株式会社スマイリーアースインタビュー記事3:ウガンダで良質な綿花を得るために- PREX Island
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株式会社スマイリーアースインタビュー記事3:「信用しないんです」だから「一緒にやるんです」
2024年11月に代表の奥龍将さんに、(インタビュー中は奥さんとお呼びしています。)
PREXの児島、狭間、荒木、福岡がインタビューをさせていただきました。
僕は、なんしかウガンダが誇る良質な綿花が欲しいんです。
PREX児島
現在スマイリーアースが使用している綿花は100%ウガンダの有機綿ということですが、海外のパートナーとビジネスをする上で、信頼関係を築いていくのは非常に大切であるけれど、難しいこともたくさんあるという話をよくききます。
奥さんはウガンダの方々とどのように信頼関係を築いているのでしょうか。
奥さん
よく問題が起こるのは、綿花を運ぶときに、変に量をちょろまかされたり、管理がずさんで品質が落ちたり、そのあたりですね。
だけど、僕はウガンダのせいにしたくないんです。
だから、僕は綿花を自分で買いに行っています。自分で綿花を積んで、運んでもらっています。
信頼関係といいますか~。
僕はそもそも「信用していない」ですね。要は丸投げをしないんです。
農家さんに良質な綿花を育ててもらった後は僕の仕事なんです。
農家さんは、綿花が育つように毎日面倒をみてくれていて、その人たちがいないことには、僕が欲しい綿花は手に入りませんので、綿花が育った時点で、農家さんに大感謝です。
綿花はオールシーズンの産品ではないので、期間労働者の方も多く働いています。
丸投げをするんじゃなくて、積み込み等は一緒にやるんですよね。
「一緒にやる」って本当に一緒にやるんです。
1ヵ月間、期間労働者の方と同じ条件で働かせてもらったこともありますね。
集合から解散まで、全く同じです。
大変な経験もたくさんありました。
外国人ということだけで、お金を持っているという目で見られます。
何度もお金を取られそうになったこともありますが、「お前何してんねん」って喧嘩もします。
PREX児島
喧嘩をするんですか?
「日本人」とひとくくりにするのも良くないと思うのですが、ぶつかることを避けるというか、穏便にといいますか、こういった進め方をする場合が一般的に多いのではないかなと感じています。
奥さん
喧嘩を推奨するわけではないですが、問題を避けるよりは、絶対に正面から向き合った方が良いと感じます。
もちろん時と場合によって、毎回喧嘩するわけではないですが、言いたいことは言わないと進まないですね。
ビジネスやから、上とか下とかではなくて、関係はいつも対等です。
期間労働の方は2~3年たつと他の場所に移りますが、当時一緒に働いて仲良くなった方とは、もう友達ですね。
そうやって生まれる関係性って結構重要だと思っています。
- ウガンダの農家さんと奥さん
あと、もう1つ大切にしていることは「リスペクト(尊敬すること)」です。
農家さんは、たくさんのことを知っています。「君は俺のティーチャーや!」これをちゃんと相手に伝えると、自信をもって喋ってくれるんです。
やっぱり、喋るってことは、その言葉には責任も生まれるわけですので、自分の作った綿花の品質を落とさないように高い意識を持って向き合ってくれています。
正直に向き合える仲になることは大切ですね。
今は気候変動の影響もあって、品質も年によって変わるんですが、僕が現地へ行かなかったら、質の悪い綿花をそのまま売りつけられていたと思います。
「あるものしか売りません」ウガンダの農家さんにストレスをかけたくないので。
奥さん
アフリカはビジネスのリスクが高いって言われていると思います。
なので、売り急いだらダメです。
僕はリスクがあると分かった上で、自分が出来る役割を考えます。
僕は「持っている分しか売りません。
なくなるときもありますが、必要なら、僕が持っているときに買ってくださいね」というスタンスで日本のお客さんと向き合っています。
事前予告無しに、ある程度の綿花が絶対に欲しい!となると、ウガンダの農家さんとのビジネス関係が崩れてしまいます。
逆に「綿花あるよ」なんて嘘を言われても困ります。何度か実際に痛い目を見た経験もありますし。
「今年の綿花があかんかったら、あかんで構わない。またある時に来るから」と伝えます。
そうすると、ウガンダの農家さんも、「奥はこちらの事情を理解してくれている。無理をしなくていいんだなって」わかってくれます。
こういったスタンスで向き合うことで長く付き合ってこれたのかなと感じています。
綿花は天候にも左右されますし、農家さんだって条件が揃わないことには良質な綿花を育てることは出来ません。
そのあたりの事情を無視して綿花を用意してもらおうとすると無理をかけることになってしまいますので、私はそんなことはしたくないです。
最終的に、農家さんが一番見ているのは、買取価格なんですよ。
価格は変動するので、途中で綿花の一部を土に混ぜ込んだり焼いたり(肥料となるため)して、少量にすることで単価を上げたりします。
なので、僕は農家さんと納得する買取価格と条件を提示することを大切にしています。
だから、買うと決めたときはしっかりと買います。
自社に大きな倉庫を持っているので、ある程度の量を買って保管することが出来るんです。
実は倉庫を持った理由も、ウガンダと向き合うためでした。
ウガンダ農家さんから教えてもらった、大切なこと
奥さん
ウガンダの農家さんと長くやってきて、自分の中でも明確な答えはなかったのですが、気になっていたことを、一度聞いたことがあるんです。
「今の時代はもっと簡単に農業が出来るようになってるのに、なぜオーガニックな綿作りや野菜を作っているのか?」
僕の農家の友人は「オーガニックは環境に良いことだからね!」って答えてくれて、確かにそうだと思うのですが、僕が知りたかったことは、もっと深いところの考え方で、、、。
僕たちが農地で作業をしているときに、昼飯なんかをパパっと用意してくれる農家の友人の奥さんがいて、同じことを聞いてみると、返事は「生命」でした。
「環境への負担をかけないオーガニックなやり方は、私らが見つけたのではなくて、昔から繋がれてきているもの。ただ、私たちの生命や、自然界の生命、生態系を大切に想う取り組みを続けているだけだ」と。
僕はこの答えこそオーガニックの「答え」であり全てだなって感じました。
単純なようですごく重たい言葉でした。
大切だからこそ、守っていかないといけないという考えになりますよね。
オーガニックというか、生命に向き合っているんです。
生命に向き合った生活をしているということです。
生命を安全に繋ぐためには、得体の知れないものを使用せず、祖先から伝承されてきた昔ながらのことを繰り返す。
そこに安全と安心は生まれる。
これを聞いた時に、自分がこれまでやってきたことや、何を目指していきたいかということが腹落ちしました。
スマイリーアースが挑戦してきた「環境に負荷をかけないタオル作り」は、環境に良いことを目指していましたが、これがゴールではなかったんです。
多分、自分たちの安全や安心、そして生命を営むという、一番重要なところに立ち返りたいっていう、心の奥の方で思っていたことを具現化していきたいという挑戦をしていたんだなって。
タオル業者ですけど、タオルにも様々な生命がかかわっています。
そこに向き合うための答え合わせのようなことを、僕や父は、やってきていたんだと気付きました。
農家の奥さんの言葉は、僕の心の奥まで届きましたね。
自分はまだまだ表面的なところで活動していたなって、改めて反省して考え直す機会にもなりましたね。
つい最近のことですが、僕にとっては衝撃的な出来事でした。
やっぱり現地の農家さんと、僕たちと見てるところは一緒で、何を大切にしてるかっていうと、やっぱ「生命」だったんです。
そこを価値として、しっかりと向き合って、それを次の世代に繋げる営みをしているんです。
僕はウガンダと向き合って、そのことを学ばせてもらいました。
学び合う中で、人との繋がりも生まれます。
やっぱり互いに学び合える友達でい続けたい、という中で色々動いた結果が、「大阪の泉佐野」と「ウガンダのGULU」の友好都市*が実現し、また国と国の大きな友好親善関係に発展していったんだと思います。
*2017年に泉佐野市とGULU市の友好都市締結。
PREX児島
ウガンダの方との関係を築いてきたお話や、スマイリーアースが挑戦してきたことは「生命」と向き合い、次世代へと繋げていく挑戦だったという、言葉にするとシンプルなことですが、お話をお伺いしながら、とても大きな重みを感じました。
インタビューの最後に、今感じていることや、これからの世界についての考えをお話いただけると嬉しいです。
- 作業中の奥さん
これからの世界について考えていること
奥さん
「SDGsについて、単なる流行りではなく、次世代へ「生命」を繋ぐためにちゃんと受け止める必要性の高さを感じています。」
様々な問題が起こっている今の時代は、これまでの取組を見返したり、見直したり、そういったことをする時間が今まさに重要なんじゃないかなと思います。
僕は地球がどう思っているか、心があるかどうかも分かりませんが、やっぱり人間の営みによって地球上に色々な変化が出てきているのは明らかです。
地球に住んでいるのは人間だけじゃないっていうのは、みんな分かっていますよね。
ちゃんと自分たちの営みに向き合うというか、ちゃんと考える力みたいなのを、今の僕たちが持ち始めると、たぶん周囲との向き合い方も変わるし、価値のおきかたも変わってくると思うんです。
そういったことが、地球というか、みんなにとって良い変化をもたらすのではないでしょうか。
SDGsの考え方は大切です。でも人に押し付けるもんじゃない。
納得感を持てるかどうかが、大切だと思います。
納得しない限り、取り組みを続けていくのって難しいですよね。
自分はずっと「納得感」というものを、大切にしてきました。
納得した上で積み重ねてきたことが今のスマイリーアースです。
2008年にスマイリーアースが設立されましたが、最初から今の状態を目指してきたわけではありません。
SDGsがゴールではなくて、この方向が良いと納得しチャレンジを続けてきた結果、今の状態に行きついたということなんです。
この姿勢はこれからも変わらないですね。
「常に慎みをもって、怠ることなかれ」
スマイリーアースは、これからも「ものづくり」の「本質」を考え続けます。
インタビューを終えて:PREX 児島
インタビューは以上になります。
スマイリーアース誕生のお話から、挑戦されてきたこと、3代目の代表を担う奥さんのお話、等々。
本記事にまとまりきらないほど多くのお話をお伺いしましたが、PREXだからこそ伝えていきたいと思った奥さんのお話を記事にまとめました。
ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。
スマイリーアースの素敵なお取組みが、少しでも多くの人に伝わったら嬉しいです。
インタビューに同行したPREX職員の感想も公開していますので、よろしければご覧ください。
次の記事
株式会社スマイリーアースインタビューについてPREX職員の感想
- 掲載日:2025年5月7日
- 企業名:株式会社スマイリーアース
- 氏名:PREX 児島,荒木,狭間,福岡