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メコン地域観光振興研修のあれこれ/JICAメコン地域観光振興研修(2011年3月)


PREXは、国際協力機構(JICA)大阪国際センターから委託を受け、「メコン地域観光振興」研修を、3月2日より3週間実施しました。
本研修は、メコン地域で観光振興に携わる行政官9名を対象に、日本の観光立国に向けた取り組みの紹介を通じ、メコン地域内観光の振興策、特に日本からの周遊観光促進について討議することを目的としています。
ほぼ全行程に同行し、討議をまとめていただいたコースリーダーの名古屋外国語大学 桂井講師からご寄稿いただきました。

メコン地域の地図を前に、メコン周遊観光の魅力や 観光行政の課題などを話し合う研修員。左端が桂井講師。

メコン地域の地図を前に、メコン周遊観光の魅力や
観光行政の課題などを話し合う研修員。左端が桂井講師。


名古屋外国語大学 桂井滋彦氏

メコン地域の国々は、私が日頃接する学生達に尋ねてもその位置を正確に示すことは難しいようだ。
このCLMVT(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、タイ)は海外旅行の行き先として一部の国や都市を除くと馴染みの薄い地域でもあるので、この地域への関心を高めたい。

研修は大切な資産に

観光促進事業は、観光地(研修員側)と旅行者(日本側)を結びつけることなので、研修による双方向の意見交換は大変に有意義である。
海外への送り出し旅行会社で「日本のお客さんは定時運行を当然と思い、海外でも決められた通りの旅程で巡ることを望み、いわば計画したスケなる観光以外の体験イベントを求める」などを聞き、マーケットに立脚した目線が必要であることを再認識した。
研修員も3週間に亘り日本に滞在し、自国を改めて外から見直す良い機会になっている。
研修事業は、広域観光推進の視点でもお互いの協力・連携の可能性を探り、アイデアの共有の場であり国際会議の側面もある。
また、研修員の日常業務は歯車のひとつであり、全体を眺める機会は少ないので、日本での観光事業ではあるが全体像を捉える好機になる。
研修員同士が専門家として意見交換が出来たことは、個人としての大切な資産になるであろう。

多様な文化が重なり合う複雑な地域

この地域は多数の民族が歴史的に広く国境を挟んで住んでいて、多様な文化が重なり合い複雑な表情を見せる。
人々は日常生活の中で周辺国へ往来し、外国という意識もなく生活している国もある。
我々が耳にする国際交流は外向きの顔を意識したものと捉えがちであるが、この陸続きの地域では普段着の付き合いである。
研修員は少数民族観光について貧困撲滅や雇用創出ばかりではなく、観光を通してのボランティアや地域の誇りの伝承について理解を深めたが、Communitybased tourismは今後もこの地域の中心的な課題である。
この研修は私にとっては民族や国境とは何か、西洋の植民地時代を過ごした人々にとっての伝統とは何か、等について意識させられる場でもある。

国境通過の迅速化・簡素化の議論では、国境警備の軍務を経て現在は観光推進の仕事についている研修員にとっては、両極の課題であっただろうと推察する。
フィールド研修の際は旅館に宿泊をしたが、就寝時・起床時に布団の上で敬虔な祈りをささげる研修員を目の当たりにして、日常の中での身についた宗教感について考えさせられるものがあった。
また課題の準備やレポートに深夜まで取り組み、きわめて真面目に受講していただき感心をした。
東日本大地震の発生時、日本に滞在した経験は、日本に対しての関心とともに、研修員の心に強く残ることと思う。


研修概要

研修名
メコン地域観光振興研修
実施期間
2011.3.2(水)~18(金)
研修参加者
メコン地域で観光振興を担当する中央または地方政府機関職員9名
(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムから2名、タイから1名)
委託元機関
社団法人 独立行政法人国際協力機構(JICA)大阪国際センター
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
名古屋外国語大学 桂井滋彦講師、国際機関日本アセアンセンター、甲南女子大学 大倉恒雄講師、歴史街道推進協議会、京都府 商工労働観光部、フィリピン共和国観光省 西日本支局、近畿日本ツーリスト、エーペックスインターナショナル大阪支店