中東の行政官が「持続可能な観光開発」研修に参加/中東地域観光開発研修(2009年11月)
豊富な観光資源を持つ中東では、地域経済の活性化に向けた観光開発が大きな課題となっている。
本研修では、関西を中心とした、日本の地域観光振興の事例を学ぶため、エジプト・パレスチナ・シリア・イエメンの、観光及び地域振興に関わる行政官5名が来日した。
住民参加型の観光開発を目指して
参加地域では、ピラミッドに代表される古代遺跡や、聖地エルサレムへの巡礼路など、宗教的な遺跡を見るために、ヨーロッパを中心とした外国人観光客が頻繁に訪れている。
また、近年、スキューバーダイビングや砂漠のオアシスツアーなど、自然を活用した観光も盛んである。
ただ、それに伴う観光資源の活用・保護の在り方や、一部に利益が集中することなく、地域経済の活性化に観光産業をどうつなげるかが大きな課題となっており、その解決策となり得る日本の事例を学ぶことが本研修のメインテーマの一つであった。
徳島県美郷の観光とは
問題の解決策の一つとして研修で大きく取り上げたのが、住民参加型の観光開発の紹介で、その事例を学ぶために訪問したのが徳島県吉野川市美郷である。
山間の過疎高齢化問題に直面しているこの地域では、住民が主体となって、自分たちの営みの中から観光資源を発見し、体験メニューとして提供するなど、積極的な住民参加型の観光開発を展開している。
例えば、農家民宿や、地元の食材を利用したレストラン、収穫体験、伝統的なほたるかご作りなどである。
光客が接するのは、観光用に特別に創られたものではなく、もともとそこに有った、地元の人々に普段の生活の知恵として根付いているものである。
そのような体験を観光資源として提供できる点が住民主体の観光開発の魅力であり、結果、地域経済の活性化や生きがいづくりにつながっている。
研修参加者が感じたこと
ホテルの建設など、インフラ整備に重点を置いた観光開発が主流の研修参加者にとって、美郷の事例は今までに無い観光の在り方として、大きなインパクトを与えた。
皆家族ぐるみのホスピタリティ溢れる対応にまず心打たれていたが、農家民宿での郷土料理体験や、自分たちもすぐにでも実践できる工夫点など、帰国後の活動の参考となる事例を多数発見できたようである。
そして何より、観光に携わる人々の生き生きとした姿、明るい笑顔に、大きな可能性を見出していた。
国際交流部 コースプランナー 折井 耶澄
研修概要
研修名
中東地域観光開発研修
実施期間
2009.11.2~20
研修参加者
観光及び地域振興に関わる行政官 計5名
内容
日本の観光振興の事例を学ぶ
委託元機関
JICA大阪国際センター
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
阪南大学 前田弘教授、ツアーランド、美郷商工会、国際観光振興機構(JNTO)、観光庁、日本旅行業協会(JATA)、西遊旅行、平城遷都1300年記念事業協会、奈良国立博物館、道の駅「しらとりの郷・羽曳野」、ホスピタリティ ツーリズム専門学校大阪、福寿園宇治工房