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研修の軌跡と指針。- PREX Island

PREXスタッフ
35周年記念インタビュー:2025年2月入局のバスネット職員が、2025年3月末に退職した瀬戸口部長をインタビューしました。

PREXの魅力は、ニーズにあった研修プログラムを作ってきたこと。

瀬戸口

2025年3月退職にあたり、この34年を振り返りました。
改めてPREXの魅力は、一所懸命に一人ひとりの参加者に寄り添い続けることや、それを前提にしたプログラムを作ってきたことだと思います。
手間もかかり、コスパは悪いかもしれませんが、そういうPREXの職員の様子に周囲の皆さんも協力していただいていると思います。
もちろん、まだまだ成長しなければいけないことやプロとして充実させないといけないことはあると思います。
しかし、それと引き換えに「熱さ」「思い」が減り、「こなす」ことだけになってしまっては、PREXの強みをなくすことになるような気がします。
だから、両方とも研ぎ澄ますべきだろうと思います。

1990年、設立のころを振り返ると、今は時代が変わったという実感です。
ODAもPREXも変わりました。
PREXは、関西経済同友会の太平洋アジア調査団の提言「新・太平洋時代の到来と我が国の役割ーゆるやかで、しかも確固たる連帯を求めてー」が発端となり設立されました。
ASEAN諸国を中心に人づくりが必要だという時代でした。
それが、本当に十年もしないうちにいろいろな国が経済発展し、ODAの対象から卒業していきました。

今思えば、失礼で恥ずかしいことですが、私が入局した頃は「研修参加者に日本から学んでもらうのだ」と思っていました。
知らず知らずのうちに途上国の方に学んでもらう、そういう気持ちがありました。
今は違います。
もちろん相手の国が経済成長しているということもありますが、発展途上の国からであっても、日本が気づかされることが多いです。
日本がベストな発展をしているわけではなく、日本にも世界にも共通する社会課題がたくさんあるからかもしれません。

バスネット

35年で国際情勢と研修内容はどう変化しましたか?

瀬戸口

現在は年間10件ほどの研修をJICA関西から受託していますが、設立当初は、PREXが開発途上国のニーズにあわせ、研修内容を企画し、JICAに提案する形でした。
研修内容は、国際情勢や各国の経済状況に応じて変化してきました。
当初は、企業経営に関する内容が主流でしたが、時代の変化とともに市場経済化や環境問題、投資促進、農村開発などが新たに加わり、より多様な分野の研修が求められるようになりました。

特に、冷戦終結後の新興独立国や中央アジア諸国の独立とともに、市場経済化や民主化の支援が強調され、PREXはこれらの地域に特化した研修プログラムも提供しました。
そして常にその時々の国際的な課題やニーズに柔軟に対応し、研修プログラムを進化させてきました。

バスネット

研修に参加する国や人の変化はありましたか?

瀬戸口

研修参加国は、時代と共に変化してきました。
当初は、アジア太平洋諸国からの参加者が中心でしたが、その後中南米など全世界へ拡がり、最近ではアフリカ諸国からの参加者が増加しています。
経済成長や民主化、社会基盤の強化などが重要なテーマとなっており、PREXはこれらの地域の研修も提供しています。
また、設立の初期は、例えば大臣候補の方や企業や経済団体のトップの方が研修に参加していました。
日本に来て学んだことを国に持って帰り、国づくりに活かしたいということだったと思います。
最近は、行政組織の課長や部長等の管理職の皆さんが増えています。
それぞれの国が発展しており、日本以外の国でも学ぶ機会があるなどいろいろな理由が考えられます。

バスネット

35周年を迎えた現在も変わらないものは?

瀬戸口

変わらず大切にしてきたこととして、「国際協力を通じて日本と海外の橋渡しをし、平和につなげたい」という思いがありました。
そして、研修を通じて、日本と参加国の研修員が対等の立場で関わり、相互理解や協力関係が築かれることが、PREXの成果の一つであると考えています。
参加者はそれぞれの国で豊富な経験を持っています。
PREXは、その視点を尊重し、ノウハウを最大限に活かして、研修での学びや気づきを深めてもらう役割を果たしてきました。
また、30年前に研修を受けた研修参加者が日本でビジネスセミナーを開催するために来日したり、大阪・関西万博に出展するために来日するなど、ビジネスパートナーとして日本やPREXにアプローチしてくれることもあります。
中には、PREXに研修プログラム実施について相談してくれる研修参加者もいます。
PREXが、単に研修を提供する組織にとどまらず、新しい事業の開発やイノベーションを推進する役割も担っているという点でも期待されているのだと思いますし、
だからこそ、自分たちも学びを止めずに成長し続け、期待に応えられる組織でありたい、と思っていました。

バスネット

PREXの設立の原動力は、関西経済人の高い志と地域発展への熱い思いにあり、運営基盤となっている基本財産は、関西の約100社の民間企業と6自治体から寄附されたものです。
理事、監事、評議員などの構成も関西の産官学をあげての体制となっています。
設立から現在まで、関西の主要企業から手弁当で20社から100名の出向者を派遣いただいています。
そして、長年にわたりPREXを支えている職員が中心となり、協力いただく皆さんと連携してきたことが、PREXの特徴であり強みになっていると思います。
これからも、寄附されるにふさわしいPREXであり続けるよう、自分も役割を果たしたいと考えました。

瀬戸口
1991年、私は設立2年目のPREXに就職しました。
それから34年が経過しましたが、2025年3月末で PREXを退職することとなりました。
学生時代に先進国と途上国との「格差」への関心が高まっていた頃に、「途上国 の発展に人づくりで貢献する」というPREXのミッションに惹かれたこと、そして、設立2年目であり、これから組織の 歴史を作るメンバーとして参加できるということに魅力を感じたことが、PREXに入局した理由でした。

バスネット
ネパールのカトマンズ市の出身です。
名古屋の大学院で平和とガバナンスについて学び、2025年2月にPREXに入局しました。
このインタビューでPREXが、社会の移り変わりの中で進化してきたことを聞き取ることができました。

 

  • 掲載日:2025年5月6日
  • 氏名:国際交流部:瀬戸口、バスネット