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【PREXオンラインカフェ「e-toco(えーとこ)」】#9「世界を繋ぐ人材とは? JICA海外協力隊員の可能性と帰国後の活躍事例」②- PREX Island

日本企業の方々
e-toco#9:辻プラスチック株式会社の林 佐紀です。

JICA海外協力隊ボランティアから、ものづくりビジネスの世界へ。

前回のPREXオンラインカフェ「e-toco(えーとこ)」では、JICA関西 津田様に「JICA海外協力隊とは?」というお話をしていただきました。
まだご覧いただいていない方の中で、制度について知りたい方はこちらのリンクから先にご覧ください。

今回は実際に協力隊に参加した方々が、どんなキャリアをへて、どんな活躍をしているのか、中小企業と協力隊が交わってこそ生まれるものは何なのか、滋賀県東近江市に拠点を構える「辻プラスチック株式会社」で勤務されている林 佐紀さんにお聞きしました。

1.林 佐紀さんプロフィール

JICA青年海外協力隊員として平成21年度2次隊としてニジェール共和国へ体育を指導する隊員として派遣される。
クーデターにより一時退避し、残りの任期をガボン共和国で生活する。
帰国後はJICA関連団体や商社を経て、現在滋賀県の中小企業「辻プラスチック株式会社」でアフリカ事業部に所属。

2.林 佐紀さんとの対話

前田

辻プラスチックさんは、アフリカでどのような事業をされているのでしょうか?

林さん

ニジェールとセネガルに現地法人があるのですが、その支店を通して製品のサブスクリプションのビジネスをしています。
アフリカは約6億人が電気のない生活をしていますが、携帯の需要はとても高いです。
携帯を持っていたとしても問題は充電で、4キロ先まで充電しに行くという方もいました。
効率も悪いし充電費用もかかるので、なんとかできないかと留学生・現地の方と考えて開発して製品を開発しました。
この製品(上記写真左下、林様が持っておられる機械)だと太陽光で発電し、USBで直接つないでランタンや携帯を充電できます。
通常はアフリカだと鉛バッテリーに蓄電された電気を使用しますが、鉛バッテリーの場合、寿命があり交換が必要だったり、使い終わったものが産業廃棄物としてほったらかしにされたりするのが現状です。
この商品は鉛バッテリーを使わないのでメンテナンスがいらず安価で、廃棄物も出ず、長期間使用できるというところが他と違う特長です。

前田

セネガルで私が見た太陽光発電は、ソーラーパネルやジェネレーターなどを買わなければならず、お金持ちの人しか手が出ないものでした。
設置も購入も大変そうでした。
工業製品を直せないという理由で、使い捨てされているところも多いようでした。

林さん

太陽発電にはソーラーパネルの他に様々な付属品も必要です。
特に村落地域だと、1つ1つの接続方法が間違っている場合も多く、それ自体がとても危険ですし機械の寿命も短くなります。

中山

ずばり、林さんにとってアフリカの魅力はなんでしょうか?

林さん

好奇心を刺激されるところですね。
文化・人・歴史的背景、民族、食べ物など、なぜ国境をまたぐだけでこんなに違うんだろうと思うともっと知りたくなります。
ビジネス視点からみると、アフリカは今後人口が増えてマーケットが大きくなります。
また、弊社の製品が一番生かせるのもアフリカだと考えています。

前田

そんなアフリカに思いを寄せる林さんが、辻プラスチックさんと出会ったのはどういうきっかけでしたか?

林さん

JICA PARTNER(パートナー)という支援サイトで転職先を探していた時に、辻プラスチックの情報が目にとまりました。
「滋賀県」×「アフリカ」×「ものづくり」×「ソーラー」のキーワードが自分の中でヒットしたので、応募しました。
タイミングと縁ですね。

前田

今、どんな仕事をしていますか?

林さん

アフリカ事業がほとんどですが、アフリカで販売する製品の製造もします。
自分が作った製品だからこそ、商談時には、製品の細部までアフリカの方に説明できるので説得力のある説明や自分の自信にもつながります。
弊社は、アフリカ人インターン生も定期的に受け入れています。
会社としてもアフリカ事業に関わっている人は少ないですし、社員全員が英語を話せるわけでもありません。
どんなふうにすればアフリカ人インターン生と社員間のコミュニケーションが活発になるかなど、まだまだ課題がありますが、繋がりを作れるよう、アフリカ人インターン生に、1週間に1回終業後に英語クラスを開催していただくなど交流の場を設けることも私の仕事の1つです。

瀬戸口

アフリカで営業活動をする、モノを売ることに集中して仕事をしておられるのかと思いきや、製造にも携っておられることにとても驚きました。
製造にも営業にも携わって商品の説明ができる環境は、中小企業、小さな組織ならではの強みだな、と思います。

前田

都市と村の違い等、協力隊に行って現地の感覚が理解できることは今の仕事に生きていますか?

林さん

そうですね。
協力隊員だった時に主に接していたのは地方の人々や学校の生徒が多かったです。
でも、今は、もちろん現地調査も行きますが、どちらかというと官公庁や民間企業を経営している人と接する機会が主。
協力隊のときにはできなかった経験ができてとても新鮮です。

前田

一口にアフリカに関わるといっても、JICAや国際機関など様々な関わり方がありますが、ビジネスで関わるからこそ出会える人や経験があるんですね。
中小企業と協力隊の可能性を感じているところは?

林さん

中小企業の強みは技術力、中小企業ならではのフットワークの軽さ、支援窓口の存在です。
その強みを生かして、相談できるところの力を借りて商品もビジネス体系も改良を続けています。
その反面、情報収集、語学、人材などに限りがあります。
人材の発掘、育成にも時間がかかりますし、新しいことを始めることに対して、社内の理解が得られにくいことがあります。
海外ビジネスをするとなると現地パートナーの発掘が一番のネックになります。
協力隊の強みは、現地に実際住んだ経験から、現地の人目線で生活の価値や質が見えること。
アフリカに行っている人は体力面、「なんとかなる」精神ともに強い傾向にあると思う。
問題にぶち当たった時も、「どうしようか」と悩んで止まってしまうのではなく、「じゃあこうしよう」と解決策を考えることが自然と身についているのではないかと考えています。
アイデアを出す癖がついているということです。

ただ、その中でも協力隊は2年という期限付きで、資金にも限りがあります。
また協力隊員はあくまでもボランティアで、ビジネスの経験や知見が限られるのも課題ではないでしょうか。

企業と協力隊がマッチした結果、お互いの課題を補えたところが多くありました。
今、当社ではエンジニア、上司、そして私がアフリカ案件を担当しています。
過去は上司が1人で担当していましたが、案件が増えると人材が必要です。
それ以外に、私が入社してから社員の理解も深まり、留学生と社員のコミュニケーションが気軽にできるようになりました。
社外に関しては、滋賀県でアフリカ事業をしているということで企業の認知度が上がってきました。
その影響からかセミナーや講演会に呼んでもらえるようになりとてもありがたいです。
同じようにアフリカに進出する関西の企業様と協業することも増え、商品の部品を製造してもらったり、アプリを作っていただいたり、この事業をしていなければ出会えなかった方々に会えました。
このような縁にはとても感謝しています。

前田

チームでアフリカ事業を行っていて、思うことはありますか?

林さん

私はアフリカのファン。
でも上司はアフリカが好きなわけではありません。
ビジネス展開をすることに興味があります。
アフリカ好きだけの会社だと周りが見えなくなりますが、アフリカ好きがいて、ビジネス目線で考えられる人もいます。両方の視点がないと、ビジネスの統制もうまくいかないのではないでしょうか。

前田

それは私もすごくわかります。

林さん

アフリカビジネスの経験はなかったので学ぶことがとても多いです。
中小企業の専門性・技術者の方から学ぶことも多い。
アフリカの人達もメリットがあり、会社にもメリットがあるようにするには、どうしたらいいのかと日々考えながらプロジェクトを回しています

3.前田まとめ

今日は協力隊を経験して、海外事業で活躍している林さんをお迎えしました。
アフリカビジネス展開のために、林さんはコミュニティ間の仕掛人として、留学生や現地の方々、そして辻プラスチックの社内のコミュニケーションを活性化させ、現地で本当に使える製品を共同開発、販売をされています。
お互いの強みや弱み、限られた知識や経験からお互いの課題を補完し、調整し、新しい取り組みを生み出し、問題解決に取り組める人材が企業では求められており、協力隊はそれができる。
と、とても分かりやすいスライドとお自身の経験をもとに力強くお話ししてくださいました。

この記事が新たな人材採用の可能性を探られている企業の皆様のお役に立てますと、幸いです。

国際交流部 前田

  • 掲載日:2021年7月21日
  • 企業名:辻プラスチック株式会社
  • 氏名:林 佐紀氏

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