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SDGsが注目されている背景と私たちが貢献する理由- PREX Island

日本の専門家 SDGs
SDGsについて教えてください。

SDGsについて教えてください。

PREXは研修事業だけでなく、活動を通じてSDGsへの理解を広めることも、ミッションの一つだと考えています。
SDGsが注目されている背景や、私たちが貢献する理由について、JICA研究所 大野所長にうかがいました。

今年10月に発刊された「Leave No One Behind:Time for Specifics on the SustainableDevelopment Goals」
JICA研究所と米国ブルッキングス研究所との共同研究

最近は背広にSDGsバッジを付けている方もよく目にするようになりました。
今、どうしてSDGsが注目されているのでしょうか?

SDGsの前に、2000年に策定されたMDGs(ミレニアム開発目標)がありました。
2015年までに途上国の貧困を半減するために、世界が協力して支援を強化する決意をしたものです。
MDGsは人道的な支援に焦点をあて、その中心は先進国から途上国への公的な援助でした。
これに対し2015年に策定されたSDGsは、その検討プロセスに企業や市民社会、研究者なども参画し、環境問題はじめ地球規模の課題と途上国の開発問題の両方を合わせる形で合意されました。
そして「誰ひとり取り残さない」という視点で、途上国だけでなく先進国も自らの課題を解決すること、そのために民間企業も重要な役割を果たすことが明確に位置付けられました。
それを受け、社会や環境、経済を調和させることをベースにビジネスの在り方を考えなければいけないと「自分ごと」として取り組む企業が増えているのではないかと思います。
日本でも大企業の経営層はCSRだけではなく、調達・生産・販売などサプライチェーンのすべての段階で環境社会配慮をしようと考えていますね。
また特に欧米では、ESG投資に代表されるように、金融の面からもサステナビリティを重視して資金を提供しなくてはいけないという機運が高まっています。
それによって、企業にとってはサステナビリティを大事にしたほうが資金調達の面でもよりよいビジネス環境が得られるという状況にもなります。

SDGsが自分にどう関連するのかピンとこない、これまでもよい組織経営を目指しているが、それとどう違うのか?と質問されることがよくあります。

「SDGs」という言葉を使わなくても、「三方良し」のような価値観で経営している企業は日本に多いですし、国際社会で叫ばれている価値観がしっくりこないという方もいるかもしれません。
でも、今や企業活動は様々な面で世界と密接につながっています。
例えば海外でビジネス展開していたり、外国人を雇用していたり、原材料の調達や販売などマーケティングの面で海外と繋がっている企業は増えているはずです。
このように海外との結びつきが広がっている中で、誰がどのように原料を生産し、どこで加工しどのようなものを作って、どう販売し最終的に誰がどう利用しているか、という点を考えて初めてグローバルな企業経営が成り立ちます。
もちろん三方良しの精神は大事ですが、遠いところに住んでいる作り手や消費者のことも配慮しなくてはいけませんし、地球全体がどうなるかを考えねばならなくなっています。
もっと広い視野でまた長い将来を見据えて、今まで以上に目配りをしないといけないということだと思います。
未来志向で発想することで新たな課題やニーズが見え、途上国の人々や世界のために積極的に貢献できる製品やサービスを開発できれば、ビジネスチャンスにもなるでしょうし、SDGsに基づいてサプライチェーンを考えるよいきっかけにもなります。
世界がこれだけ繋がっている時代ですから、広く世界の課題やニーズをとらえて、ビジネスを通じた解決策を考えることを促す契機になる、という風にSDGsを捉えていけたらいいのではないでしょうか。

企業がグローバルなサプライチェーンの一翼を担うときに、サステナビリティに関して独自に取り組んでいたとしても、それを確認できるチェックリストや基準・認証がなければ、サプライヤーとしての資格要件からはじかれてしまう可能性もあって、勿体無いことになります。
特に中小企業は不利にならないよう、留意しなければなりません。
グローバルに使われている言葉や共通言語になりつつある定義・キャッチフレーズなどを知ることによってリスクに対応できることにもなります。

日本がSDGsに取り組む必要があるのはどうしてでしょうか?

SDGsには先進国の課題も含まれています。
「誰ひとり取り残さない」というSDGsのレンズを通して見ると、少子高齢化、地方の過疎化など、日本が直面する課題に新たに気づかされます。
またその対策自体が世界的な課題や途上国のニーズに取り組む際に参考になる可能性があり、ビジネスチャンスともなり得ます。これまでの取り組みや技術・サービスを改めて新しい視点で評価し直すきっかけとなります。
第二に、日本自身が国際協力を通じてドナーとして、途上国の開発や地球規模の課題に積極的に貢献できる余地が大きいということがあります。
災害や公害、健康や教育、産業発展など、日本の経験を活かした課題解決のアプローチで世界的に共有できることは多くあります。
さらに、まだ解決できていない問題で日本自身が今、試行錯誤しながら取り組んでいる経験も、途上国でのSDGs達成に貢献できるはずです。
第三に、日本が途上国に教えるだけでなく、国内と海外を双方向につなぐことで、それぞれの課題解決にお互いの経験や事例が活かせますし、その際にSDGsのゴールに照らして発想することで相乗効果が出ると思います。
例えば、上勝町のゼロウェイストの取り組みも地域で廃棄物を出さない生活を生み出そうということから始まり、それをダボス会議で世界に紹介したら共感を得られ、海外からも注目が集まっているそうです。
世界に共通する取り組みが世界にとって気づきをもたらす際、共通言語としてのSDGsが役に立つのだと思います。
日本のこれまでのやり方だけを単線的に伝えるのではなく、逆に海外の多様な考え方やアプローチから教わることもあるはずで、内と外のつながりが相互の課題解決を促進することになるのではないでしょうか。

そういう意味では、様々なステークホルダーと繋がっているPREXこそが強みを発揮できるのではないでしょうか。
PREXは関西に根差し、日本の誰がどの企業がどんなノウハウを持っているのかを把握していると同時に、途上国の視点から世界の課題も理解しています。
まさに途上国と関西をつなぐことで、日本の企業にSDGsについての気づきを与えるとともに、途上国の企業との出会いの場を作り、お互いを結び付けて課題解決をもたらす「つなぎ役」になれるのではないでしょうか。
( 2019年11月25日 )

  • 掲載日:2019年11月25日
  • 企業名:JICA研究所
  • 氏名:大野 泉氏
  • 役職・職名:所長