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Ninja Tech忍者テックを世界に伝授。- PREX Island

日本企業の方々 発見
「特殊高所技術 Ninja Tech」で、特殊な重機がなくても足場のない高所の点検・補修が できるように。

Ninja Tech 忍者テックを世界に伝授。

株式会社特殊高所技術の代表取締役 和田聖司です。
もともとは京都の宮大工工務店の息子でしたが、2007年にこの会社を作りました。
「地質調査」の現場でロッククライマーが、足場のない高所にロープでぶら下がる技術を見て、「これは高速道路や橋梁など高所での調査、補修などに活用できる!」と考えたのです。
会社設立の1月半後にアメリカのミネソタ州でミシシッピ川に架かる橋梁が落橋し、多数の死傷者、行方不明者が出ました。
それを契機に、日本国内においてもインフラメンテナンスの必要性が見直され始め、その後国内外でこの技術への需要は高まっています。
2016年は、モロッコの高速道路会社が日本の高速道路会社に技術協力してほしいということで、阪神高速道路さんに要請がありました。
日本に来られた時に弊社の「Ninja Tech」のデモンストレーションをご覧になり、とんとん拍子に弊社がモロッコの人材育成に協力できることになりました。
僕らは身一つと機材と技術があればダムの壁や橋梁に近接して点検、補修することができます。
世界の国ではこれらを点検するための特殊な重機がない国もあります。
そういう国ではより一層メンテナンスができていません。
自分たちは小さい会社ですので、世界の一部の地域に限られるのですが、技術をお教えすることで世界中の社会インフラ事故を少しでも減らせるようお手伝いができればと願っています。

世界のスタンダードに。

よく「オンリーワンでいいですね」と言われます。
弊社の技術は、会社設立から10年たっても「新技術」と言われ続けていましたから。
「新技術」は淘汰されるか、スタンダートになったときに新技術ではなくなります。
ならば、スタンダードになりたいと考えました。
その後、一般社団法人特殊高所技術協会を作り、弊社の技術をさまざまな企業の皆様に導入いただけるようになりました。
海外への技術移転も始まっています。
「世界中で橋の点検どうやっているの?」「それはNinja Techでしょ」となると嬉しいです。
インフラの事故は世界中で起こっています。
大きな被害を出さないために、建設後、できるだけ早めに点検、補修するという概念を広めることが大切だと考えています。

人は、ポコポコ育たない。

弊社が「オンリーワン企業」であるもう一つの理由は、高所に登れる技術と土木構造物を点検する知識を備え持つ「人」を育てるのが難しいからです。
例えば、新入社員をOJTで指導し現場に出すのに4か月かけています。
その新入社員を現場に連れていく指導者の育成には2年かかります。
モロッコの人材育成の場合、7人の技術者が日本で2か月訓練を受け、モロッコに戻り現地で指導する。
また日本に来て2か月訓練を受け、現地で指導するという形で技術移転をすすめました。
7人のうち3人は、今、主任クラスになっています。
とにかく人を育てるのには時間がかかります。
それに、人のモチベーションを維持するのも難しいことです。
私たちの仕事は「誰もやっていない、自分たちしかできない仕事」で誰もが誇りを持ってこの仕事を選んでいます。
しかし創業期は、10人の新入社員のうち7人は数か月のうちに辞めていました。
今は、10人のうち3人はやめてしまいます。
どんなに大切な仕事も、これが日常になるとただの作業になってしまうのですね。
社員に対し何らかの形で彼らの仕事へのフィードバックをし続け、みんなが同じ思いで仕事を続けられる、そうした環境を作っていくのが社長の仕事だと思います。

安心・安全の未来を作る

2017年、社員が現場で墜落する事故がありました。
「安全な技術」が売りの弊社にとって初めての事故で、それまでの「安全」に対する意識が一転しました。
技術者自身が、作業手順を4つとばしていたことが原因でした。
「安全」にむけてシステムも道具も突き詰めていたのですが、人のやることに絶対はないということを突き付けられたからです。
その事故を契機に、弊社では安全に関しての研修をウェブ会議で全員参加、毎月、1日をかけて行っています。
これは社員全員が意識をそろえる大切な日になっていますし、弊社は事故を経験したことによって、より一層安全な会社へと生まれ変わったのだと思っています。

日本は高度経済成長期から60年が過ぎ、災害のたびにインフラ事故が起きています。
世界各地でも社会インフラの事故のニュースが絶えません。人の安全にかかわることですし、コストの面からも崩壊してから建築しなおすのではなく、点検・補修するという概念を広げることが大切だと考えています。
「地図に残る仕事」というコピーの会社があり、私たちは「地図に残したものを守っていく仕事」をしたいと思っていました。
今はさらに前進して私たちの仕事は「安心安全の未来を作っている仕事」だと思っています。
弊社に来てくださる研修員の皆さんには、弊社の技術だけでなく、安全の大切さ、人の育成の大切さ、そのような思いを一緒にお届けできていたらいいなと思っています。
(2019年11月25日 )

  • 掲載日:2019年11月25日
  • 研修名:JICA「投資促進のためのキャパシティ・ディベロップ メント(A)」
  • 企業名:株式会社 特殊高所技術
  • 氏名:和田 聖司氏
  • 役職・職名:代表取締役社長