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シンポジウム2018パネルディスカッション 中編- PREX Island

SDGs
シンポジウム2018パネルディスカッション/チェンジメーカーが社会を変える(2)

後藤:基調講演の坂本さんのお話し、そして、これまでお話しいただいたパネリスト人に共通して「補い合う、協同、違う強みを持つ人がつながること、作り手と買い手のつながる場、プラットフォーム化が大事ということ」が出てきたと思います。一緒に座って、情報交換さえすればうまくいくのに、お互いのことを話す場がないということがありますよね。では私から質問です。

経験の共有

後藤:「チェンジメーカーということで、自分や会社地域社会がどう変わったか、どう変わったらいいと考えているのか?そもそもどうしてその活動に入られたのか?」ご経験を共有いただければと思います。

小野:何を変えようとしているかというのは明確です。農産物流通において、少量不安定なものを扱っていても商売として成り立つ形を作ろうとしています。世の中は、効率性を追求するために多様性を排除する流れできましたが、今は、多様性を活かすために効率性を追求する方向に変わってきています。坂ノ途中の事業も、多様性を活かすために、自動化できるところには、投資をして社内システムを組んで効率性を追求し、収支を合わせようとしています。

お客さんとの関係で変わりたいのは、農産物を工業製品のように売るのを終わらせたいということです。農産物は、生き物です。生き物としてのブレを受入れてほしいのです。

例えば、大根の話をします。皆さん大根の「ス」を知っていますか?内部がスカスカになる状態ですね。これにはいろんな理由がありますが、特に2月の後半から3月に収穫できる大根にスが入りやすいです。この時期は、栄養を使って花を咲かせるための準備期間だからです。今の社会は、大根を切って「スが入っている」と文句の出るせちがらい社会です。スが入っている可能性がある大根は流通厳禁となり、食品廃棄が生まれることもあります。スが入った大根を見て、「春が来るのね」という風になったほうが、生きていて楽しいのではないでしょうか?僕たちは、そういう社会にかえたいと望んでいます。

北村:私は、人々の持つパレスチナのイメージを変えたいと願ってパレスチナ・アマルの事業をしています。坂本さんもお話しされていましたが、イスラムというだけで、人々はあるイメージを持ってしまいます。パレスチナ・アマルの事業を通じて、パレスチナの人たちは、優しくて明るく、ホスピタリティにあふれ、美しいものを作っているということを伝えたいと思っています。

藤原:私が入社した当初と違い、りそなショックが起こった時は「新しい銀行像を作ろう!」というメッセージを受けて、変われる瞬間だったと思います。それまでの銀行ではありえなかったようなこと、たとえば、USJにサービスを学びに行こうとか、学生アルバイトを採用するとか、新しいことに、みんながよい形で連携する流れができていたと思います。マイすいとうの事例がたった4社でできるなら、りそなグループでは現在50万社のお取引先がありますから、ビジネスのあり方がいくらでもできると思うのです。銀行員の名刺を渡すと、「何か一緒にやりましょう!」といわれる存在になりたいと思っています。

後藤:パネリストの皆さんは、強いビジョンを持って邁進されていて、社会への波及効果も生まれてきているのですが、その強みを生かすときに他の異業種だったり、UNRWAだったり、市場形成だったり、いろんなつながりや文脈の中で、事業とご自身の「接続の力」が増えていくほど、勢いがついてうまく回っています。これは重要なところだと思っています。

共に動く

後藤:では次に、強みを持っていない人に、一緒にやりませんかと言われることはないですか?そうした場合に気を付けているところはありますか?

藤原:協力してくれる人がいた、うねりを増すように広がっていったというのが、私の活動を振り返った時の成功の2つの要素です。成功するといろんな方が集まってくるのですが、「一人勝ちはなしよ」ということをルールとしています。みんながメリットをとれる形にすると、自浄作用で、いいとこどりしようとする人は、入ってこれません。本当に困った時に助けてくれるメンバーが集まるようになる気がします。

北村:クラウドファンディングのサポーターの方々、阪急百貨店のバイヤーさんとのつながりは本当に有難いと思っています。パレスチナというだけで、いろんな方が集まってくることもありますが、パレスチナ・アマルの事業の性質を理解いただくようにしています。

小野:事業立ち上げのコツでいうと、2つあります。一つは、一点突破であることです。自分で始めるとあれもこれも大事となるのですが、そうすると進みません。坂ノ途中の場合は、環境負荷の小さい農業を始めよう、その中の新規農業の人を支え、少量不安定でもまともな値段で売ろうということに絞り込んだ事業をしています。もう一つは、借り物競争をするということです。すべてを準備していたら終わりません。最低限の準備をしたら走り出して、借りながらやろうという姿勢でスタートしました。

壁を乗り越える

後藤:皆さん、壁を乗り越えてこられているのですが、どういうところが大変で、どう乗り越えたのか聞かせてください。

藤原:りそなショックがあって、銀行を変える活動ができるようになり、FM802とコラボするなど、派手なこともやっていました。銀行の本社ビルのエントランスやホールでライブを開催し人を集めたり、封切り前の映画の試写会を行ったり、落語会をするとか。「何ということをするんだ」と言われても「反響があるからいいですよね」と言えた時期だったと思います。それが銀行に直接メリットがあるのかという議論になり、「予算ゼロ宣言」をしたのです。それでも、制約が成長させてくれた面があり、プロジェクトを必死に残してきました。細谷英二会長と「新しい銀行像を作る、この活動を続けてほしい」と約束していたので、何とか踏ん張ってこれたのかなと思っています。

北村:起業してから本当に何をするのにも壁だらけでした。今も、夫が単身赴任で石川にいき、東京でのイベントに出られなくなったという問題を抱えています。誰かサポートいただける方を必要としている状態です。

小野:私も、基本的に苦労話には事欠かないです。

始めは、レストラン向けの卸の仕事をしました。レストラン向けの営業資料を作って、他店と差別化できますよ、野菜での差別化は、お肉や野菜での差別化より低コストですよという宣伝をしました。でもレストランには、納入業者を下に見るお店って少なくありません。畑で新規就農者が育てたものを意味のある野菜だと思って受け取って、それを、野菜を大切にしていない、たいして美味しくないお店のツールにしているのが嫌になっていきました。ある時から、レストラン向けの営業資料は大きくつくりかえ、共感してくださるお店に届けるスタイルに切り替えました。いまでは、社内用、ベンチャーキャピタル用、ネットで使用する説明資料、すべて内容は同じにしています。

後藤:東南アジアを回って企業へのインタビュー調査をしています。苦労して集めたデータを論文にするのですが、昔は公開せず、自分だけで使っていました。誰かに分けると、先に論文を書かれるのではないかと心配したからです。でも、オープンにすると、意外とよい方向に動くことが多いことがわかりました。小野さんの話にもあるように、オープンにするというのは、自分じゃない他人をどう信頼するのかということになるのですが、いろんな失敗もあるにせよ、大きく見ると成功につながるのかなと思いました。

続く

  • 掲載日:2018年5月13日
  • 研修名:2018年5月7日(月)、大阪国際交流センターにて開催したPREXシンポジウムの内容をまとめたもの 
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