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SDG/ESGから考える外国人技能実習制度①:人権とビジネス- PREX Island

日本企業の方々 SDGs
e-toco #11:株式会社ワールディング 池野 真史氏

e-toco #11:SDG/ESGから考える外国人技能実習制度

「多様な人がいかに活躍できる環境を作るか」
そのために人権とビジネスを考慮して経営戦略を立てる必要があります。

今月から3か月連続企画。
e-tocoでは、SDG/ESGから考える外国人技能実習制度について、(株)ワールディングと一緒にお届けします。

e-toco #11:SDG/ESGから考える外国人技能実習制度(1回目)6月17日(木)Facebookライブ配信

前田

今日のゲストは(株)ワールディング 池野真史さんです。
池野さんと私は、「ハバタク株式会社」でインターンとしてご一緒した経験がありますが、その頃から池野さんはベトナム事業に携わっておられました。
そのご縁で今回お声がけしました。

前田

まず、ワールディングはどんな会社か教えて下さい。

池野氏

(株)ワールディングは日本型の多文化共生社会、誰もがどんなステージでも安心して活躍できる社会の創造をビジョンとし、海を越えて挑戦する企業と外国人材を応援しています。
2013年に創業し東京に本社、大阪と名古屋に支社、ベトナム・ハノイに拠点があります。

社内から多文化共生を進めており、社員の約3割、管理職の1割が外国人、女性職員比率も社員の約6割、管理職も半数以上が女性。
年齢層も、新卒からシニアまで幅広い多様性に富んだチームで運営しています。
事業としては、
①外国人の受け入れ企業
②監理団体や登録支援機関といった、外国人技能実習生・特定技能外国人を監理・支援する団体
③業界団体・地方自治体を対象に、仕事から語学・生活まで外国人材に関わるあらゆる課題に対する支援
を行っています。

詳しくは、当社ホームページをご覧ください。
(株)ワールディングのホームページはこちらから

前田

ありがとうございます。
日本語が読めない私の友達の外国人家庭に、日本語で書かれた大事な資料が行政から来ていて、「なんだこれはーー!」と思ったところなので、生活支援・語学支援の大切さを感じています。
さて、では今回のメインテーマである「技能実習生とビジネス×人権」に移る前に、外国人技能実習制度とはなにか、簡単に説明していただいてもよろしいでしょうか。

池野氏

技能実習制度は、日本の技術・技能を途上国に移転するための国際貢献制度です。
労働力不足の解消、が目的の制度ではありません。ただ、企業は、技能実習生を直接雇用する必要があるので、日本の労働法令にのっとって雇用する必要があります。
また、技能実習生は、職種が細かく決められていて、例えば、建設業に従事するために来日された方が、別業種に仕事替えすることはできません。
加えて、技能移転が目的であることから、従業員数に合わせて技能実習生受け入れ可能人数が決まっており、社内での育成体制を整えて受入れを行うことが重要です。

前田

ありがとうございます。その技能実習生ですが、ニュースでも悲しい話を耳にします。
コロナ下の技能実習生の現状どうなっていますか?

池野氏

2020年3月以降WHOのパンデミック宣言、日本での緊急事態宣言の発出を契機に、日本、各国で出入国制限が始まりました。
7月末にかけて、産業界からの要望もあり、局所的・段階的な往来の再開によって入国された方もいますが、現在、再び入国制限により、技能実習生の新規入国ができない状況です。
出国も実習生に限ってみると、国籍によってはほとんど出国できていない国もあります。
例えばベトナムは、日本国内に数万人の滞留者がいるのではないかと言われています。
ベトナム大使館やベトナムの旅行会社がチャーター便を用意しても、ベトナム政府側の事情で急遽乗れなくなる事例も出ています。
帰国困難な外国人(留学生・技能実習生等を含む)に対しては、特定活動という在留資格が特別に付与され、期限はありますが就労できるようになっています。
しかし、技能実習の満了を迎えた技能実習生が、同じ会社で働き続けられるかは企業の状況もあり、他の企業を探す必要がでる場合もあります。
ワールディングは帰国困難な方への企業紹介もしています。
また国としても、出入国在留管理庁がマッチング支援を行うといった動きがあります。

前田

外国の方々もしっかり守られてほしいと本当に思います。
どうして外国人技能実習制度が問題になっているのでしょう?

池野氏

まず前提として、外国人技能実習生が私たちと、どのような関わりがあるか。
技能実習生は2020年6月末時点で40万人、日本に在留しています。
(9月に公表された最新データだと2020年12月末で378,200人)。
いろいろな職種がありますが、私たちの生活に密着している産業で働いていることを大前提として考えなければなりません。
この人々がいなくなったらどうなるのか、また、国際的な移動先として日本が選ばれてるのかという視点も必要です。

その上で、何が問題になっているか。世論として、外国人技能実習制度がネガティブにとらえられる傾向にありますが、それは「技能実習生受け入れ企業が労働法令違反をしている」実態が報道されることが大きいと思います。
しかし、日本全体を見たときに、実習生が関わっている、いないに関わらず、実は法令違反をしている企業が多いのも厚生労働省のデータでは示されています。
企業の方は、他人事ではなく、自社でも法令違反がおきるリスクを認識し、法令順守のもと企業価値を上げていくことが大事です。

前田

技能実習生が来られないからこそ、今、企業の方は実習生や外国の方を受け入れる準備ができる大切な期間だと思いますが、企業の方が実習生を受け入れる上で、気を付けるポイントは何でしょうか?

池野氏

なぜ人権とビジネスなのか?
社会的な動きとしてSDGs、ESG投資といった言葉がメディアで取り上げられています。
日本では脱炭素等の環境系の話が多いですが、人権や働くことについての目標も含まれています。
人権とビジネスを考える上で、そもそもどうして持続可能な社会作りのために、「人権」の観点が入っているのか、歴史的背景含め、事前に理解することが必要です。

1990年代、グローバル化により先進国が途上国に進出し、国際分業体制が進む中で、途上国の工場で人権問題が発覚し、多国籍企業のグローバルなサプライチェーン上の人権侵害が社会問題化しました。
例えばアメリカの大手アパレル企業は、途上国の委託工場で児童労働等人権侵害が発覚し、不買運動がおきました。
それにより、5年間で1兆円以上機会損失が発生したという試算もあります。
こうした問題が次々とグローバル企業で発覚したことを契機に、労働における人権問題の改善のために、国際連合やILO、OECDといった国際機関で枠組み・ガイドラインが策定され、企業の社会的責任として人権尊重が規定されました。
この10年で各国政府は法規制や行動計画の策定をすすめ、民間でも、電子機器関連業のRBA行動規範(ResponsibleBusinessAlliance)やCGF(食品・消費財・小売系の業界団体)をはじめ、大手企業も人権デューデリジェンスを実施する等、基準策定や企業監査がはじまっています。
そうした流れの中で、SDGsやESG投資の基準・目標に定められたという経緯があります。
人権配慮の対応についてはCSR視点のみで、コストとしてみられることも多いのですが、先のナイキ社の事例が示す通り、サプライチェーン上の人権侵害によるインパクトは、企業利益にも直結する部分であることは、経営視点としては重要で、心にとめてほしいと思います。

前田

私達も、PREXが加盟しているJP-MIRAIの技能実習生の手数料問題に関する勉強会に出席しました。
そこである大企業の登壇者の方が、「取引先から製造サプライチェーンの末端まで、労働環境に問題がないか問われた経験から、徹底的に調査をし行動指針を作成した」というお話があり、池野さんのお話と重ねて理解できました。

池野氏

これは大企業、中小企業と企業規模に限った話ではありません。
人権を考慮しないことでステークホルダーにどのような影響を与えるか、というコーポレートコミュニケーション視点、広報視点でも考えることが重要です。
企業イメージが下がり、対消費者ではブランドイメージ毀損や不買運動による売上減、投資家や金融機関からの評価が下がり株価や資金調達に影響がでる。
取引先からは取引停止を言い渡される。
社外だけでなく、対社内でも影響があります。
例えば、ストライキによる操業停止や損害賠償請求リスク労働者の採用困難。
そのような様々なリスクの存在を認識し、人権とビジネスを考慮したコミュニケーション戦略を立てていく必要があると思います。

前田

とはいえ、まず企業の方は何から始めたらよいのでしょうか?

池野氏

人権とビジネスはサプライチェーン上の話なので社内に限った話ではないですが、外国人材の活用という視点で言えば、今自分たちの企業がどの段階にいるのかを確認することが大事です。
もうすでに外国人、例えば外国人技能実習生を雇用しているのか。
そうだとしたら、労働環境や採用フロー上法令違反やブローカーに法外な手数料を徴収されたりしていないか。
そうした人権侵害行為を受けていないかヒアリングをできているのか。
ほかの企業は何をやっているか情報収集しているか。
外国人材と働く従業員、そうではない従業員がどれくらい外国人材雇用について理解しているか。
社内の外国人材の活用における意識の変革と課題の把握がまずは重要です。
人権は、「権利」という概念で難しく抽象的にとらえられがちですが、経営者から現場で働く方まで全員が「多様な人がいかに活躍できる環境を作るか、そのために何をするか」を具体的に考える機会を作ること。
これがまず企業単体、個人としてできることだと思います。

前田

池野さん 最後に一言お願いします。

池野氏

今後、外国人材を扱う企業・監理団体・登録支援機関でもSDGsやESG投資を視点にすることが増えると思います。
ただ、グリーンウォッシング(環境配慮しているふりをする・うわべだけの訴求を行う造語)のように、人権ウォッシングがあってはいけません。
外国人技能実習生に限って言えば、報道されるような健全じゃないプレイヤーも存在する中、企業も情報収集・比較・選択が難しいという課題があると思います。
当社でも、そうした企業様や業界団体、行政機関を引き続き支援することで、多文化共生社会の創造に貢献できればと思います。

前田

池野さん本日は貴重なお話、本当にありがとうございました。

e-tocoで池野さんが使用された資料ダウンロード用の簡単フォームはこちらです。

PREX職員のコメント

瀬戸口

ビジネスで考えたときに、今は、製造~流通~販売まで、いろんな人が関わっていて、日本において外国人労働者の方も不可欠になっています。
ですから、そういう人々の人権をビジネスの中にどう位置付けるのかは、もはや基本的な価値観になっているのだと感じました。

中山

技能実習制度の問題は、すぐに解決できるものではなく、成果もなかなか出にくいが、この制度を続けてく上で、外国人の方々が「日本に来てよかった」と思ってもらえる制度であってほしい。
そういう状況に近づけるために私たちが手伝えることはやりたいと思います。

株式会社ワールディング コンサルタント 池野 真史氏プロフィール

新潟出身。
大学卒業後、ハバタク㈱で途上国の社会起業家支援プロジェクト参画のため単身ベトナムへ。
ベトナムでのプロジェクトを通じ、海外人材との共創・ヒトの分野に課題意識を持ち、(株)ワールディングに入社。
ワールディング入社後は、外国人材の採用・育成分野での業務に従事。
製造業・建設業・農業等の企業に対して採用支援、育成・評価制度設計、企業合併時の外国人材リテンション支援(人事PMI)等、企業の事業成長に伴走する支援を企画・実行。
PRSJ認定PRプランナー。趣味は、サッカー、日本酒、星空撮影。

第11回「e-toco(えーとこ)」は下記バナーから

配信日:2021年6月17日(木)
タイトル:「SDGs達成/ESGから考える 外国人技能実習制度①」
ゲストスピーカー:(株)ワールディング 池野 真史さん

PREXオンラインカフェ「e-toco(えーとこ)」

 

  • 掲載日:2021年11月16日
  • 企業名:株式会社ワールディング
  • 氏名:池野 真史氏
  • 役職・職名:コンサルタント

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