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地域に根ざした観光振興を目指して/JICA中東地域観光開発研修(2010年10月)


長い歴史背景を持つ中東では、地域経済の活性化に向けた観光開発に大きな期待を抱いている。
本研修では、関西を中心とした、日本の地域観光振興の事例を学ぶため、エジプト、パレスチナ、イエメン、ヨルダン、レバノンの、観光及び地域振興に関わる行政官8名が来日した。

滋賀県髙島市の針江を訪問し、住民の生活に根づく川端を見学する研 修員。

滋賀県髙島市の針江を訪問し、住民の生活に根づく川端を見学する研 修員。


持続可能な観光開発にむけて

2008年度から実施されてきた本研修も、今年度で最終年度を迎えました。
この研修では、地元住民が参画することを基本とし、環境に大きな負荷を与えずに緩やかではあるが継続的な活動を推進する『持続可能な観光開発』という概念を、当初から一貫して研修員に紹介してきました。
そのため、地域固有の伝統、文化、自然、食などを大切にした観光開発を行っている事例視察を数多く取り入れており、3年間研修の集大成である今年度は、滋賀県髙島市針江を訪問しました。

針江生水の郷

針江は比良山系に降った雪、雨が伏流水となり非常に豊かで清らかな湧水に恵まれた地域で、各家庭はその水を家の内部に引き入れ、飲料、炊事、洗濯などに活用する、川端と呼ばれるシステムの中で生活しています。
この地区において川端の水は地域で共有するもので、そこにいる魚や浄化作用のある植物を利用しながら汚さずに利用しています。
このような、『川上の人を信頼し川下の人を思いやる』生活は、2004年にNHKスペシャル『里山・命めぐる水辺』の舞台として取り上げられました。
そして、針江では現在、地域住民を中心に針江生水の郷委員会を立ち上げ、住民にとっては生活そのものである川端の一部を観光客にも公開しています。

研修員にとっての針江

中東地域の人々にとって、水は特別なものであり、古来より神聖視されてきました。
そんな国や地域から来日した研修員にとって、針江は単なる事例視察を超えた特別なものに映ったようで、非常に熱心に視察していました。
農業が主産業である地方エリアにおいて、新たな産業として観光開発に取り組もうとする際の手法に大きなヒントを得たようで、「環境への配慮やボランティア精神の高揚の大切さなど、自らが携わっているプロジェクトに応用できるアイディアを得た」、「住民同士の信頼と相互依存、そして、自然との共生が印象的だった」などのコメントを述べていました。

国際交流部・コースリーダー 折井 耶澄


研修概要

研修名
中東地域観光開発研修
実施期間
2010.5.31(月)~6.25(金)
研修参加者
観光及び地域振興に関わる行政官 計8名
委託元機関
独立行政法人国際協力機構(JICA)大阪国際センター
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
名古屋外国語大学 桂井教授、姫路市、姫路観光コンベンションビューロー、浜屋、JTB西日本、ホスピタリティツーリズム専門学校大阪、観光庁、国土交通省、日本エコツーリズム協会、西遊旅行、阪南大学 榎戸教授、平城遷都1300年記念事業協会、堺市、針江生水の郷委員会