世界は人で、できている。
HOME > 研修レポート > モデル企業はこんなに成長した!JICA草の根事業「兵庫県・広東省の食の安全」事業(2015年6月)

モデル企業はこんなに成長した!JICA草の根事業「兵庫県・広東省の食の安全」事業(2015年6月)

食の安全に係る事故が少なくない中国において、2012 年度から3 年間にわたり、JICA 草の根事業(地域提案型)として、広東省食の安心安全と食育の推進プロジェクトを実施しました。
食品安全に携わる行政官と、人材育成拠点としてのモデル企業の育成を2 本柱として訪日研修・専門家派遣を実施しました。
丁度、現地で食の安心安全対策に力を入れ始めたタイミングでもあり、また、モデル企業に選定された2 社の熱意もあり、最終的にはJICA 中国事務所の担当者からも、短期間でこれだけの成果をあげることができたプロジェクトは稀有との評価をいただいたほど、充実したプロジェクトとなりました。


食の安全のための人材育成拠点を育成〜モデル企業2 社

本事業では、さまざまな活動を行いましたが、ここでは特にモデル企業2 社について紹介します。
広東粤微食用菌技術有限公司は、きのこの成分から様々な健康食品や菓子を製造する企業で、クッキーの製造ラインをモデルラインとして改善を進めました。
広東宝桑園健康食品有限公司は、蚕と桑の成分から、健康食品や果汁飲料等を製造する企業で、桑の実ジュースの製造ラインをモデルラインとして改善を進めました。

きのこの成分から健康食品や菓子を製造
広東粤微食用菌技術有限公司

同社は広東省微生物研究所のもとに設立された企業で、主に研究成果を製品に応用して販売しています。
自ら手を挙げてモデル企業に立候補したこともあり、ラインの責任者が2 年連続訪日研修に参加してさまざまな学びを自社の改善に取り入れました。
食品製造衛生設備、製造過程の重要管理点の管理とコントロール、見える化の展示不足、人材育成の4 点を解決するべき課題と位置づけ、それぞれに力を入れて取り組みました。
特に食品製造衛生設備の改善においては、研修成果を反映させた点として、次の12 点が挙げられました。

★研修成果を反映させた点

  1. 見学時のシューズカバーを履きやすく脱げにくいものへ変更
  2. 作業服を着る手順書にイラスト掲示増加
  3. 製造現場に持ち込めない物品の説明図(イラスト掲示)増設
  4. 手洗い、手の消毒の説明図(イラスト掲示)の増設
  5. 大きな手洗い場、ハンドドライヤーに変更
  6. 各人の衛生チェックを増加(各人で記録)
  7. 自動感知式蛇口への変更(蛇口の廃止)
  8. 足踏み式ゴミ箱への変更
  9. 更衣室の増設(作業場の内側)
  10. より先進的なX線異物探知機への変更(もともとは金属探知機)
  11. 作業区毎に専用の作業服を採用
  12. 紫外線ランプの破損検査の徹底

同社は、2014 年7 月に中国上海市の企業における期限切れ鶏肉事件がクローズアップされ、食の安心安全に対する危機感が高まっていた際、NHK が取材し、同じ中国の企業でも、日本からの指導を受け、きちんと衛生管理を行っている企業もあるという内容で紹介されました。

同社は、2014 年7 月に中国上海市の企業における期限切れ鶏肉事件がクローズアップされ、食の安心安全に対する危機感が高まっていた際、NHK が取材し、同じ中国の企業でも、日本からの指導を受け、きちんと衛生管理を行っている企業もあるという内容で紹介されました。

桑の実ジュース
広東宝桑園健康食品有限公司

同社は宝桑園のブランドで知られており、中国南方航空で同社の桑の実ジュースが提供されています。
ISO9001 やHACCP も取得していたため、衛生管理も基本的には問題ないと考えていたのですが、初めて訪問した時には長靴ではなくハイヒールを履いている作業者がいたり、手指の消毒も不十分であったりするなど、数々の改善が必要な点を専門家より指摘されました。
同社は社長、副社長はじめ現場の幹部職員が訪日研修に参加し、真面目に改善を重ねました。
特に次の7 点は、研修成果を反映させた活動として、広東省で開催した最終報告会の場で参加者に共有されました。

★研修成果を反映させた点

  1. 衛生管理面での改善(作業者の靴は白長靴で統一、作業服も作業内容により色分け。手洗い・消毒の手順と設備の改善、図や写真による手洗い方法の掲示、手洗いの自主的な記録)
  2. 重要管理点の記録に関する改善(文字だけでなく、図や表を入れて見やすくした)
  3. 啓発教育用資料の作成(見学者用冊子の作成、見学者の受入、見学者用通路の設置、広報用掲示物・パネル、視聴覚資料の作成)
  4. トレーサビリティシステムの構築(原料から製品までのトレーサビリティシステムを構築中)
  5. 従業員教育と研修(全社レベルの食品安全研修やマナー、職種別研修の実施)
  6. 製造現場の6S管理の強化(整理整頓の徹底)
  7. 消費者とのコミュニケーション及び広報活動の強化(自社農場での見学者受入れと試食、健康食品アンテナショップの開設、各種イベントに参加)

2 社ともに、すでに工場への見学者の受け入れを始めており、今後も広東省における食の安心安全に携わる人材育成、啓発の拠点として活動を続けていくことと思います。
現地の食の安心安全に少しでも貢献することができたとすれば、これほど嬉しいことはありません。

■兵庫県による広東省の食の安全をテーマにした技術協力研修の実績

  専門家派遣 本邦研修
2012年度 ・調査(6 月、1 週間) (次年度に延期)
2013年度 ・調査、モデル企業選定(9 月、1 週間)
・モデル企業指導(3 月、1 週間)
・食品安全部門行政官等(5 月5 名、2 週間)
・食品安全部門行政官等(12 月10 名、2 週間)
2014年度 ・指導、セミナー開催( 11 月、1 週間、セミナー参加者276 名) ・食品安全部門行政官等(10 月、2 週間、7 名)

 

国際交流部 酒井


兵庫県の声

兵庫県では、2012 年度からPREXと連携し、「中国広東省における食の安全安心と食育の推進(JICA 草の根技術協力事業地域提案型事業)」を3カ年度にわたり実施してきました。
この事業は、食品製造企業での自主的な食品衛生管理とモラルの向上により違法な食品製造を一掃するとともに、貧困層を含めた一般住民を対象とする食育により食中毒の危険を減少することを目標に行われました。
事業実施当初は、現地の状況を必ずしも正確に把握できていない面もありましたが、PREX が調整役となって広東省生産力促進センターや広東省衛生庁等と協力し、食品企業への専門家の派遣によりモデル企業を育成する手法で取り組むことによって、効果的な事業推進を図ることができました。
その成果は、2014 年7月に上海市の企業における期限切れ鶏肉事件がクローズアップされ、食の安心安全に対する危機感が高まっていた際、NHKがモデル企業である広東粤微食用菌技術有限公司を取材し、中国にも日本からの指導を受け、きちんと衛生管理を行っている企業もあるという報道につながりました。
今後もPREX が有する海外でのネットワークやノウハウを活用して、途上国との交流の一層の促進を図られることを期待しています。

兵庫県 産業労働部 国際局 塩見 彰浩さん

兵庫県 産業労働部 国際局
塩見 彰浩さん