違いをチカラに~パネルディスカッション~ シンポジウム2017- PREX Island
SDGs
違いをチカラに~パネルディスカッション~
パネリスト:西島 大輔 氏(株式会社 中農製作所 取締役社長)/パネリスト:吉富 志津代 氏(特別活動法人 多言語センターFACIL 理事長 ,名古屋外国語大学教授)/パネリスト:毛 丹青 氏(作家、神戸国際大学教授)/コーディネーター:久保田 真弓 氏(関西大学 総合情報学部教授)
自分と違うものを排除する心の壁を乗り越え、「違い」を“チカラ”に変えられないだろうか?
企業のグローバル化に!(西島 大輔氏)
西島:社員がそれぞれに成長していくことが会社の発展につながるーそれが中小企業の魅力です。一方で、優秀な人材が入ってこない、労働環境が厳しく雇用が長続きしない、海外調達の加速による国内の注文量の減少、海外企業とのコスト競争、などの経営課題を抱えています。
当社では、技能実習生や従業員として、ベトナム人を受入れてから15年。3年前にベトナムに進出し、今年ようやく黒字化が見えてきました。
今では、ベトナム人も、会社の一員として成長し、会社の発展に貢献してくれています。ベトナム人社員がいなかったら、私が海外進出しよう、といっても日本人社員は納得しなかったのではないかと思います。ベトナム進出が、一緒に働くベトナム人社員の夢だったから、日本人社員も、力を貸してくれました。日本人とベトナム人が、お互いの夢を共有したから、結果として、ベトナムでのビジネスの道が始まったと実感しています。
日本の閉塞感を打開するには?(吉富 志津代 氏)
吉富:日本社会が行き詰っていることにみんな気づいているのでしょうか。日本人は、よくしたい、よくなりたいという意欲が低くなり、このままでよいと思っているという印象を受けます。
日本は、これまで経済優先で、効率を求めてきましたが、結果、大切なものを忘れてきたのではないでしょうか。PREXの研修を通じて、日本側が忘れている大切なことに、研修参加者から逆に、気付かされることも多いのかもしれません。
生きる意欲や変化へのモチベーションを失いかけている日本人が、これからの道を探すためには違う価値観から学ぶしかありません。「共創」ということが言われます。相手が言っていることが、自分と違うと思っても、まず耳を貸すこと、そこから得られる気づきが絶対に必要です。
日本の皆さんには、今の状況に危機感を感じて、積極的に違うものに触れてほしいです。
国が違う。価値観が違う。違うからこそ新しい発見があり、違うからこそ、補い合える。
まずは違いに気づくこと。(毛 丹青 氏)
日本に留学し、生活するようになり、30年になります。今年55才で、中国にいた時間より、日本にいる時間の方が長くなりました。
2011年に、中国語で日本の生活文化を紹介する雑誌「知日」を発刊しました。日本を知るというコンセプトで、5年間で41号、トータルで300万部を売り上げました。現在は、在日中国人の目を通して見た日本の伝統や文化を伝える新刊誌『在日本』を発刊し中国の多くの若者に支持されています。また、村上春樹の小説や又吉直樹の「火花」を中国で出版し、これも大きな反響がありました。日本の大学には、日本の良さに気付いていない、外を知りたくもない、という学生が多くいます。日本には、中国の人々の心をひきつけるすばらしい生活文化や文学があることを知ってほしいです。
外と日本の違いに気づき、外に向けて日本の良さを発信することがビジネスになり、人と人の交流になり、国と国の信頼関係を作っていることを、なんとか伝えたいと思っています。
境界をつくるのは、人(久保田 真弓 氏)
「越境」ということばがあります。
人が、国籍、性別、障害のあるなしなどで線を引いているのです。境界を引き、境界の向こうは向こう、こちらはこちらでやるほうが楽と考える人が多いのですが、今はそんな時代ではありません。
では、どうすると「違い」を活かせるのでしょうか。簡単ではありませんが、ビジネス、異文化、人間関係、どの場面でも共通のゴールが見つかると 「違い」を活かすことができるのではないでしょうか。
人工知能(AI)の進歩により、従来は人間にしかできなかった多くの仕事が、自動化されるといわれています。時代の転換点に突入している中で、私たち人間にどのようなスキルが必要なのでしょうか?今回のシンポジウムの基調講演・松山大耕氏やパネリストからのお話によると、「疑問を持つ」、「対峙した人とコミュニケーションを図る」、「考えるチカラをつける」ということではないでしょうか。
私たちはパートナー。自分たちの夢をどのように実現しようか 話している。(西島 大輔 氏)
当社の従業員数は50名。うち20名がベトナム人で、社員であるエンジニアが15名、技能実習生は5名。2014年よりベトナムホーチミン市に駐在員事務所を設置した。代表・副代表としてベトナム人社員2名を帰国させ法人化を進めており、今は現地のスタッフ8名が働いている。現場を任せているベトナム人社員とは、常にコミュニケーションをとってきた。ベトナムでどのようにしていきたいか、日本の会社をどのようにしていきたいか話をし、任せることで、経営者として成長してもらえた。社長と従業員という関係ではなく、パートナーとして双方でどのようにしていくか、自分たちの夢をどのように実現しようか話している。
外国人との仕事を通して、多様な視点を知り、寛容になることができた。(吉富 志津代 氏)
自分は日本生まれ日本育ち。日本しか知らない。しかし、アルゼンチン総領事館やボリビア総領事館で、外国人と繋がる仕事をしたことにより、多様な視点を知ってそれを楽しみ、寛容になることができた。日本であたり前だと思われていることがそうではなく、既存の規則も絶対的ではない。地域社会の中には、さまざまな人がいる。マイノリティの人たちに地域社会に参加してもらうことが、社会にある課題を解決することにつながる。無関心でなく、受入れ、認め合い、折り合いをつけていくことが求められる。
人は人に会う 人は人を知る 人は人を思う われわれが目指す美しい世界。(毛 丹青 氏)
この写真は、中国の出版社主催の『火花』(又吉直樹/文春文庫)の中国語刊行記念イベントの様子だ。場所は、上海の建投書局で、約200人が集まった。中国と日本の政治関係はよくないかもしれないが、日本の文化を紹介した雑誌や日本文学の人気は驚くほど高い。
なぜ、中国の若者が日本に関心を持つのか。日本は、他との違いを認識しなければならない。もっと外の世界を自分のテリトリーに入れていくべき。違いを知ることが、相手を知るということ。違う発想を得ることにもなる。留学にいきたい日本人は少なく、授業でも日本人は黙っている。日本人は、知ることへの執着が弱まってきている。ここに危機感を感じる。
日本が持っている寛容の精神が違いを乗り越え、世界を変える。(松山 大耕 氏)
寺の長男として生まれたが、キリスト教の中高一貫校に通った。その後、異なる宗教の方と交流を持つ機会もあり、「違い」は、自分自身を深め、世の中に働きかけるモチベーションになった。今日のパネリストの話をきいて、違いを力にする過程には、何かを失う、もしくは、失いそうだという経験、そして一つの方向に突き進む力があると思った。最近、無理にバランスをとろうとする人が多いが、どんなに立派でも、完全にバランスが取れているという人は見たことがない。いい具合のアンバランス、違いを受け入れざるを得ない経験、それが、違いを力にするポイントだと思った。
- 掲載日:2017年6月13日
- 研修名:PREXシンポジウム2017
- 氏名:
- 役職・職名:パネリスト:西島 大輔 氏(株式会社 中農製作所 取締役社長)/パネリスト:吉富 志津代 氏(特別活動法人 多言語センターFACIL 理事長 ,名古屋外国語大学教授)/パネリスト:毛 丹青 氏(作家、神戸国際大学教授)/コーディネーター:久保田 真弓 氏(関西大学 総合情報学部教授)