フェルダ ゲレゲン氏,ウスビ・サコ 氏,高津 玉枝氏,西堀 耕太郎氏
  • 役職・職名:高橋 基樹氏 (京都大学大学院)
    フェルダ ゲレゲン氏 (UNIDO東京投資・技術移転促進事務所 次長)
    ウスビ・サコ 氏(京都精華大学 学長)
    高津 玉枝氏(株式会社福市 代表取締役)
    西堀 耕太郎氏(株式会社日吉屋 代表取締役)

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