
研修概要
本研修にはキューバの中小企業振興にかかわる行政官が6名、企業経営者6名の計12名の研修員が参加しました。キューバでは、中小零細企業振興を進めようという国としての方針が決まったのが近年のことであり、2021 年に自営業者の営業可能業種の拡大や中小零細企業に関する新たな政策が発表されました。
これまで国営企業中心だった経済に加え、自営業や中小零細企業を盛り立てていくことでキューバ全体の経済状況をより良くして行こうというのが大きな狙いです。そのような流れのなか、キューバで㈱オリエンタルコンサルタンツグローバルが実施するプロジェクトに含まれる訪日研修、その中でも中小企業振興に関する研修の一部をアレンジするという業務を同社より受託しました。
日程
2024年6月14日(金)~6月21日(金)*PREX受託期間
委託元機関
株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル
SDGs
PREX担当
関野、荒木、狭間
講師
岡本 一幸氏(クリエイション 代表取締役)
黒田 和也氏(Butterfly Effect Project代表)
林 幸治氏(大阪商業大学経営学科総合経営学部長)
永井 俊二氏(大永コンサルティング代表取締役)
中村 信太郎氏(国際協力機構国際協力専門員(社会保障))
訪問先
厚生労働省年金局
日本年金機構大手前年金事務所
サンパック
河辺商会
関西クラウン工業社
滋賀県商工観光部
滋賀県産業支援プラザ
京都信用金庫(コミュニティ・バンク京進)
京都試作ネット(佐々木化学薬品、ニューネクスト、京都府 商工労働観光部)
神戸大学産官学連携本部
研修員は本当に熱心で沢山質問もしていました。何よりもこれから母国の企業や経済を良くしていかなくてはいけないという意気込みが感じられ、われわれ事務局も緊張感をもって毎日のプログラムに同行しました。
訪問先の皆さんにとって、最初は「遠い知らない国」だったキューバを少しでも知って頂けたことが嬉しかったですし、今回の研修を通じてキューバの研修員も多くのヒントを得てもらえたことは喜びです。
キューバ国中小零細企業振興アドバイザー業務2024年度本邦技術研修①
「訪日研修」は、キューバの未来への第一歩。
キューバは、国有企業中心だった経済から、自営業や中小零細企業中心の経済へとシフト。
キューバでは、2021年に、国の零細・中小企業振興を進めるという方針の元、自営業者の営業可能業種の拡大や中小零細企業に関する新たな政策が発表されました。
PREXは今回、株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバルの委託を受け、中小企業振興に関する研修の一部をアレンジしました。
参加した研修員は、本当に熱心で、訪問先では毎回多くの質問がありました。
自分たちが母国の企業や経済を、これから成長させるという意気込みが感じられ、PREXのメンバーは、緊張感を持ちプログラムに同行しました。
また、研修を通して、キューバの研修員が多くのヒントを得ただけでなく、日本の関係者の皆様には「遠くの知らない国」だったキューバを知っていただく機会になりました。
人と人が出会うことで起こる新しい発見のすばらしさを実感した研修でした。
(国際交流部関野、荒木)
キューバ国中小零細企業振興アドバイザー業務2024年度本邦技術研修
★日程:2024年6月14日(金)~6月21日(金)(*PREX受託期間)
★参加者:行政官6名、経営者6名
★委託元機関:株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル
★講師・訪問先(敬称略 順不同)
【講師】
岡本 一幸氏(クリエイション代表取締役)
黒田 和也氏(Butterfly Effect Project代表)
林 幸治氏(大阪商業大学経営学科総合経営学部長)
永井 俊二氏(大永コンサルティング代表取締役)
中村 信太郎氏(国際協力機構国際協力専門員【社会保障】)
【訪問先】
*PREXが依頼した訪問先のみ
厚生労働省 年金局
日本年金機構 大手前年金事務所
サンパック
河辺商会
関西クラウン工業社
滋賀県 商工観光部 中小企業支援課
滋賀県産業支援プラザ
京都信用金庫 (コミュニティ・バンク京信)
京都試作ネット(佐々木化学薬品、ニューネクスト、京都府 商工労働観光部)
神戸大学産官学連携本部
キューバ国中小零細企業振興アドバイザー業務2024年度本邦技術研修②
「訪日研修」は、キューバの未来への第一歩。
近年、1万社以上の中小零細企業が新たに認可されましたが、その発展を支える支援体制が十分に整備されていません。
この研修は、2023年4月より開始されたJICA「キューバ国中小零細企業振興アドバイザー業務」の一環として実施した本邦研修です。
日本の中小企業振興に携わる関係機関への訪問を通じ、キューバの中小零細企業振興に関わる行政官の政策立案・実施能力、および中小零細企業経営者の経営管理能力を強化し、両者の連携促進を図ることを目的としました。
キューバでは、日本と比較しても官民連携が進んでおらず、互いの業務内容への理解も不足している状況がありました。
そのため、行政官と経営者が合同で研修に参加する今回のプログラムは、非常に画期的で有意義であったという声が多数寄せられました。
特に経営者からは、本研修の内容がキューバの課題に即しており、プログラムの企画に対して感謝の意が示されました。
これは、これまでキューバで事業を共に行ってきたハバナ大学財団と共に訪問先を選定できた成果だと考えています。
また研修員からは、中小零細企業を支援する様々な関係者が連携することの重要性について学んだという声が多く聞かれました。
日本の状況と比較することで、キューバにおける課題を認識できたことは、大きな収穫であったと感じています。
今後の活動としては、2024年9月以降に、行政官と経営者を対象としたTOT(TrainingofTrainers)研修、10月にはTOT講師による行政官と経営者向けの研修を実施予定です。
本邦研修で特に高い関心が寄せられた、日本の経営戦略などの内容を充実させていきたいと考えています。
また、本邦研修の参加者がTOT研修にも参加することで、日本での経験や知識の共有がさらに進むことを期待しています。
加えて、今後のキューバにおける中小零細企業振興政策の策定、中小企業庁の設立の計画の中で日本の中小企業振興策が活用できるよう、積極的に働きかけていきたいと思います。
短期間ではありましたが、充実したプログラムを企画・実施できたのは、PREXの皆様の多大なるご尽力のおかげです。
心より感謝申し上げます。
(株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル 加藤 夕佳氏)
企業訪問:株式会社関西クラウン工業社
守ることを決め、決めたことは守る。
片づけるだけじゃない!キューバの職場に取り入れたい「3S」の心。
職場だけでなく家庭でもよく言われる、整理整頓。
これに清掃を加えると製造現場を中心によく知られている3S(SEIRI SEITON SEISOU)になります。
この3S活動を徹底的に進められている株式会社関西クラウン工業社に伺いました。
同社は1950年に創業し、従業員8名、大阪府八尾市にある「冷間鍛造加工」を得意とする会社です。
その技術を使って作られるのは、ソケットレンチやナットを締めるための工具等、ものづくりの現場に欠かせない工具です。
普通の工具ではなく、それぞれの現場現場の「もうちょっと、こういうものがあれば・・・。」という声に応えた工具の企画設計、製造も行っています。
同社は1999年から、現場で徹底した3S活動を実施・継続しており、現在も、輪番制で他の企業と一緒に勉強会を続ける等、ものづくりを続ける上で、まずは自社の現場から変えていく活動を大事にしています。
今回の研修では、3S活動の真の目的から効果についてご講義いただき、3Sを含めた改善の取り組みを工場にて見学しました。
キューバの研修員は、「自分の職場への3S活動の適用についてどうすれば良いか」という点について、熱心に質問をしていました。
「在庫管理において3Sが活用できるため、すぐにでも実践したい」、「食品生産において清潔であることは最も重要で、同社の取り組みを取り入れたい」とのコメントもありました。
温川政佳社長からは、「活動は1社だけでは、続きにくいため、他社と一緒にすすめるといいと思います。
そのためには何でも言い合える関係作りが大事です」とアドバイスをいただきました。
この言葉は、全員の心に残ったようで、帰国後はカイゼンのワークショップを開催するという研修員もいました。
(荒木)
企業訪問:株式会社河辺商会
わが社はこうやって生き残ってきた。
ものづくりだけじゃない!継続するために大切にしていること。
キューバの研修員は、日本企業の商品開発の取り組みを理解するため、切ってそのまま食べられる「まな板になるお皿”CHOPLATE(チョップレート)”」を開発した株式会社河辺商会を訪問しました。
同社は大阪府堺市にあり、1955年に設立され、金型設計・製作や、印刷塗装などの加飾二次加工、プラスチック製品の製作・販売をしています。
2000年代までは大手の取引先の下請けとしての業態でしたが、その後業界全体が不景気となり大手の取引先1社だけでは、経営が成り立たなくなっていたそうです。
しかし、2000年代以降は1社への依存体質から脱却し、「普通の価格&普通の早さ」ではない戦術に転換され、様々な企業から仕事を受けるようになりました。
また、自社商品として開発した「CHOPLATE」が大ヒット商品となり、収益の大きな柱になりました。
さらに、近隣企業や自治体と協力して「オープンファクトリー」を実施し、社外の方の意見に触れることでノウハウの蓄積を増やしたり、地元での認知度向上に取り組んだり、展示会などで新規顧客獲得、販路開拓を強化したりと、積極的に活動しています。
キューバの研修員は、これまでの経営課題、商品開発の取組みについてのお話を聞き、工場を見学しました。
とても興味を持って様々な質問をしたり、「CHOPLATE」をその場で購入したりと大盛況でした。
民間企業を経営する研修員は、
「わが社は、小規模で営業しているため、需要が大きくなっても対応するのが難しい。主な問題は、在庫管理と供給のロジスティクスである。今回の研修で、経営戦略や理念とチームワークで経営することが大切だとわかった。従業員のモチベーション維持と成長に対して適切に対応できるような教育、生産性の向上が必要だ」
とコメントしていました。
福田康一社長からは、
「キューバの皆さんが、日本での研修を無事に終えることができて良かった。弊社としても非常に勉強になりました」
とのコメントをいただきました。
(荒木)
企業訪問:株式会社サンパック
「ブレない経営の軸を見つけたい」
日本の先輩経営者に、どうしても聞きたいことがたくさんあります。
株式会社サンパックは大阪の江坂にある会社で、主にパッケージ、樹脂製品の企画開発、販売とともに、家庭用の雑貨や大手飲食店のパッケージの構造企画等を手掛けています。
また自社の製品としてボディケア用品も製造しており、「フットグルーマー」という足裏ケアのための商品や姿勢矯正のための「ハナオウォーキングフォーマー」といった商品も販売しています。
パッケージや雑貨から、なぜボディケア用品の開発に至ったのか?
そこには長い道のりがあります。
青山祐二郎社長には、自社製品の開発の話も含めた「経営」についてお話を伺いました。
今回の研修員は経営者が半分、行政官が半分という構成ですが、青山社長にお会いしたのは経営者グループです。
経営は、ビジネスで収益をあげ、従業員への給与を確保し、次の製品をつくりだすことの連続です。
研修員からは、同じ経営者としての立場から、毎日何を軸に決断を下していくのか等、様々な質問がでました。
また今回は、青山社長から「せっかくの機会なので時間を長めにとり、フリーディスカッションの時間も持ってはどうか」とご提案をいただきました。
研修では時間的な制限があり、講義と質疑応答のみをお願いすることが多いのですが、今回は講義後にお菓子を囲み、リラックスした雰囲気で意見交換をすることができました。
「安い値段でコピー商品がつくられたりしないのか、そういった商品と競争になった場合、どうされているのか」
「なぜ自社製造にこだわるのか」等、講義に関係する話だけでなく、「日本製品は『高品質』で有名だが、なぜ日本の会社の多くが、高い品質を維持することができるのか?」
といった幅広い話題も飛び出しました。
また「フットグルーマー」の売場に移動し、目を惹くパッケージやディスプレイの様子も見学させていただきました。
研修員にとって幅広い視点から学びを深めれられた訪問でした。
(関野)
*当日は読売新聞に取材いただき、キューバの研修員が同社を訪問し、日本の中小企業の経験を学んだと紹介されました。
企業訪問:一般社団法人 京都試作ネット
共に育とう、育てよう、育ちあおう。
「いろいろな会社が集まれば、1+1は3にも5にも10にもなる」
この言葉を体現している「京都試作ネット」を訪問し講義いただきました。
京都試作ネットは、京都のさまざまな企業が集まってできた連合体です。
現在、37の企業がメンバーとして登録し、別の企業からの商品試作や開発の相談にグループとして対応しています。
例えば、「こういう商品がつくれないか」といった相談があると、メンバー会社にその情報が共有され、それに対しメンバー会社の中から技術のある会社が手をあげて、自分たちの得意分野を生かして一つの商品を作り上げるという仕組みで運営されています。
研修では、メンバー会社である株式会社ニューネクストを訪問しました。
キューバで有名なレトロなアメリカの車の写真や、「welcomeボード」で迎えていただき、会議室の壁一面のホワイトボードには、日本とキューバの代表的な風景が描かれていました。
研修員は、心温まる歓迎に大変感激していました。
まずは、この京都試作ネットとも深い関わりのある京都府商工労働観光部山本太郎副部長から「京都府による産業振興施策の取り組み」についてご紹介がありました。
その後、京都試作ネット代表理事の佐々木化学薬品株式会社の佐々木智一代表取締役から「京都試作ネット」についてのご説明を受けました。
最後はメンバー企業である株式会社ニューネクストの松岡俊秀代表取締役会長から、試作ネットのメンバーとのコラボレーションによる「ジョキンザウルス」製品化の「道のり」をお話しいただきました。
実際の会話やメールのやり取りなどを交えた臨場感満載のプレゼンテーションでした。
会議室は関係者であふれ、熱気に包まれました。
上の写真にある壁のイラストは、ニューネクストの社員の方がこの日のために描かれたものです。
イラストと共に「育とう、育てよう、育ちあおう」というメッセージ(写真下)があり、とても心に残っています。
開発のお話からも、そして当日にお会いした関係者の方々の繋がりの強さからも、その言葉の意味を研修員も体感してくれたに違いありません。
(関野)