世界は人で、できている。
HOME > PREX island > JICA 上級審議役 宍戸健一さんとASSC 理事 和田征樹さんインタビュー②

信頼され、選ばれる日本へ。②- PREX Island

日本の専門家
JICA 上級審議役 宍戸健一さんとASSC 理事 和田征樹さんインタビュー②

「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」(JP-MIRAI)共同事務局担当者にインタビュー②

「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」(JP-MIRAI)の共同事務局を担当されている国際協力機構(JICA)上級審議役 宍戸健一さんと、ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)理事 和田征樹さんにお話を伺いました。

 

JP-MIRAIの具体的な活動内容について

瀬戸口

具体的な活動内容について伺いたいのですが、外国人労働者とのコミュニケーション強化ということを計画にも掲げておられ、ウェブサイトを日本語、ベトナム語、英語で発信されていますし、改善の取り組み推進や情報発信をされていますが、現在重点的に活動されているのは何でしょうか?

宍戸さん

今は労働者とのコミュニケーションに関する活動が一番必要だと考えています。
そのためにアプリやポータルサイトなどの構築を準備中です。
労働問題が起きている背景には、いろんな原因があると思うのですが、来日前に業務内容や経費などについて細かい情報が得られず、情報ソースが口コミなどに限られているため、高額なお金を支払うなどの問題も起きています。
よって、情報の非対称への対策が必要です。
特に労働者の方々にとって、来日前~来日後の必要な情報が十分に行きわたっていないため、困った時にどうしたらいいかという情報提供が必要だと思っています。
また、外国人労働者が何に困っているのか、問題があった場合はどうしたらよいか、ということなど労働者の声を聴く機能も必要だと考えています。
労働者のみならず、留学性に向けて、日本に来る前に学んでおくことや資格、条件の違いなどについて、分かりやすい動画をつくることも考えています。
将来的には違法なブローカーではなくて正しい形で留学や仕事ができるための情報も出そうとしています。
来日に関わる組織に関しては、労働者によるフィードバックを得られるような形も考えたいです。
企業に関しては、ビジネスと人権についてのチェックの仕組み、苦情受付処理手続きの仕組みなども必要になっているので、1社で出来ない場合にそれをお手伝いする仕組みもアプリに入れようと思っています。

今年度計画を立てた段階で、特に大企業からの強いリクエストとして、
アプリを作って、チャットBOTで終わりではなく、相談を受けて伴走して解決するような救済のメカニズムを作るべきだというご意見も出ています。
現在、これについては研究会を実施していますが、JP-MIRIAとして企業と連携しながら、外国人労働者からの相談や深刻なケースの解決を手伝えるよう、企業からも資金を得て社会実験をすることも構想中です。
今後、大きな取り組みになると思いますし、ノウハウを持った方々との連携になると思いますが、こういう機能がなければ日本に来て困る外国人はなくならないと思っています。

和田さん

救済のメカニズムはビジネスと人権において国際的な潮流で、企業にとっても大事なことで、日本にとっても手を差し伸べることは大切ですので、進めていく必要があることだと思っています。
非常に重要なところで、SDGsの中でもゴール8で重用視されていますので、お手伝いが出来ればと思っています。

瀬戸口

アプリの構想については、上手に活用できたら、縦割りで解決できなかった課題や企業間での経験共有など、とても価値の大きな仕組みになりますね。

アプリ構想について

瀬戸口

アプリは、いつごろから稼働されるのでしょうか?

宍戸さん

設計はほぼ終了しています。
まずはJICAで構築を行う予定で、来年早い時期にリリースをする予定で準備をしています。
外国人が必要な情報、企業へのフィードバック、困りごとを入力すれば必要な人に繋がる、将来的にはマッチングの機能を盛り込むことも考えています。
複雑ですが、いろんなものを意欲的に取り入れようとしています。

対象の国について

瀬戸口

現在はベトナムやミャンマーの方が中心ですが、対象の国について今後はどういう予定でしょうか?

宍戸さん

ベトナムの方の緊急支援とミャンマーの方対象のイベントは、当初計画にはありませんでした。
JP-MIRAI自体は特定の方を対象にするものではなかったのですが、コロナ禍で一番大きな課題が露呈したのはベトナムの方々でした。
帰国困難者も一時期3万人にのぼり、うまく働けず犯罪などの報道も出ていました。
中長期的観点での外国人労働者の生活労働環境の改善にはもちろん取り組むのですが、目の前に困っている人がいるのだったら、そのための活動をしたらどうかということで、コラボ事業としてキャリアセミナーを始めました。
その後ミャンマーで政変が起き、帰国できない人が相当数いるということで活動を開始しました。
会員の中には困っている人への対応をするべきという声もあるため、協力頂ける会員さんと取り組みを展開しています。
アプリの言語については、当面8~10言語などで動かしてみる予定です。

和田さん

JP-MIRAIは会員の皆様が主役なので、協働していただける団体・企業と一緒に、ご相談を受けてできる範囲で協働しながら進めています。

アプリ作成の重要性

瀬戸口

今後の計画の中では、コミュニケーションのツールとしてのアプリ作成がまず重要ということでしょうか?

和田さん

アプリというよりも、労働者の声を聴くためにはそれがまず重要だという認識です。

宍戸さん

外国人労働者への情報提供や対処は重要ですが、問題は人と人の間で起きるため、当事者(受入企業、地域、関係者の皆さん)の意識や取り組みが少しでも変わらないと問題はなくなりません。
日本国内の外国人労働者をめぐる報道にはネガティブなものが多いため、外国人とうまく接してお互いがプラスになっている事例などを積極的に発信し、多くの方々に理解を促進する活動が重要だと思っています。

会員企業や人材仲介業者との関わりについて

中山

私は民間企業からPREXに出向していて、実は出向元も会員となっていて人権への意識は高まっています。
200社の会員企業の間での違いはありますか?

宍戸さん

会員の中での参加度合いなどの差はあります。
JP-MIRAIのロゴをウェブサイトにつけるだけでは何の変化もないので、活動計画をJP-MIRAIのサイトで公表している企業は今後も優良事例としてご紹介していこうと思っています。

中山

人材の仲介業者の中には問題があるところもあると思うのですが、そういうところを排除するために、どのような計画がありますか?

宍戸さん

JP-MIRAIの活動計画において「労働者の声を聴く」という活動があり、外国人の皆さんに送り出し機関、監理団体について記入してもらい、法律に照らしたチェックリストにも回答してもらいます。
問題がある場合は本人からさらに情報を得て、現地政府や日本の外国人技能実習機構(OTIT)などに情報提供し対処をしてもらうという形で、問題のある機関や団体を減らしたいと考えています。

現在の実習生の状況

中山

コロナ禍を受けて皆さん大変だったと思うのですが、今の実習生の状況はどうでしょうか?

宍戸さん

コロナ禍で最初に製造業や飲食業への打撃が大きかったのですが、実は人手が不足する分野もありました。
そのため、緊急対応として在留資格についても弾力的な措置ができ、かなりの方々が新しい仕事に就くことができたという状況です。
また、ベトナムに帰国したい人は、今は航空便が飛ぶようになっていますので高額ではありますが帰国が可能になりました。
さらに警察が外国人犯罪への対応にも力を入れています。

瀬戸口

JP-MIRAIについて、目的や活動について、いろいろとお聞かせいただきありがとうございました。

皆さんへのメッセージ

瀬戸口

最後に読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

宍戸さん

大阪・関西は2025年に万博があり、世界の方々が関西を目指してこられます。
これから経済も活性化し、それを支える外国人が多く来られるという時に、「また来てもらえる関西」にしていくために、少しずつ今の状況を良くしていかなければいけないと思います。
目を覆うような悲惨な報道なども無くしていかなければならないと思います。
来た人たちが幸せに、また関西に来たいと思ってもらえるための取り組みが重要ですので、今後も関心がある方と一緒に取り組みたいと思います。

和田さん

関西にJP-MIRA自体は存在しない状況ですが、日本全国に会員様、関心のある方を集めていきたいと思っています。
皆さんが集まることで、今ある課題も解消に向かわせることができると思います。
協力頂ける方がいらっしゃれば、ぜひお声掛けいただければと思います。

 

JP-MIRAI:「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」について

国際協力機構(JICA)と一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(アスク)が、共同で事務局となり、日本において外国人労働者を受け入れる企業及び業界団体、労働組合、市民社会、メディア、研究者らと共に2020年11月16日に設立。

趣旨

「SDGsの目標年限である2030年に向けて、国際水準を満たす『プラットフォーム行動原則』に賛同・実践する企業や団体の皆様ともに、雇用主や受け入れ団体が法令順守をはじめとした外国人労働者の責任を持った安定的な受入れを行うことにより外国人労働者の労働・生活環境を改善し、それによって豊かで持続的な社会が生まれ、「世界の労働者から信頼され選ばれる・日本」となることを目指します。

主な活動内容

次のようなテーマについて、分科会活動を通じた議論や調査、セミナーやフォーラムの開催を通じた啓発を行います。
(1)外国人労働者への正しい情報提供
(2)外国人労働者が抱える問題の把握
(3)政府機関等との連携による解決
(4)広報・啓発活動、調査に基づいた提言
(5)外国人労働者確保にむけた事例共有

運営体制

民間セクター(企業・業界団体・経済団体等)、公的セクター(関係省庁・関係団体・国際機関等)が連携し、アドバイザリー・グループ(企業・市民社会・労働組合・弁護士等)の助言を頂きながら活動を行っていきます。

事務局:(一社)ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(アスク)、(独)国際協力機構(JICA)

JICA 上級審議役 宍戸健一さんとASSC 理事 和田征樹さんインタビュー①へ戻る

  • 掲載日:2021年11月18日
  • 氏名:JICA 上級審議役 宍戸健一氏、ASSC 理事 和田征樹氏

関連記事