インタビュー記事3:娘への事業承継 田代社長の想いと娘の彩さんの想い- PREX Island
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インタビュー記事3:田代珈琲の未来
インタビューのためにご連絡したところ、社長が倒れて3カ月間入院され、娘さんが後を継ぐことになったことを知りました。
会社を継ぐ際のご苦労を田代社長やいろんな社長さんから伺う機会が多かったのですが、まさにその瞬間のインタビューとなり、田代社長の想いや彩さんの想いに触れ、心震える機会となりました。
※2024年1月に田代社長と娘の彩(ひかる)さんにPREXの奥村、荒木、児島がインタビューをさせていただきました。
働く理由は喜びと繋がり
【PREX奥村】
田代社長にとってのサステイナビリティとは?
【田代社長】
社員が成長して働き続けられる環境をつくることです。
自分で考えて、自分で課題を見つけて、付加価値をつけて、解決できる社員になってほしい、付加価値を創造する力をつけてほしいと思っています。
社員が働き甲斐を感じる時は「お客さんから褒められた時」だと長年の経験からわかってきました。
その時、働く目的がお金ではなくなるのだと思います。
昨年7月にクモ膜下出血で倒れ一度死にました。
それまでは、まだ時間があると思っていましたが、今は悔いの無いよう生きようと思っています。
前の自分とはまったく違うと感じています。
この病気は2回目があるそうなのですが、それまでに、継ぐと決意してくれた娘に伝えていくべきことは伝えていきたいと思います。
【彩さん】
当初継ぐ気はまったくありませんでした。
その気持ちを改めて父に伝えた後、父が倒れまして。
その際、母とどうやって会社を畳むか話していたのですが、一度回復した父がもう一度倒れました。
その後、父が入院中の9月にロニーさんたちが来日され、父は病院からZoom参加で、私と社員で対応しました。
3月にホンジュラスでロニーさんたちに会った時は話す時間もそれほど無かったのですが、大阪に来られた時にしっかり話す時間を設けることができました。
その時に、何年もかけて築き上げてきたこの素敵な信頼関係を、人と人との繋がりを、私の「継がない」という一言で終わらせてしまうことが、すごくもったいないと感じて。
母とも「もったいないね」と話しました。
ホンジュラスからわざわざ来日して来てくれたことに対して社員の皆もすごく嬉しそうにしていて。
自分がホンジュラスに行ったことよりも、ここに来てくれたことの方がすごく大きいことでした。
私が中南米に行ったことも、父が倒れたことも、ロニーさんたちが来店してくれたことも大きくて、怒涛の半年でした。
美味しいコーヒーは私の生活に当たり前にあったものなので、コーヒーに対する情熱はそこまであるとは言えません。
でも、お客さんや生産者さんとのコミュニケーションは大好きで、繋がりを大切にしたいと思っています。
スペイン語と英語を学ぶ、会計を学ぶなど、まだまだ個人の目標を立てることに精いっぱいですが、頑張っていきたいと思っています。
田代社長の夢
【PREX奥村】
以前、ホンジュラスで品質向上の事業を始めたいとお話しされていたと思いますが、どのような話でしたでしょうか。
【田代社長】
現地の皆さんは天日干しで早く乾燥させたいのですが、天日干しは高温になるためビニールハウス内で陰干しするようになってきています。
品質を向上させるためには、収穫してすぐに乾燥・処理することが大切なんです。
早さを求められること、丁寧さを求められることがあり、品質向上は益々難しくなってきます。
そこで、収穫したコーヒーチェリーの選別・乾燥のための機械を1台、村に購入できないかと思いまして。
機械があれば、必要になる水の量も大幅に減らせますし。
村に1台あれば皆が使えます。
【PREX奥村】
最後に田代社長の夢をお伺いできますか?
【田代社長】
自然環境の変化で2050年にはスペシャルティコーヒーに向いた品質の良い豆が激減し、低品質の豆のみでの価格競争になってしまいます。
同業者が皆スペシャルティコーヒーの普及に取り組み、価格競争とならないようになってほしいと思っています。
その願いを叶えるためにも、自分の考えに共感してくれる仲間と共に、コーヒー研究会を立ち上げて、そのメンバーでダイレクトトレードをしたいですね。
- 掲載日:2024年3月21日
- 企業名:田代珈琲株式会社
- 氏名:PREX 奥村