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インタビュー記事2:美味しいコーヒー豆のため海を越えて山を越えて辿り着く- PREX Island

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インタビュー記事2:農家さんからの直接買付

PREXの実施している研修では、田代珈琲さんがスペシャルティコーヒーに舵をきったこと、農家さんからの直接買い付けを始めたことが、会社が軌道に乗ったきっかけだったというお話をしていただいています。
今回のインタビューではその経緯と具体的な業務についてお伺いしました。

スペシャルティコーヒーについてはこちら
https://www.tashirocoffee.co.jp/pageview.php?slug=specialty

※2024年1月に田代社長と娘の彩(ひかる)さんにPREXの奥村、荒木、児島がインタビューをさせていただきました。

スペシャルティコーヒーとの出会いから直接買付に至るまで

【PREX奥村】
田代社長にとって、一番美味しかったと記憶に残るコーヒーはどちらの農園のものだったのでしょうか。

【田代社長】
どのコーヒーも美味しいですが、記憶に残るという意味では、やはり初めて飲んだスペシャルティコーヒーですね。
当時、喫茶店にコーヒー豆を卸していたのですが、コーヒー豆だけではなく、喫茶店で使う冷凍食品やマヨネーズなんかも卸していました。
その時はコーヒーを美味しいと思ったことは無かったですね。
大量消費でより安くという時代でした。
コーヒー豆の卸売業者の数も増え、市場が飽和し、業者間での価格競争が起きていました。

ある時、いろいろと学ばせていただいていた同業者の方から、「このコーヒーを飲んでみたら」と御馳走になりました。
その時に初めてコーヒーを美味しいと思ったんです。
ニカラグアのコーヒー品評会で入賞したコーヒーでした。

品評会で入賞したコーヒー豆はオークションにかけられます。
自社でもこのような美味しいコーヒー豆を仕入れたいと思い、商社にお願いして、商社が競り落としたコーヒー豆の一部を購入させてもらいました。

コーヒー豆は通常、商社が輸入しています。
生産者から直接買い付けている日本企業はほとんどありません。
日本の法律では農薬が使用されたコーヒー豆の輸入が禁じられています。
農薬が検出されると一大事です。
また、中南米では麻薬がコンテナに紛れている可能性もあるので高いリスクがあります。
それだけでなく、現地とのコミュニケーションや運送・倉庫業者とのやり取りと、様々な業務が発生します。
私たちも当初はすべて商社から卸してもらっていました。

その後、商社に依頼して田代珈琲名義で入札してもらったり、商社を介さず独自にオークションに参加してみたり(語学で非常に困りましたがなんとか)、直接買い付けをしている同業者に協力してもらったり、スペイン語を話せる社員を雇ったり、スペシャルティコーヒー支援をしている現地NGOにコンタクトを取って信頼できる農園を紹介してもらったりと、その時にできることを一つずつチャレンジしていきました。
そして、今では、様々な農園から直接買い付けをしています。

【PREX奥村】
ダイレクトトレードを実現するためには想像をはるかに超えるご苦労があるのですね!
この業務量や課題を田代珈琲さん自身で担われているはすごいことだと思います。
現地も遠いですよね。

【彩さん】
昨年3月に訪問したインドネシアの農園はアチェ州だったのでとても遠かったですね。
ジャカルタに到着してから舗装されていない道を車で10時間走りました。
本当にきつかったです。
その翌月、コスタリカ、ニカラグア、ホンジュラスを訪問しました。
3か国訪問は体力的にきつかったですね。
訪問時間より移動時間の方が長くかかりました。

【PREX奥村】
実際、現地に買い付けに行く中で、どんな思い出がありますか?

【田代社長】
初めて訪問する時は村単位で歓迎してくれます。
一番良い品質のコーヒー豆を出してくれますしね。
そして次の年は品質が落ちます。
おそらく他の新規取引先に一番良い品質を出しているのではないかと推測しています。
ですので、3年単位で取引する農園が変わることが多いですね。
もちろん継続して良い品質を提供してくれている農園もあります。

生活の質が向上したと言ってくれると嬉しいですね。
ホンジュラスのロス・プラネス農園の方との取り引きは3年目なのですが、昨年現地に行った時は新築の家を建てている途中でした。
今年は増築するそうです。
ホンジュラスとエルサルバドルの国境沿いにある標高1,900mくらいの山にある農園です。
他の農園でもトヨタの四駆の車を購入したと言っていました。
村民が数台しか車を持っていない、道路が舗装されていない、山の中腹にある村にとって、四駆の車はとても貴重なものです。

ホンジュラスの70歳の農家さん
自分の農園名でコーヒー豆が日本で売られている喜び

【田代社長】
今年の9月にロス・プラネス農園の70歳の農家さんが、自分たちのコーヒー豆がどのように売られているのか見たいと、現地でいつもアテンドしてくれるコーディネーターのロニーさんと共に自費で来日しました。

【PREX奥村】
来日中はどのようなことを?

【彩さん】
田代珈琲創立90周年特別セミナーを開催しました。
ロニーさんが紹介してくれた農園の豆の卸先の方々を招待して、ロニーさんにセミナーをしてもらって、その後の懇親会でいっしょに食事をしました。

【田代社長】
他には、阪神百貨店の店舗のことを説明したり、卸先のカフェを3~4件まわったりしました。

【彩さん】
自分たちのコーヒー豆をこういう形で売ってくれているんだと、とても喜んでくれました。

【田代社長】
コーヒー豆が自分の農園名で売られているっていう状況をおそらく想像もしていなかったことだと思います。
生産者にとって、こういうことが現実に起きるとは思っていない。
それで帰国して、村できっと今回のことを喋るでしょ。
生涯の思い出になるんじゃないでしょうかね。
初めての海外旅行だそうです。
とても喜んでいました。
そういう費用が出せるようになったこと、それはとても大きいことだと思います。

通常、農家は、まず農協にコーヒー豆を売りに行きます。
その売値と、私たちのようにスペシャルティコーヒー用の品質の良い豆を直接買いにくる業者への売値を比較すると、約3~4倍ですね。
価格がまったく違うので、盗まれないよう、収穫後の豆は倉庫などではなく、自宅の居間など目の届く範囲に置いてあります。
スペシャルティコーヒーを販売できた彼らは村の成功者です。

【彩さん】
来日中とてもお元気でした。
とても嬉しそうで。
東京に着いてから新幹線で大阪まで来られて、当社本店に到着して開口一番、「美味しいコーヒーが飲みたい」って。
移動だったので飲む機会が無かったようで。
コーヒーが飲みたいってずっと言っていました。

【田代社長】
ずっと言っていましたね。
こういうことがあるから、この仕事を辞められないっていうのはありますね。

次のインタビュー

インタビュー記事3:田代珈琲の未来

  • 掲載日:2024年3月21日
  • 企業名:田代珈琲株式会社
  • 氏名:PREX 奥村