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インタビュー記事2:発注された仕事しかしたことがなかった私たちが紙の循環をつくる商品を次々に生み出すようになったわけ- PREX Island

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インタビュー記事2: ‐ 梅炭再生紙 Sumideco paper、コピー用紙のアップサイクルサービス PELP!、工業用クレープ紙から生まれるcrep開発の経緯‐

今でこそ山陽製紙さんは自社商品・サービスを次々と生み出していますが、元々は回収した古紙を工業用クレープ紙に再生するビジネスがメインで、自社による開発は殆んど経験がありませんでした。
環境に配慮した商品開発の最初のきっかけは経営理念の刷新ですが、その後、次にどのように商品開発をしていいのか、どこに売っていいのか、壁にぶつかったそうです。
スピーディな商品開発が印象的な今の山陽製紙さんにどのように変化していったのか、お話をお伺いしました。

※2021年9月に原田六次郎社長、原田千秋専務、企画開発部の武田さんと山﨑さんにインタビューさせていただきました。以下、敬称略。

梅炭再生紙 Sumideco paperの誕生とエコクックへの進化

【原田社長】
2007年に和歌山の南高梅の炭を紙に抄くことができないかと銀行を通じて相談がありました。
元々、お客さんの要望にはできる限り応えようという社風だったので、1年かかりましたが何とか納めて喜んでもらうことができました。
しかし、売れませんでした。
ちょうど経営理念を「循環型社会に貢献する企業に」と刷新したところだったので理念通りの紙ができたと喜んでいたのですが・・・・。
それなら自分たちで売ってみようということになったんです。

梅炭再生紙には消臭機能があります。
当時は運よく洞爺湖サミットの年で環境意識が日本国内で高まった時期でした。
阪南市の酒蔵の社長さんが協力してくださって梅炭再生紙で作った巾着袋に酒瓶を入れて洞爺湖サミットに参加された各国首脳のお土産に使っていただくことができました。
これがニュースになって24時間テレビなどに取り上げられました。
ですが、他に売る場所も無いし、商品も作っていないし、そこまででした。
そんな時、あるデザイナーさんと出会いました。
梅炭再生紙で作った靴の脱臭用商品を企業ノベルティとして受注生産してはどうかということになり、エコクックが生まれました。
環境に配慮したノベルティは当時少なかったので、だんだんと知名度を伸ばし、今ではいろんな賞を受賞しています。

しかし、当時は売り先がわかりませんでしたし、次の商品開発はどう進めていいのかもわかりませんでした。
そこで、大阪府のデザインプロデュース型商品開発事業に応募しました。
それからPELP! crepが生まれたのですが、これは新しいことに挑戦したいという専務の前向きな性格があったからこそだと思います。

物の売るのではなく物の機能を売る。PELP! モデル開発のきっかけ。

【原田専務】
当時は to C(to Customer: 企業向けではなく一般顧客向けの商品サービス)のことは全くわからなくて試行錯誤していましたが、大きなきっかけになったのはスウェーデンでお二人の先生にお会いしたことです。
何でもご縁があってこそだと思うのですが、梅炭再生紙に共感してくださった経営者の大塚玲奈さんにご縁と支援をいただいて、環境取組み先進国のスウェーデンに行き、環境組織「ナチュラル・ステップ」創設者であるカールヘンリク・ロベール博士(*注1)とスウェーデンの大学に勤務されている坂尾知彦教授にお会いすることができました。
ロベール博士にお目にかかった際、「未来の社会に自分の会社が存在するか、存在するとしたらどんな会社として存在しているか。それを考えてみるといいよ」と仰ってくださいました。
また、坂尾先生は開口一番、「スウェーデンではビジネスにならないエコは在り得ないよ」と仰ったんです。
とても印象に残りました。

先生はスウェーデンと日本を比較した資料も用意してくださっていて、
「スウェーデンは温室効果ガスの排出量を削減しながらもGDPは伸びている。温室効果ガスの排出量と成長率はデカップリングできるんですよ。一方、日本は温室効果ガスの排出量もGDPも変化が無い」と。
スウェーデンの取り組みをいろいろ教えていただいたのですが、サービサイジングのお話が心に残って、紙でサービサイジングをしたらどうなるのかと帰国後も考えていました。
サービサイジングとは「物を売るのではなく、物の機能を売る」という考え方です。
スウェーデンでは掃除機を売るのではなく、掃除機を使った面積で課金するサービスがあるそうです。
じゃあ、「紙の機能を売るとはどういうことか」と考え続けた先に、「使った紙は製紙会社に返してもらえばいいんだ」と思いつきました。
大量生産して大量消費して大量廃棄する今のモデルではなく、必要な分だけ使って、そして価値のある紙を作る。
それがPELP!です。

(*注1)ロベール博士は持続可能な社会が備える4つの条件を導き出し、これをベースとして持続可能な社会の実現を推進する組織「ナチュラル・ステップ」を1989年に設立されました。4条件とは、①地殻から掘り出した物質の濃度を生物圏の中で増やし続けない、②人工的に製造した物質を生物圏の中で増やし続けない、③生物圏の循環と多様性を守る、④効率的な資源利用と公平な資源分配を行うというものです。

循環型社会をつくるという理念と社員のアイデアから生まれたcrepピクニックラグ

【原田専務】
紙を作る時は何千メートルという単位になるのですが、どうしても端材ができてしまいます。
大阪府の事業で支援してくださっていたマーケティングのコンサルタントと商品開発の話をしている時に、この端材を使えないかという話をし、工業用クレープ紙の端材をデザインして商品にしたものがcrepです。
社員皆でアイデア出しをしていた時に、中国出身の社員が「中国ではテレビの後ろに立派な壁紙を貼ります。
デザインがとっても素晴らしいんですよ」と言って。
「あ、じゃあ、クレープ紙には印刷できるし、デザインしたらいいね」となりました。
そこからcrepでできたピクニックラグが生まれました。

皆さん、山陽製紙さん商品の開発秘話はいかがでしたか?
何事も挑戦してみること、アイデアを出してみることが大切だと私は改めて気づかせていただきました。
そして、各自の挑戦とアイデアを温かく見守る原田社長の在り方こそ組織にとって必要不可欠な要素なのだと感じました。

次のインタビュー

インタビュー記事3: ‐ 社員への経営理念浸透の取り組みと社員の信頼を得るリーダーシップ ‐

  • 掲載日:2022年5月31日
  • 企業名:山陽製紙株式会社
  • 氏名:PREX奥村

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