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日本企業の方々
畑ダイカスト工業株式会社の畑 浩基です。

畑ダイカスト工業株式会社紹介

東大阪市西石切町、亜鉛ダイカスト鋳造(超精密部品)
従業員数10名、うち5名がベトナム人
(PREXベトナム人リーダー育成研修2020に参加したマインさん、技能実習生2名、エール学園卒業生2名)

1973年に先代の畑冨博氏が創業。
鋳造方法のひとつであるダイカストの中でも「亜鉛ダイカスト」を主に手掛ける製造企業。
2017年に2代目として事業承継。

主な生産品は、自動車の部品や住宅用の建築金物等の大物加工から超精密部品であるエンジン 内部のシリンダーの加工まで多岐にわたる。

2006年:ISO9001取得
2018年:大阪の元気なものづくり企業 匠認定 経営力向上計画取得

畑ダイカスト工業株式会社 畑 浩基社長との対話

畑 浩基氏

職場環境はすごく厳しいです。とにかく暑い。
これまで国籍、宗教、文化、性別など関係なく弊社で働いてみたいという人を採用してきましたが、全員が辞めていきました。
魅力のある会社に変わらないといけないと考え、それまでやってきたことの真逆のことをしはじめました。

まず理念を作りました。
「世界中の企業・人と知り合い、いい人・いい製品を作り、関わる全ての人の夢の実現を目指します」。
いい人づくりをしながら、いい製品を作りたい。
「いい人」が作った「いい亜鉛ダイカスト部品」で関わる全ての人が幸せになれるような活動を我々はしていきたいとの思いです。
10年ビジョンの中で2030年に年商2億円の工場をベトナムに作ろうと計画しています。
この計画は私一人でたてたのではなく、マイン君も一緒に計画しました。
そして理念、ビジョン、計画、会議、朝礼、週礼、週末の会議などを大切にしています。
マイン君には、私たちと一緒になって会社を作っていくのを手伝ってくれることを期待しています。

製造現場は職人の世界なので、共通言語がなくても見て感じて覚えることが大切です。
自分がこの仕事に入ったときに職人さんに「教えて」と言っても誰も教えてくれず「見て覚えろ」と言われました。
となると言葉で説明を求めようとする日本人より、じっと見て感じて覚えようとするベトナムの方のほうがずっと習得が早いのです。
もともと職人の世界は、言葉や国を超えているのだと思います。
私は技能実習生にうちに来てもらうときには、その技能実習生のベトナムの実家を訪問しています。
向こうのお父さん、お母さん、親戚や近所の人、誰かわからない人も集まってきて「初めて日本人が来た!」と迎えてくれます。向こうのお父さんもお母さんも自分の子がどこに行こうとしているのか、どんな社長か、信用できるのか、絶対心配しているだろうな、絶対会いに行って挨拶しておくべきだなと思っています。

今年度新たに採用した社員うちの一人は母子家庭で育ったベトナム人女性です。
コロナ禍でお母さんに会いたいとホームシックになっています。
せっかく日本に来たので働いてよかったと思ってほしいし技術も身につけてほしい。
コロナで外出の機会もなく、日本語を使うときが限られるので、「交換日記」をしています。

日本に来る社員を受け入れるにあたって「この家賃でいいか」、「自転車がいるか?」一人一人の状況を見て一緒に考えています。
自分が言葉もうまく通じない中、ニューヨークに単身で暮らした経験があるからです。
炊飯器買うのにも電話をどうつなぐのかにも苦労し、まわりの人に助けてもらいながらちょっとずつ自分の生活の拠点を作っていきましたから、日本に来たベトナム人の気持ちがわかります。
ニューヨークではアフリカのセネガル出身の大工さんに会って、お世話になったこともあります。
事業を軌道に乗せていた彼の周りには自然とセネガル人が集まっていて、自分もその輪に加えてもらっていました。
人は人のお世話にならないと生きていけないな、助けてもらわないと生きていけないなと思った経験も自分の心にはいつもあります。
でも「過保護」はダメ。
ある程度は知らん顔しながら「会社の外に出たら自分でやりや」という姿勢でいます。
みんな、ほんとによく頑張っています。

まずは、社員一人一人に関わっていきました。
私が社長になる前、会社の雰囲気はずっと悪かったし辞職も続いていたし、そのうち社長にならなあかんやろうなと思っていたけどなって何をどうすればいいのかわかりませんでした。
ずっとここに育ってきて、育った環境しか情報はないという情報不足の中で時代も人も変わっていっている。
でもその情報しかないから、それをかたくなにやろうとすると問題があふれる。
先代のころからの職人さんたちが次々と去る中、技術も残していかなくてはなりませんでした。
社長になってから続けている毎朝の3分間スピーチでは、仕事のことだけではなく娘さんの話やベトナムにコロナワクチンを送ったという時事ニュースの話題など社員全員が日本語で話します。
仕事以外でもコミュニケーションが取れだし、社員同士の関係も私と社員の関係も「人」と「人」という形になってきていると思います。
今が決して完ぺきではありません。
社員には不満もあると思います。
でもこれまで年月をかけて外国の方と一緒に仕事をするために試行錯誤するうちに、日本の社員の方考えは確かに変わってきています。
日本人の製造部長は、「外国の方を採用するのは全然問題ないですよ」と言ってくれるようになりました。
最初は日本語が伝わらないストレスから、いらいらすることも多かったようですが。

社員のみんなが、安心して長く働ける会社にしたい。
社員が結婚もできない、食事もできない会社では困ります。
会社の理念通り「夢を実現できるような会社」、「ここで働きたいと選んでもらえる会社」にしていかないといけないと思っています。

マイン君は、奥さんが日本に来ています。
奥さんはうちで働きたかったみたいけど、うちもいっぱいいっぱいで、近所の友達の会社に紹介して働いています。
家族で日本に暮らすようになってくれたら嬉しいですが、社員には個人の理念やビジョンをきいていて、マイン君に「10年後どうなっていたい?」ときいたら嫌な予感するなと思っていたけど、マイン君は「ベトナムで電気屋がしたい」と言っていました。
「まじか、正直やな、、、」って思いましたが、そこを「ここで働きたいと選んでもらえる会社」にしていくだけです。
10年後のみんなの夢を聞いたりして、社員には「あいつ、やたら聞いてくるな」と思われているかもしれません。

マインさん

入社して3年になります。今はベトナムから家族が来て一緒に日本で生活しています。
社長はいつも「自分で学んだ知識を自分のためだけに使うのはもったいない」と言います。
「PREXベトナム人リーダー育成研修2020」に参加させてもらい、強い企業にはいくつか特徴があることを学びました。
まず一つ目は、経営理念を重視しているということです。
長く続いている企業はしっかりとした経営理念があり、さまざまな経営の決定は経営理念が軸になっています。
そして、将来のビジョンと会社の目標があります。
そこから各部門が目標を立て、個人が目標を立てる、このしくみが大切だとわかりました。
もし社員一人一人が目標を達成できれば、会社も目標を達成できることになります。
畑ダイカスト工業の経営理念のなかで一番好きなのは、「いい人間を作り、いい製品を作る」というところです。

畑 浩基氏

マイン君に「PREXベトナム人リーダー育成研修」に参加してもらったのは、日本の会社の考え方を理解し、新しく入社したベトナム人社員に学んだことを伝えてほしいと思ったからです。
今、彼は技能実習生と私の仲介役となり、「日本はこうだよ」と説明する役割を果たしています。
研修に参加する前は暗い顔をしているときもありましたが、今は明るく働いています。
「PREXの研修でこんな説明があったやろ?」と聞くと「忘れた」というので困るときもあります(汗)。
でも、すぐに思い出して行動してくれています。

  • 掲載日:2021年7月10日
  • 研修名:PREXベトナム人リーダー育成研修2020
  • 企業名:畑ダイカスト工業株式会社 
  • 氏名:畑 浩基氏
  • 役職・職名: 代表取締役社長

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