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中小企業振興のための研修 118カ国から1809名が参加ー研修理解を深める工夫(2015年10月)


今号では、中小企業振興分野の研修を中心に研修参加者が深く学ぶための工夫や帰国後の活躍の様子、研修を支える皆さんの声を紹介します。
途上国の多くは、経済・産業の発展や、貧困削減に重要な役割を果たす中小企業を如何に振興するかという課題を抱えています。
PREXでは、途上国の裾野産業育成につながる中小企業振興分野の研修を1995年以降実施しており、これまで118カ国から1809名が参加しました。
2001年以降は、参加国の状況に合わせて、2種類のコースを実施しています。
ひとつは、「中小企業振興研修」です。
政策と具体的な施策、地方自治体の役割など中小企業支援に関して幅広い内容を網羅する研修です。
もうひとつは、「中小企業振興のための金融・技術支援研修」で、中小企業振興の中でも金融支援と経営支援に焦点を当てた研修です。
どちらも、さまざまな国の行政官が参加し、コースの最後に研修で学んだことを生かし「アクションプラン」(自国での中小企業支援の施策の改善や充実のため帰国後に取り組む行動計画)を作ります。
研修参加者は、PREXの独自の研修プログラムを通じて日本の中小企業振興の先進事例やこれまでの経験などを学び、帰国後のさまざまな活動に結び付けています。
PREXは、ODA(政府開発援助)の実施機関であるJICA(国際協力機構)から委託を受けて年に30~40件程度の研修事業を実施しています。
その中で中小企業振興分野の研修は毎年5~7件です。
一般的な研修期間は、1カ月程度です。

(株)図羅を訪問し、企業経営と金融機関の活用について学ぶ研修員

(株)図羅を訪問し、企業経営と金融機関の活用について学ぶ研修員


理解を深める工夫と帰国後の研修員

1つの研修を例に研修員が研修テーマについて理解を深めるための「工夫」と「帰国研修員の活躍」を紹介します。

プログラムの作り方

2015 年5 月20 日から6 月19 日に実施した「中小企業振興のための金融・技術支援(A)研修」には、アルゼンチン、バングラデシュ、ブータン、コロンビア、インドネシア、マレーシア、メキシコ、モンゴル、フィリピン、ベトナムの中央省庁、地方自治体、公的支援機関、商工会議所、政府系金融機関にて中小企業振興に携わる職員計10 名が参加しました。

下図のように、単元目標に沿って、講義や企業見学のプログラムを組み立てます。
研修員は、日本の中小企業振興の先進事例やこれまでの経験を学ぶとともに、実際に中小企業を訪問し、経営者から直接話を聞くことで日本の中小企業にとって支援策が如何に活用され、有効であるかという点について理解を深めます。

理解を深めるための工夫

①土台づくりさまざまな国の研修員が共に理解を深めるためには「質問しやすい雰囲気」や「研修員同士の学び」「意見交換できる時間を確保すること」が大切です。
研修の土台作りのために、「ふるさと自慢」「母国の観光名所紹介」の時間を設け、まずはお互いを知り、お互いに話しやすい雰囲気を作っています。

②情報の整理・消化
研修員が、訪問先で見てきた事象を整理し、自分の中に定着させることができるように、研修員同士で理解したことや疑問を発表しあう「グループディスカッション」の時間を設けています。
REX スタッフは研修員が、どんなことでも質問できるよう働きかけ、質問にはなるべく早く回答するようにしています。

③アクションプランの作成
研修員は、PCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)の手法を使ってアクションプランを作成します。
講師とPREX スタッフが書き方などをアドバイスします。
* PCM 手法とは、現状における問題を特定、問題の原因分析のうえで、解決策を探り、その実行計画をプロジェクトとして形成する問題解決型の戦略的なアプローチをとるプロジェクト・マネジメント手法です。

単元目標研修内容講師・訪問先1自国の企業と中小企業政策の課題を説明できる。レポート発表コースリーダー(中小企業論、地域経済論を専門とする大学准教授)2日本の中小企業振興政策の概要を説明できる>中小企業政策の概要中央・地方レベルでの中小企業支援実施体制・活動政府系金融機関の役割信用保証・ファンドのスキームの理解中小企業による行政支援活用事例振り返り

NO 単元目標 研修内容 講師・訪問先
1 自国の企業と中小企業政策の課題を説明できる。 レポート発表 コースリーダー(中小企業論、地域経済論を専門とする大学准教授)
2 日本の中小企業振興政策の概要を説明できる 中小企業政策の概要/中央・地方レベルでの中小企業支援実施体制・活動/政府系金融機関の役割/信用保証・ファンドのスキームの理解/中小企業による行政支援活用事例/振り返り 中小企業庁/中小企業基盤整備機構/日本政策金融公庫/全国中小企業団体中央会/兵庫県/兵庫県信用保証協会/MOBIO(ものづくりビジネスセンター大阪)/中小企業診断士/兵庫県立工業技術センター/ひょうご産業活性化センター/食品加工販売、工具製造販売などの中小企業4社(関西)など
3 自国の中小企業振興策を改善するための必要事項を洗い出せる
4 行動計画を作成できる 行動計画テーマ選定のためのワークショップ/コンサルティング/発表 PREX/コースリーダー/研修員各自