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インタビュー記事2:大人気のDari K農園ツアーを企画実施する現地法人Kakao Indonesia Cemerlangの取り組み- PREX Island

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インタビュー記事2:‐誰でもDari Kカカオの生産地を見学できる?-

実際にカカオ農家を訪問出来るため、幅広い層から参加希望が集まる大人気のDari K農園ツアー、そんな農園ツアーの実施や、現地の農家さんをサポートする現地法人Kakao Indonesia Cemerlang(以下、KIC)の取り組みをお伺いしました。

※2022年3月に代表取締役の吉野慶一さんにPREX職員の児島がインタビューをさせていただきました。(以下敬称略)

農家と信頼関係を築くKICの役割

【吉野さん】
Dari Kは2011年に誕生しました。
現地法人のKICを設立したのは2016年です。
KICをつくるまでは出張で、年に数回ほどインドネシアに行っていました。

カカオ豆の買い付けは出張ベースで充分に出来るけれど、農家さんが考えていることや感じていることを常に把握したり、気候変動による影響を農家の視点から理解したり、生産者である農家に寄り添って、活動することに難しさを感じていました。

農家は「Dari Kが突然来なくなったら、努力をして高品質なカカオを作っても、結局は、国際市場で決定された価格で買い取られてしまう。頑張っても報われない世界に戻ってしまう。」という不安を抱えていたようです。

現地法人であるKICを設立したところ、「Dari Kは逃げない」という安心感からなのか、信頼関係がより一層深まりました。
これは非常に嬉しかったですね。

KICは大きくわけて3つの仕事を担っています。
1つは農家に対しての農業指導。
2つ目はカカオ豆を買い取り、販売をする業務。
3つ目は農園ツアーです。

【PREX児島】
現地法人の設立は覚悟を示し、信頼関係を深めるという役割もあるのですね。(笑)
農園ツアーが大好評との噂を聞いております。
詳しくお伺いできますか?

大人気のDari K農園ツアー

【吉野さん】
農園ツアーは、現地でのこだわった活動やどのようにカカオが生産されているのか、関心がある方たちに見てもらえたら嬉しいな、という想いから始まりました。

想像以上に多くの方に参加いただいて、あまりの多さに途中からは、参加の目的に合わせて”仕事に関連して参加される方“と”個人的な関心から参加される方“に分けることになり、これまでに約350人の方に参加いただきました。
仕事に関連して参加される方の中には、パティシエ、商社や大手のチョコレート会社から来られる方もいます。

【PREX児島】
参加者の中には、Dari Kの同業他社に該当する方がいるように思うのですが、ライバルとなる会社の人の参加も可能なのでしょうか?

本来の目的であるAll-win Chocolate達成に向けて

【吉野さん】
Dari Kの取り組みに関心を持って下さる方は、誰でも農園ツアーに参加いただけます。
同業他社の方は、ライバルというより、一緒にチョコレート業界をつくりあげる仲間だと思っています。

Dari Kはチョコレートの専門店として一貫したサプライチェーンを売りにしていましたが、現在は販売経路を拡大するために、手がけたカカオ豆をメーカーや商社に販売しています。

Dari KだけでAll-win Chocolateを目指している状態は、短距離を走っているような感じです。
遠くにあるゴール(生産者の努力が報われる社会)を目指せない。
つまり、チョコレートを取り巻く環境を良くするにはとても長い時間がかかる。

Dari Kだけでは取り扱えない量のカカオの販売先が増えることで、All-win Chocolateを更に広げることが出来ます。

今後は、皆で長距離を走っていくイメージを持っています。
Dari Kは高品質でサステナブルなカカオ豆の提供者として、バトンを次に渡す役割を担うことで、これまで以上に大きなインパクトをチョコレート業界に与えることが出来ると考えています。

【PREX児島】
チョコレートに携わるアクター全員が仲間となる。
凄く理想的な形ですね。

チョコレート屋の枠を超えた活動へ、アグロフォレストリーの実践

【PREX児島】
実はもう1点、現地で活動されている”アグロフォレストリー”についても伺えますでしょうか?
こちらはKICスタンダード7ヶ条の項目にも入っていますよね。

【吉野さん】
本来、チョコレートメーカーは、カカオさえ農家が栽培してくれれば良いですし、カカオ生産量が不十分であれば、他の調達地に変えれば良いですよね。

これって経営戦略的には正しいと思うのですが、農家の立場で考えると、カカオの生産が上手くいかない場合は生活がとても苦しくなります。
農家は、昨今各地で大きな被害を起こしている気候変動の影響を大きく受けますし、安定した供給量を確保することが大変難しいです。

特に、カカオの生産は水を大量に必要とするので、降水量が減ると、生産量は落ちてしまい、収入も減ります。
これはカカオ生産だけで生計を立てている農家にとって、深刻な問題です。

Dari Kは適正な価格で買い取る他に、安定した供給量(収入)を確保したいと悩む農家さんに、何ができるだろうか?と考えて、“アグロフォレストリー”(混合農業)に取り組みました。

カカオは他の作物と一緒に栽培が出来るので、リスクヘッジのため、この特徴を活かして他の作物も栽培することで、カカオ不作時に、現金収入が減ったときの対策を行いました。

専門家の方々と協力し、様々な観点から実験と検証を1年かけて繰り返し、現地の環境にあった適切な混合作物を選定するのは、とても大変でした。
やっとのことで、アグロフォレストリーの取り組みを開始したのですが、農家は当初、理解を示してくれませんでした。
効果を実感するまでに他の作物を栽培するのは、手間がかかりますしね。

そこで、KICは現地の一角をモデル農園として、1年間ほど運営しました。
降水量が少ない時期に、モデル農園では他に栽培していた作物が収穫できたことで、農家さんが実感を得たのだと思います。
1年間運営した以外のことは何もしなくても、アグロフォレストリーの取り組みが現地に広がっていきました。

教えることって大事ですけど、教えるだけでは人は納得してくれなくて、実際にやって見せて感じてもらうことの大切さを痛感した経験でした。
“百聞は一見に如かず“ですね。

【PREX児島】
カカオ栽培だけでなく、収入安定に繋がるように他の作物の栽培サポートまで行うDari Kの取り組み範囲には本当に驚きがとまりません!
農家に常に寄り添い、活動を続けてきたDari Kですが、今後は一体どのような活動を展開されていくのでしょうか。

次のインタビュー

インタビュー記事3:‐出口としての役割にDari Kがかける想い-

  • 掲載日:2022年5月31日
  • 企業名:Dari K株式会社
  • 氏名:PREX児島

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