インタビュー記事1:女性の活躍が制限されている社会から、女性がいきいきと活躍できる世界を目指す沢田さんのストーリー- PREX Island
日本の公的機関 SDGs
インタビュー記事1:自分の子どもが大きくなる頃には、女性がもっと活躍できる世界にしたいと思った。
ジェンダー平等に取り組む、一般財団法人大阪市男女共同参画のまち創生協会(以下、大阪市男女いきいき財団)。
1993年の財団設立当初から携わり、約30年近く女性活躍推進の第一線で活躍する沢田さんに、関心をもったきっかけから、今日の活動に至るまでの道のりをお伺いしました。
※2022年8月に大阪市男女いきいき財団の事務局次長を務める沢田薫様に、PREX職員の児島がインタビューをさせていただきました。(以下敬称略)
「女性は昇進しない?」ジェンダー平等に関心をもった原点とは
【沢田さん】
女性の問題に関心を持ったのは、私自身が女性の問題に直面したことがきっかけです。
私は当時、大阪の民間企業に勤めていました。
そこで見えた問題は「女性は昇進出来ず、キャリアが制限されている現状」です。
先輩たちの姿=未来の自分の姿ですので、良くも悪くも入社1~2年目で自分の進む道がある程度見えてしまいます(笑)。
女性の先輩は昇進せず、男性しか昇進しない現状を目の当たりにして、自身のキャリアを思い描くことが出来ず、また結婚のタイミングが重なり、勤めていた会社を辞める決断をしました。
夫が転勤族でしたので、結婚後は横浜に引越しをしました。
子どもが出来たことをきっかけに、出産や今後の子育ての大変さを考えて、転勤族の夫と共に生活する環境ではなく、大阪にUターンをして生活をすることに決めました。
【PREX児島】
沢田さんご自身が、職場環境の問題、結婚や出産等のライフイベントによる決断を経られていたのですね。
続いて、大阪に戻られた後の話をお伺いできますでしょうか?
【沢田さん】
大阪へUターンをしたときに、現在勤めている財団の設立話がありました。
当時、大阪市は市内に5館の「女性センター」(※道府県、市町村等が自主的に設置している女性のための総合施設)を立ち上げる構想を持っていました。
「このセンターを運営するための財団法人を設立しましょう。」ということで、大阪市の出捐により今の財団が設立されました。
実は夫の転勤で横浜にいた時に、横浜にあった「女性センター」で働いていました。
この経験を活かして、財団の立ち上げメンバーに参画することになり、5館の「女性センター」設立に取り組みました。
現在この5つの施設は、それぞれ「クレオ大阪中央・子育て館・西館・南館・東館」という名称で地域の皆様に親しまれています。
【PREX児島】
沢田様は横浜や大阪での仕事を通じて、約30年近く女性の問題に取り組まれておりますが、これまでのご経験の中で社会の意識が大きく前進したなと感じた出来事はありますでしょうか?
女性の問題は女性だけの問題ではなく、社会全体の問題です。
【沢田さん】
1999年に「男女共同参画社会基本法」が制定されたのをご存知でしょうか?
これは「女性だけの問題」として女性の抱える問題を捉えるのではなく、「男女の間にある格差の是正の問題」として、「社会の仕組みが抱えている問題を考えていきましょう」ということを明文化した法律です。
女性が働き続けようと思ったら、パートナーの意識や理解はもちろんのこと、会社の女性登用の方針や社会全体の意識が変わる必要があります。
女性だけが頑張って解決できる問題ではありません。
基本法が制定される前は、当財団でも「女性の生き方」や「女性の経済的自立」など女性に焦点を充てた取り組みを主に行っていましたが、基本法の制定を受けて、男性側、そして社会に対する取り組みも増えてきました。
例えば、男性の悩み相談事業や、企業を対象にしたハラスメント、ワーク・ライフ・バランスの講習会を行うようになりました。
【児島】
女性の抱える問題解決には社会全体の意識が変わり、具体的な取り組みとして女性の活躍が疎外されない取り組みが大切だということがよくわかりました。
これまでの仕事を通じて多くの困難に直面したのではないかと想像しますがいかがでしょうか?
30年の活動を通じて感じているのは「大阪の女性の力強さ」。そして、「地域の皆さまの信頼があってこそ活動が出来ている」ということ。
【沢田さん】
クレオ大阪中央を除く4館のクレオ大阪施設が廃止されるという話がありました。
大阪市で行政改革が行われた時に、多くの公共施設が廃止、または補助金の打ち切り等で影響を受け、公共施設であったクレオ大阪も対象となったのです。
当時、関係者皆が尽力し、4館廃止案は撤廃されました。
私たちも奔走しましたが、5館すべてが残ったのは、市民の皆様から集まった、クレオ大阪の施設廃止に反対を表明する声があったからこそです。
大阪市地域女性団体協議会(女性会)の皆様も署名を集め、大阪市に届けてくれました。
女性会(当時は婦人会)は、現在のクレオ大阪中央の施設が設立される際に、「1日1円募金」と称して活動を行い、今の金額にすると1200万円相当を建設費として大阪市に寄付しています。
自分たちも活動をする拠点になるのだから行政だけに頼るのではなく、自分たちでも汗をかこうということで取り組まれたようですが、とてもかっこいい取り組みですよね。
これらの経験を経て、応援して下さる地域の皆さまの信頼があってこそ、公的な機関として女性の活躍を応援する活動が出来ていること。
そして、大阪の女性の皆さまの「自主独立の精神」とでもいいましょうか、そういった精神の積み重なった活動の上に今の私たちの取り組みがあるのだということを強く意識しています。
日本社会での問題も、そして世界の共通の問題としても
【沢田さん】
当財団では先ほど説明した5つの公共施設の運営のほか、事務局を担当している団体があり、その中の1つに「国連ウィメン日本協会大阪」があります。
これは女性問題に特化をした国連組織(UN WOMEN)を支援する地域の自主的な組織として活動をしており、国際的なジェンダー平等のイベントを行う時はこちらの組織で取り組んでいます。
私は「自分の子どもが大きくなる頃には、少しでも女性が活躍しやすい世界になっていたら良いな」という想いをもって日々の業務に取り組んできました。
女性にまつわる問題は、日本社会の中でも大きな課題として残っていますが、世界共通の課題でもあります。
ジェンダー平等については、少しずつ社会は前進しているなという実感がありつつ、まだまだ解決が必要な女性に纏わる課題がたくさんあると感じています。
日本の社会のみならず、世界の女性たちが抱える問題の解決にも貢献していきたいです。
【PRXE 児島】
信頼あってこそ活動が出来ているというのは、公益財団法人であるPREXも同じであるなと思いました。
信頼は一朝一夕に築き上げることは出来ませんし、一度築けば終わりということもないですもんね。
改めて日々の仕事に身が引き締まります。
続いては、特に力を入れられている活動を更に詳しくお伺いしたいと思います。
次のインタビュー
インタビュー記事2:「陰のパンデミック」~DVやジェンダーの不平等~
- 掲載日:2022年11月5日
- 企業名:大阪市男女いきいき財団
- 氏名:PREX児島