インタビュー記事3:社員に対する信頼と共感を呼ぶ努力が事業成功の秘訣- PREX Island
日本企業の方々 SDGs
インタビュー記事3: ‐ 社員への経営理念浸透の取り組みと社員の信頼を得るリーダーシップ ‐
何事においてもそうですが、組織で新しいことを進める時、SDGsを社内に浸透させる際、いろんな理由で進めにくいということは皆さんご経験をお持ちではないでしょうか。
どの組織でも似たような課題がありますよね。
山陽製紙さんのケースをご紹介します。
※2021年9月に原田六次郎社長、原田千秋専務、企画開発部の武田さんと山﨑さんにインタビュー(本文敬称略)。インタビュアーはPREX奥村です。
会社の根幹である経営理念の浸透について
【PREX】
今の山陽製紙さんの根幹である「紙づくりを通して環境に配慮した循環型社会に貢献する」という経営理念ですが、2007年に制定されて、どのように浸透させて行かれたのでしょうか。
いろんな組織が(PREXも含め)経営理念の浸透に苦労していると伺いますが。
【原田社長】
最初に取り組んだのは、会社の隣に流れる男里川の掃除です。
当時、工場は縦社会。
お祭り好きの多い土地柄で、先輩が後輩を会社に紹介したり、上司の命令は絶対という社風でした。
これはいかんなと思っていた頃に理念を変えて、次いでウェブサイトも変えようとした時に、若者を中心としたウェブサイトにしようと思いました。
それで男里川に写真を取りに行ったのですが、ゴミが散乱していて良い写真が撮れないという報告があり、それなら新しい経営理念を行動に移せるなとアンダー30の社員で掃除をすることにしました。
若手が取り組んでいると先輩も気になりだすんですね。
先輩も掃除に行くようになり、さらには地元の人も参加してくれるようになりました。
自分たちが掃除をする中で環境意識が高まっていったと思います。
また、eco検定というものがあると知ったので、幹部と受けにいきました。
難しいですが勉強すれば合格点は取れる内容だったので社員の受験を必須にしました。
合格すると嬉しいものです。
皆に勉強をするという意識が出てきました。
次の課題を探し始めてCSR検定も受けに行きました。
これはちょっと難しいんです。
3級の合格率はまだ5割で。
でも、若い人がどんどん伸びて2級に合格する人も出てきました。
理念の浸透に非常に役立っているのかなと思います。
【原田専務】
経営理念制定の翌年から理念祭も始めました。
堅苦しくなく、面白く、楽しく、でも50年後の当社を実現するために理念に触れる1日を作ろうと。最初は幹部で企画していましたが、今は理念委員会が企画しています。
何をやってもいいんです。
「不都合な真実」という映画を観たり、もったいないプロジェクトと銘打って要らないものを持ってきてじゃんけん大会をしたり。
この3年間は、真面目にSDGsゲームをしたりバリューチェーンマッピングを作ったりしました。
理念を自分たちの生活の中に取り入れるということをやっています。
理念は深めれば深める程キリがないので、楽しくすること、自分で企画するというのもいいのかもしれません。
新しい経営理念、共感までの道のり
【PREX】
経営理念を実現する事業としてSumideco Paperを始められた際、最初からスムーズにいったのでしょうか。
【原田専務】
最初はデザイナーさんと私たちで進めていたのですが、社内にとても不穏な空気が流れまして。
「自分たちは工業用の質の良いものを作っているのに、いったい上は何をやっているんだ」という。
これは良くないと思い、年2回実施している経営計画発表会の際にデザイナーさんから話してもらったり、社員参加型の商品開発の場である山陽プロダクトアワードを企画したりしました。
このアワードは今でも続いていて、crepピクニックラグの元になった中国の壁紙の着想も社員のアイデアです。
皆で考えるという社風になりました。
マーケティング部を設立したことも前に進んで行くきっかけになったと思います。
武田は入社間もなくマーケティング部に配属になったのですが、いろいろな業務を担当してもらっていて、苦労していると思います。
【武田】
入社後すぐに配属されて、何をしていいかわからないところからスタートしました。
とにかく降ってきた仕事から必死にやってきました。
商品を開発したり、デザイナーさんと話し合ったり、社内の調整をしたり。
ピクニックラグはタグ付けやハトメ付けが必要なのですが、工業用と一般消費者向けとは少し勝手が違います。
「なぜこれがいるのか」「なぜここにタグをつけるのか」など工場で働く社員にひとつずつ説明する必要がありました。
今は理解してもらっているのですが、当時は「(ハトメは)いらんやろ」「いりますよ」「ゴムの位置が高すぎます」「えー、いいやん」とにぎやかな日々でした。
【原田社長】
今では、社員には経営理念に共感して入社してもらっています。
経営理念への共感が採用基準です。
武田も経営理念に共感して入社してくれました。
また、山﨑も今年の3月から。
最初から理念に共感し現状を理解して仕事をしてくれています。
10年前、当社は企画力と商品力が弱みでした。
でも今は他社よりも企画力が強いと大手を振って言える。
人にも恵まれて、よくここまできたなと思います。
経営理念の体現の秘訣
【PREX】
2007年からここまでブレずに経営理念を体現していらっしゃる。
その秘訣は何でしょうか。
【原田社長】
私は、松下幸之助の理念経営を信奉しているんです。
「理念が確実に浸透すれば事業は半分成功したも同じ」
「理念を浸透させて、社員一人一人が自分の能力を最大限に発揮できる環境を作れば、さらに3割」
「戦略戦術は社員さんにやってもらえばいい」
極端に言えば、こういう考え方です。
何かあったら理念に立ち返ることができる、それが強みだと思います。
理念を浸透させるというところは、まだ課題があると思っています。
新しい経営理念の制定から14年。
環境意識は社員全員が身に付けてくれたと思います。
「その意識を自分事にしていく」という点では、今は半分くらいかと。
2:6:2の法則がありますが、組織の中の2割はある程度共感してくれていて、次の6割をいかに100%にできるか。
今は6割の半分くらいだと思うので、全体で浸透率が半分くらいかなと。
6割の人たちに語り部になってもらって、残り2割の人たちにいかについてきてもらえるか。
社員皆がエンゲージメントを高めて、いかに生き生きと働いてもらえるかというところが悩みの種です。
山陽製紙の社風について
【PREX】
社長や専務、社員の皆さんとお話しさせていただくと、いつも仲が良くて、信頼関係があって、意見を出し合いやすそうだなと心が温まります。
実際のところ、社内はどんな社風なのでしょうか。
【武田】
仕事外の活動がとても多いですね。
良い意味でも悪い意味でも。
その分忙しいのですが、ヘルプを求めると、社員の皆さんはやいやい言いながらも必ず手助けしてくれます。
循環型社会に貢献するという経営理念が浸透している、創業から続く創意工夫の精神が根付いている、と感じます。
何より社長と専務のカリスマ性を感じています。
だからこそ私は今ここにいるんだと思います。
仕事外の活動はとても多いのですが、工場で頑張っている皆さんを見ると私も頑張らないとと思います。
そして、その工場の社員を社長と専務が引っ張っていて、工場の皆さんが社長と専務についていっているんです。
その様子を見ると自分もついていこうと思います。
気持ちが連鎖していると感じています。
【山﨑】
横断的な委員会があるおかげで、私は東京にいても大阪にいる大先輩や工場の先輩とも気軽に話すことができ、社長や専務との距離も近いと思います。
話しにくい人はいません。
それがとても有難いです。
ただ、社員44名のエンゲージメントはもっと高めることができると思っています。
もっともっと一枚岩になることができたら武器になるんじゃないかと。
現状に満足するのではなく、社内のコミュニケーションの円滑化に取り組んでいきたいと思っています。
- 掲載日:2022年5月31日
- 企業名:山陽製紙株式会社
- 氏名:PREX奥村