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日本の専門家
JICA 上級審議役 宍戸健一さんとASSC 理事 和田征樹さんインタビュー

「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」(JP-MIRAI)共同事務局担当者にインタビュー

「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」(JP-MIRAI)の共同事務局を担当されている、国際協力機構(JICA)上級審議役宍戸健一さんと、ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)理事和田征樹さんにお話を伺いました。

JP-MIRAIの設立の経緯について教えて下さい。

宍戸さん

JICAはODAによる途上国の社会経済の発展をメインに活動していますが、日本国内では過去十年を見ても外国人労働者の数は3倍に増えるほど、人手不足の状況が続いています。
JICAの各国内拠点にも外国人労働者についての相談が届くこともあります。
日本の産業・GDPの維持のためには人材の確保は不可欠で、今後さらに少子高齢化による生産労働人口の減少が進むと、人手不足はもっと大きな問題になっていくと考えられます。
JICAでも入管法改正の議論がされていた3年ほど前から検討や勉強を始め、取り組みを開始しました。
JICAへの期待として、ODA事業でかつて支援してきた、職業訓練校や保健医療分野などのつながりで、日本企業に必要な人材を確保できないかという相談もありました。
ODA事業では留学生や研修員を受け入れ、日本への理解を深めてもらい、日本との関係も強化しようとしていますが、アジアなどから日本に夢をもって来日する若者が、日本で期待したような賃金がもらえなかったり、非常に辛い思いをしたり、というケースが多いということを知り愕然としました。
海外では、日本人は「いい人」というブランドが定着していると思いますが、今後も現状のように日本の外国人に対する受入環境が改善されず、来日した若者たちが失望して帰国することが
続くと日本に来たいと思う人がいなくなるのではないかという漠然とした不安を感じ、国際協力に携わってきた者として取り組まないといけない問題だと思い始めたのが2,3年前でした。
その頃からJICAの中でも相談し取り組もうということになりました。
そして、これからは日本に夢を持ってきてくれた人たちがまた来たくなる、選ばれる日本でないと日本を目指してくれなくなるのではないかと思ったのです。
日本の少子高齢化が進み、これからより極端に生産労働人口が減少するという状況で、それを担う外国人労働者がいなければ、日本のGDPを維持できないのではないかと主張される方もいます。
一方で、アジアの中には日本と同様に少子高齢化が進む国もあり、これまで日本に労働者を送り出してくれていたような国が、逆に労働者を受け入れる側になってくる。
そして日本との経済格差もなくなる中で、日本の労働環境が悪いとなれば、ますます日本を選んでくれなくなるのではないでしょうか。
日本に来たいという若者から、選ばれる国になる必要があると思いました。
その後和田さんと出会い、既に企業とともに技能実習生の労働問題などにも取り組んでおられるということで、一緒に活動しましょうという流れになりました。
去年の2月頃から準備を始め、いろんな方々に連携を呼びかけて、2020年11月に設立に至りました。

短期間で設立に至ったということですね。

宍戸さん

短期間で立ち上がった背景は、同じような危機感を持っている人が非常に多かったためだと思います。
残念ながら非常に悲しい報道に触れることが増えて、日本はこんなにひどい国だったのだろうかということもありますし、コロナ禍で困窮した外国人の行動に対して、差別につながるのではないかという状況も懸念され、これまで取り組んできた多文化共生に逆行するような状況はとても辛いと思いました。
短期間で設立に至ったということですね。
32年前のラグビーワールドカップを見ていても、日本チームといっても多様な選手で構成されていて、同じ顔をしている人達だけではない、そういうチームを国民が心から応援するという機運が高まる一方で、足元では企業の中での難しい面がある点にギャップを感じます。
また企業の方々の危機感としても、欧米を中心とした世界の流れは、サプライチェーンにおける人権侵害については親会社の責任であり、企業の株価にも影響するなど経済的な実害があり、下請けだから関係がないという時代ではなくなっています。
グローバル企業の危機感は非常に高いと思います。
時代の潮流としてはやらなければいけないことだったのですが、日本では国として取り組もうということがなかったため、JICAが呼びかけたところ好意的に受け止めてもらえ、企業・団体会員220社・個人会員115名(2021年10月現在)の参加に繋がっていると思います。

 

現在、重点をおいている活動について教えて下さい。

宍戸さん

今は外国人労働者とのコミュニケーションに関する活動が一番必要だと考えています。
そのためにアプリやポータルサイトなどの構築を準備中です。
労働問題が起きている背景にはいろんな原因があると思うのですが、来日前に業務内容や経費などについて細かい情報が得られず、情報ソースが口コミなどに限られているため、高額なお金を支払うなどの問題も起きています。
それには、情報の非対称への対策が必要です。
特に労働者の方々にとって、来日前~来日後の必要な情報が十分に行きわたっていないため、困った時にどうしたらいいかという情報提供が必要だと思っています。
また、外国人労働者が何に困っているのか、問題があった場合はどうしたらよいかなど労働者の声を聴く機能も必要だと考えています。
労働者のみならず、留学性に向けて、日本に来る前に学んでおくことや資格、条件の違いなどについて、分かりやすい動画をつくることも考えています。

和田さん

救済のメカニズムはビジネスと人権において国際的な潮流で、企業にとっても大事なことで、日本にとっても手を差し伸べることは大切ですので、進めていく必要があることだと思っています。SDGsの中でもゴール8で重要視されています。

読者の皆さんへメッセージをお願いします。

宍戸さん

大阪・関西は2025年に万博があり、世界の方々が関西を目指してこられます。
これから経済も活性化し、それを支える外国人が多く来られるという時に、「また来てもらえる関西」にしていくために、少しずつ今の状況を良くしていかなければいけないと思います。
目を覆うような悲惨な報道なども無くしていかなければならないと思います。
来た人たちが幸せに、また関西に来たいと思ってもらえるための取り組みが重要ですので、今後も関心がある方と一緒に取り組みたいと思います。

JICA 上級審議役 宍戸健一さんとASSC 理事 和田征樹さんロングインタビュー①はこちらから
JICA 上級審議役 宍戸健一さんとASSC 理事 和田征樹さんロングインタビュー②はこちらから

 

JP-MIRAI:「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」

国際協力機構(JICA)とザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)が、共同で事務局となり、日本において外国人労働者を受け入れる企業及び業界団体、労働組合、市民社会、メディア、研究者らと共に2020年11月16日に設立。
詳細は、JP-MIRAIのウェブサイトからご覧ください。

JP-MIRAIのウェブサイトはこちらから→JP-MIRAI

JP-MIRAI行動原則(PREXも会員となり行動原則に賛同・実践しています。)

【私たちが目指す社会】

国連持続可能な開発目標(SDGs)やビジネスと人権に関する国連指導原則などにおいて、外国人労働者の権利を保護し、労働環境・生活環境を改善することは、世界的な社会課題とされています。
日本においても、働く外国人が増え経済社会の重要な一翼を担う中、これらの課題解決に真摯に取り組み、責任をもって外国人労働者を受入れ、「選ばれる日本」となることが重要です。
私たちは、外国人労働者が安心して働き生活できるディーセントワークの実現を通じて、包摂的な経済成長と持続的な社会の実現を目指します。

【私たちの行動】

私たち、本プラットフォームの会員は、省庁、自治体、関係機関や市民社会、有識者並びに国際機関を含むすべてのステークホルダーと協力し、「私たちが目指す社会」の実現に向け、次のように行動します。
1.私たちは、外国人労働者の受入れに当たり、関係法令を遵守します。
2.私たちは、外国人労働者の人権尊重や労働環境・生活環境などの現状を把握し、課題の解決に努めます。
3.私たちは、働く場と生活の場の両方で、外国人労働者との相互理解を深め、信頼関係を醸成します。
4.私たちは、日本及び国際社会の発展と安定に貢献するため、外国人労働者の能力開発に尽力します。
5.私たちは、プラットフォームの取り組みを日本国内及び世界に発信していきます。
なお、上記の行動は、私たちの企業・団体自身の取り組みのみならず、サプライチェーンや関係する企業・団体にも積極的に働きかけることとします。

 

  • 掲載日:2021年11月21日
  • 氏名:JICA 上級審議役 宍戸健一氏、ASSC 理事 和田征樹氏