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中東の豊かな観光資源を地域振興に/中東地域 持続可能な観光開発研修(2012年10月)


中東地域 持続可能な観光開発研修
本研修は、地域住民を巻き込んだ持続可能な観光開発を日本の事例を通じて学び、中東地域に活かすことを目的としており、2008~2010年度に実施した同テーマの研修に引き続き、2011年度より新たに3カ年計画の研修です。
本年はその2年目に当ります。研修プログラムには、日本の観光振興政策等に関する講義のみでなく、地域観光振興の事例を数多く採り入れ、実際の観光コースを実地で体験しながらボランティアガイドや地域の方々との意見交換を行い、観光客や地元住民の反応を直接感じてもらえる機会を設けています。
研修で訪問した日本各地の事例と帰国研修員の活動を紹介します。

下呂温泉水明館のご好意でのお茶体験風景。

下呂温泉水明館のご好意でのお茶体験風景。


地域住民主体の観光振興である「持続可能な観光開発」をテーマにしている本研修では、日本各地の様々な事例を学びました。
日本におけるこのような取り組みの背景には、少子高齢化や過疎化に伴う地域コミュニティ維持の危機などがある場合が多く、その点、出生率が高く、若年層の占める割合が高い中東地域とは条件面で少し違う部分もあります。
しかし、観光を通じた地域振興のために、地域コミュニティ・自治体・民間がどのような役割を担うべきなのかなどについて、様々な訪問先で紹介いただき、研修員自身に、考え、学んでいただく機会を提供することができました。
また帰国研修員からは日本の事例を参考にした帰国後の活動が報告されています。昨年度の研修に参加したレバノンとパレスチナの研修員の声を紹介します。

大阪モノづくり観光推進協会・JTB西日本

『地元を愛し、地元に愛される旅館を目指す』東大阪のホテル、ホテルセイリュウが代表団体として活動を進めている、一般社団法人大阪モノづくり観光推進協会とJTB西日本は、“モノづくりの心・モノづくりへのこだわりを知ってほしい、学んでほしい”をモットーに、社会見学や修学旅行の学生を主なターゲットとして、東大阪の様々な町工場におけるモノづくりを学生に伝える、窓口の役割を担ってきました。
その活動は、受入れ学生の増加という、眼に見える形で着実に成果を上げ、TV番組でも多数紹介されるとともに、2010年の経済産業省『広域・総合観光集客サービス支援事業』の補助対象事業に採択され、2012年1月には、第7回JTB交流文化賞の優秀賞を受賞するなど、社会的な評価も受け、広く認知されつつあります。
機械部品を製造している町工場という、一見観光とは無縁にも思われる施設においても、受入れ体制の整備やPR等の工夫によって観光資源に成り得るということで、研修員は興味深げに、講師の話に耳を傾けていました。

東大阪の富士製作所の見学風景。

東大阪の富士製作所の見学風景。

岐阜県下呂市

日本三名泉として名高い下呂温泉では、伝統的な温泉旅館である水明館の瀧社長から、観光地の再生をテーマに、旅館協同組合による温泉資源の集中管理や宿泊施設の省エネルギー化等の話を伺いました。
また、旅館の和室に宿泊し、瀧社長のご厚意で、お茶席・懐石料理・温泉を体験させていただき、日本の伝統文化を伝える温泉旅館のホスピタリティを体感できました。
翌日の下呂市小坂町では、2008年に、県民が誇るふるさと自慢「岐阜の宝もの」の第一号に認定を受けた「小坂の滝」(54000年前の溶岩流出等により形成された、200以上のもの滝)を訪問し、NPO法人 飛騨小坂200滝の桂川理事長より、自然環境を保全しつつ、自然を案内する体制づくりや見学コースを整備し、地域振興につなげている活動をご紹介いただき、実際に滝めぐりコースを現場も見学させていただきました。
地方都市の観光が少ない、エジプトからの研修員は、「エジプトでも砂漠の中やオアシスに温泉があるが、あまり活用されていない。温泉の集中管理の話などは非常に参考になった」と話していました。

下呂市小坂町にて、実際に見学コースを体験。

下呂市小坂町にて、実際に見学コースを体験。

京都サイクリングツアープロジェクト

「自転車観光の推進」をめざし、10年前に京都で創業した京都サイクリングツアープロジェクト(通称KCTP)は、これまでの活動で、レンタサイクル・ガイド付きサイクリングツアーを合わせ、のべ35万人以上の旅行者の自転車観光をサポートしてきました。
6カ国語に対応した、分かりやすいホームページ上からの予約も受け付けるなど、外国人からの人気も高く、加えて、しっかりとした自転車の整備体制や、自転車の通行を主眼にしたモデルコース・オリジナルの京都市の観光地図の作成等の細かい気配りに、研修員は驚いていました。
午前に講師から話を聞いた後、実際に自転車観光にチャレンジしました。
中東地域では、自転車を通学に利用していても、社会人になってからの移動手段として活用するケースはあまり無いらしく、「久しぶり」と語る研修員も多い中、ツアーはスタートし、ハラハラドキドキしながらも、誰一人脱落することなく、2時間強のツアーを終了することができました。
少し疲れた研修員もいたようでしたが、自転車からしか見ることのできない京都の魅力・旅の工夫を存分に味わえた達成感で、研修員は皆さん満足そうでした。

京都祇園にて。一味違う京都の旅を体感しました。

京都祇園にて。一味違う京都の旅を体感しました。

パレスチナ/遺跡の保護の絵本を作成(2013年1月)

私は、日本での研修中に、人々、特に子供たちに、遺跡の重要性やそれを保護する意識が浸透していない現状への問題意識から、子供たちへの啓発活動を展開する活動計画を立てました。
帰国後はそれに基づいて、JICAのパレスチナ事務所とも協力しながら、子供たちに遺跡を保護する重要性を伝える絵本を作成し、パレスチナの各図書館に配布しました。
さらに、直接子供向けサマーキャンプにも出向いて、絵本を活用しながらの積極的な啓発活動を展開しています。

日本での研修中のイヤッド氏。

日本での研修中のイヤッド氏。

レバノン/トレッキングツアーを企画(2013年1月)

私たちは、レバノンの村々に地元料理などを提供するゲストハウスを整備し、観光客にその土地の文化・歴史・自然に親しんでもらいながらトレッキングを楽しむツアーの企画(Lebanon Mountain Trail Project)を推進しています。
すでに観光関連の企業や行政官を対象にしたモニタリングツアーを提供するところまで整えることができました。
た、この取り組みを、持続可能な観光開発を考えるベルギー・ブリュッセルの国際会議で各国代表に対して発表しました。

モニタリングツアー、ゲストハウスにおける地元料理体験風景。

モニタリングツアー、ゲストハウスにおける地元料理体験風景。

国際交流部 折井


研修概要

研修名
中東地域 持続可能な観光開発研修
実施期間
2012.10.4(木)~26(金)
研修参加者
イラク、エジプト、パレスチナ、ヨルダンの観光及び地域振興に関わる行政官 6名
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
京都嵯峨芸術大学 真板昭夫教授、日本エコツーリズム協会 高梨洋一郎理事、麗澤大学 成瀬猛教授、歴史街道推進協議会、高島市商工会、針江生水の郷委員会、京都サイクリングツアープロジェクト、堺市、JTB西日本、大阪モノづくり観光推進協会、富士製作所、ピッキオ、観光庁、水明館、飛騨小坂200滝、六甲山牧場、琵琶湖博物館、道の駅藤樹の里安曇川