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自給自足農業から商業的農業への移行を目指して/JICAタンザニア地方農業開発研修(2014年11月)


タンザニアでは、食料安全保障の確保、農家の収入向上に向けて、農業の商業化を推進していくことを目指しており、より戦略的・包括的な農業開発政策の策定と具体的な取り組みを模索しています。
PREX は、今年度から5年間にわたりJICA タンザニア国別研修「地方農業開発」を実施します。
6 月には、農業開発の政策立案に携わる高官等8 名が来日し、関西の農業事業者を訪問し、様々な関係者がどのように連携し地方農業が推進されているのかその取り組み事例を視察しました。


対アフリカ農業開発支援とタンザニアの課題

2013 年6 月、第5 回アフリカ開発会議(TICAD V)が開催されました。
日本政府は、今後5 年間で政府開発援助(ODA)を約1 兆4000 億円、民間資金を合わせると最大で3 兆2000 億円を投じてアフリカ支援に取り組む考えを表明しました。
特に、アフリカ経済の要とされる農業分野に関しても、「儲かる農業」を目指して重点的に取り組んでいく方針です。

中央アフリカ東部に位置するタンザニアは、国民の多くが地方で農業に従事しています。
アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロの麓で栽培されているコーヒーは世界中で好まれて飲まれていますが、コーヒー以外にも、トウモロコシ、コメ、キャッサバ、茶、カシューナッツなどさまざまな農作物を栽培しています。
土地も広大で農業のポテンシャルが高い国なのです。
しかし、タンザニア農業において、小規模な農地、未整備なインフラ、農産物加工技術の不足などによる「フードバリューチェーンの構築の欠如」が課題とされています。

農業の産業化に向けた関西の取り組みを視察

近年日本では、農業事業者が生産(第一次産業)、製造・加工(第二次産業)、流通・販売(第三次産業)の一連の全てを担う六次産業化や、農業事業者と商工業間での連携を強化し、新商品開発や地域活性化に貢献する農商工連携の取り組みが各地で行われています。

関西滞在中は、近畿農政局と京都府農林水産部を訪問し地方農業振興政策について、講義や意見交換を通して理解を深めた後、農業の産業化に向け、六次産業化や農商工連携に取り組む先進的な事例を視察しました。
農業事業者の方よりこれまでの苦労話、政府の補助金や融資の活用、雇用の拡大、地域活性化への貢献などの具体例をお話しいただきました。
また食品加工現場や直売所も見学させていただき、日本のシンプルな農産品加工技術から高度な食品製造技術、生産者のネットワーク形成の仕組みについても十分理解を深めました。

日本での学びと今後の展望

2 週間の研修では、中央省庁、金融機関、地方自治体などの政府機関や農業生産法人、民間企業への訪問、また大学教授や研究者との意見交換のプログラムを設定しました。
成果報告会では講義や訪問での学び、自国で活かせる点、そしてその可能性について研修員各自が発表しました。
地方農業開発を推進していくためには、農民や農業事業者に対するローン、融資、補助金や加工技術、販路拡大のための支援など、政府機関が果たすべき役割について理解できたと同時に、農業開発に携わる関係省庁、金融機関、地方自治体が協力して実施する必要性を感じていたようです。
また、民間企業との連携もさらに強化し、商業的農業を目指していきたいということでした。
本研修は5 年間かけて実施します。
次年度以降は、現地のニーズ調査結果を踏まえ、さらに研修トピックを絞り込んでいく予定です。

国際交流部 浅沼、坂口


研修概要

研修名
JICA タンザニア地方農業開発研修
実施期間
2014 年6 月16 日〜 6 月27 日
研修参加者
タンザニア国農業関連省庁、州、県の高官 計8 名
(農業省、畜産・漁業開発省、産業・貿易開発省、タンザニア投資銀行、農業投資信託基金、州知事、県知事)
委託元機関
JICA 関西
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
●農林水産省 ●経済産業省 ●日本政策金融公庫 ●近畿農政局 ●京都府農林水産部 ●吉川まちづくり公社 ●鹿児島大学 岩元教授 ●龍谷大学 河村教授、末原教授、西川教授 ●京都大学 辻村准教授 ●イースクエア ●トロムソ ●歴史街道推進協議会 ●坂ノ途中 ●グンゼ博物苑 ●伊賀の里モクモク手作りファーム ●こと京都 ●クボタ ●カタシモワインフード


タンザTOPIC ニア研修員が自国の農業振興事例をレポート発表

研修員は2 名1 組になり、来日前に下記のテーマでプレゼンテーションを準備しました。
①バリューチェーンアプローチの強化(農業省、畜産・漁業開発省)
②アグロインダストリーの促進(産業・貿易開発省)
③農業金融の促進(タンザニア投資銀行、農業投資信託基金)
④県農業開発計画と地域資源の活用(州知事、県知事)。
各テーマにおいて、現状課題、グッドプラクティスの事例紹介、そして今後の展望をまとめて発表しました。
タンザニアでは現在、農業セクター関連省庁、民間企業、援助団体などが連携を深め、農業バリューチェーンの構築強化に取り組んでいるようです。
タンザニアが抱える主な課題は、未整備な農業インフラや天水農業への依存により、農業生産性が低く、また農産品加工やパッケージのスキルが不足しているということでした。
また、政府は農業金融を推進するためにさまざまな政策を打ち出しているにも関わらず、特に地方の農村部においては農業金融へのアクセスが限定的ということです。
しかし近年、農村部の低所得者層の女性や青年を対象に、農業生産に投資できるよう低金利でのローン貸付スキームが導入されつつあるという事例も挙げられていました。
国家開発戦略として「タンザニア開発ビジョン2025」を掲げ、農民の生活向上と競争力のある経済を目指しています。
農業セクターが経済成長にもたらす期待が高まるものの、今後政府としてどのような政策を掲げ実行していくかが重要になってくるのだと思います。
今回のレポート発表には、タンザニアをフィールドに調査・研究を行っている大学教授や研究員の方に同席いただきました。
アフリカ、特にタンザニアに精通されている専門家であり、貴重な質疑やコメントをいただき、有意義なセッションとなりました。

国際交流部 坂口