PREXグローバルネットワークメンバーからのメッセージ③Guatemala, El Salvador, Honduras, Nicaragua

PREXでは、日本での研修に参加した研修員とのネットワークの維持・強化を図るため、オンライン交流会やインタビューを行っています。
今回、4か国の参加者がオンライン上で再会し、14年間の歩みを語ってくれました。
ウィリーさん、マリオさん、アダさん、ロヘルさんです。
4名は、2011年にJICAの委託により実施された研修「中米・カリブ地域における官民連携による地域産業振興コース」に参加したPREXグローバルネットワーク(PGN)のメンバーです。
それぞれの軌跡を、ぜひお楽しみください。
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PREX:
まずは自己紹介から始めましょう。
質問は三つです。
お名前、現在のお仕事、そして2011年からの14年間を一言で表すとしたら、どんな言葉になりますか?
Willyさん(グアテマラ)
ギジェルモ・ダビッド・シフエンテス・ガルベス氏
農業・零細企業開発協会(ADAM)ディレクター
このような機会をいただき、改めて感謝申し上げます。
私はギジェルモ(ウィリー)・シフエンテスです。日本での研修当時とほぼ同じ分野で活動を続けており、現在は小規模農家の協同組合「ADAM」の代表を務めています。
この14年間を一言で表すなら、「インスピレーション(Inspiration)」です。
Marioさん(エルサルバドル)
ホセ・マリオ・バケラノ・クルス氏
コンサルタント
マリオ・バケラノです。皆さんと再会できて本当にうれしく、光栄です。
現在は独立コンサルタントとして、中小企業支援の分野で活動しています。
この14年間を一言で表すなら、「兄弟愛(Brotherhood)」です。
Rogerさん(ニカラグア)
ロヘル・アントニオ・モンテネグロ・メルカド氏
協同組合創設者
ニカラグアのロヘル・モンテネグロです。この素晴らしい機会をいただき、心から感謝しています。
中米の皆さんには「こんばんは」、日本の皆さんには「おはようございます」。ここから温かいハグをお送りします。
2015年に自分のビジネスを立ち上げ、現在は牛肉と鶏肉の卸売業を経営し、12名の従業員とともに働いています。
この14年間を一言で表すなら、「積極性(Proactivity)」です。以前よりもずっと前向きで行動的になれたと思います。
Adaさん(ホンジュラス)
アダ・ジャネット・ルイス・グネラ氏
ホンジュラス国会議長補佐官、協同組合Cooperativa Mixta de Emprendimientos Directos(COOMENDI)メンバー
アダ・ルイスと申します。皆さんと再びお会いできて本当にうれしいです。
現在、ホンジュラス国会で議長補佐を務め、政府、地方自治体、NGO、女性団体の間をつなぐ役割を担っています。また、起業支援にも携わっています。
この14年間を一言で表すなら、「起業への情熱(Passion for Entrepreneurship)」です。
PREX:
それではここから、ウィリーさん、マリオさん、アダさん、ロヘルさんの順にお話を伺います。
まずはウィリーさん、お願いします。
Willyさん:
私は、2011年に「JICA中米・カリブ地域における官民連携による地域産業振興コース」に参加しました。
当時のアクションプランは「小規模生産者協会間の連携」および「官民協働による食料市場の持続的発展のための代替策の創出」というテーマでした。現在は、農業・零細企業開発協会(ADAM)の事務局長として、農産食品分野のバリューチェーン構築を通じて農村地域の生活向上を目指しています。
供給、生産、加工、販売の各段階での継続的改善と品質向上を重視しています。
その成果の一つが、有機資源を活用したバイオファクトリーの設立です。日本で学んだ「ぼかし」技術を応用し、有機農業を導入しました。害虫・病害管理、養分供給、微生物活用を組み合わせた持続可能な生産体制を構築しています。
また、政府機関、市民団体、大学、企業と連携し、「絆グループ(Kizuna Group)」を立ち上げました。
農産加工のための学校と工場を設立し、技術研修の提供と付加価値の創出に取り組んでいます。
さらに、先住民族の女性たちにトマトペーストやジュースの製造を指導しました。国内市場だけでなく、今後は国際市場への展開も目指しています。
最近では、カリフラワーやブロッコリーを使った粉末食品など、新製品の開発も進めています。
将来的には、農村経済の発展と貧困削減にさらに貢献したいと考えています。

Marioさん:
皆さん、こんばんは。そして日本の皆さん、おはようございます。
私の発表テーマは「日本が私の人生を変えた(Japan Changed My Life)」です。
私は2011年だけでなく、2016年にも日本を訪問する機会に恵まれました。
今の私の活動は、以下の3つの視点になります。
- 国家開発専門家としての仕事
- コンサルタントとしての活動
- 起業家としての挑戦
最も嬉しかったのは、息子たちに日本の美しさと文化を見せることができたことです。
国家開発の専門家としては、中小零細企業の地域振興に携わり、エルサルバドルでは60の観光関連企業と9つの自治体との連携を促進しました。
ホンジュラスとの間では5つの自治体と協定を結び、商業・観光・市民安全の分野で協働しました。これらの取り組みはテキサス大学サンアントニオ校の支援を受けて実施しました。
2016年から2018年にかけて、エルサルバドル中小企業国家委員会より「最優秀コンサルタント(National Best Consultant)」として表彰されました。
これは私個人の功績ではなく、PREXやJICA、そして多くの協力者のおかげです。
現在は「カバージョ・ドラード(Caballo Dorado/黄金の馬)」というブランドを立ち上げ、エルサルバドルの誇りとアイデンティティを表現しています。
こうした活動を通じて、人々の意識や可能性が変化していく様子を目の当たりにしてきました。
最後に、PREXと日本の皆さんに心から感謝申し上げます。
この14年間の歩みを皆さんと共有できることを誇りに思います。

Adaさん:
皆さん、こんばんは。ありがとうございます。
日本との出会いは、私の人生にとって非常に意味のある経験でした。
14年前に学んだ教訓はいまも私の仕事の中心にあります。
現在、ホンジュラス国会の議長補佐として、社会政策に携わっています。
特に低所得層の女性や協同組合メンバーの支援を行い、法案の見直しや、文化フェア、起業フェア、販促イベントなどで地元産品の販売促進にも関わっています。
同時に、法学を学びながら、起業家グループへの無料研修を行っています。
中央政府、地方自治体、NGO、市民社会組織などと協働し、さまざまな取り組みを支援しています。
起業支援では、マイクロビジネスの運営やイベント出展など、知識を実践的に活用しています。
農村地域には、地元の人々が手作りの工芸品を展示・販売できる場所がほとんどないため、将来的には「ショップ」と「イベントスペース」を兼ね備えたビストロを開きたいと考えています。そこでは職人たちが自分の作品を紹介し、文化を共有できる場をつくりたいと思っています。
「HOOP」というブランドのもと、ジンジャーなどの自然素材を使った健康飲料「ミステラ(Mistela)」、そして地元産コーヒーを使用した「クレマ・デ・カフェ(Crema de Café)」などの手作り飲料を開発しています。
これらの取り組みにより、女性団体や協同組合からも表彰を受けました。
私は次の6つの理由からこの活動を続けています:
- 自分自身の夢を実現するため
- 次世代の起業家の道しるべとなるため
- 自分のブランドを築くため
- 国内外にネットワークを構築するため
- 他国の実践を取り入れ、地元産品を革新するため
- ロールモデルとなるため
最後に、日本の皆さん、本当にありがとうございます。
日本での学びと支援が、いまの私の活動を支える原動力です。

Rogerさん:
皆さん、こんばんは。
2011年に日本での研修を終えて帰国したとき、私は人生観が大きく変わっていました。
2015年までは、政府機関で協同組合やアクセシビリティ(社会参加)の研究に携わっていましたが、その後独立し、畜産業に参入しました。
しかし6年後、私は厳しい現実に気づきました。努力するのは生産者なのに、利益を得るのは仲介業者なのです。
そのため2021年に畜産業を離れ、消費者の立場から加工肉の流通と販売を学びました。経験を積んだ後、生産現場に戻り、若い農業技師たちと協同組合を設立しました。
現在は生産から加工・販売までを一貫して行う仕組みづくりを進めています。
最大の課題は「組織化」と「市場アクセス」です。
生産者に正当な利益を還元する仕組みを構築することこそ、公正な社会の実現に不可欠だと確信しています。
現在、私は42名の農業技術系卒業生と協働し、国内市場に適正価格の製品を提供することで、生産者と消費者の双方の生活の質を高めることを目指しています。
PREX:
皆さん、本当にありがとうございました。
お話から、それぞれが日本で学んだことを活かし、社会へ還元していることがよく伝わってきました。
PREXでも、PGNメンバーの経験や活動を広く共有し、相互の学びを促進する取り組みを進めています。
その一環として、異なる国の参加者が英語で社会課題や経験を共有する「PGNカフェ」というオンライン交流を定期的に開催しています。
それではここで質問です。
皆さんの活動は、それぞれどのような社会課題の解決につながっていると思いますか?
Rogerさん:
鍵となるのは「組織化」だと思います。
畜産農家が組織的に取り組むことで、生産性と品質の両方を高めることができ、それが社会課題の解決にもつながります。
PREX:
畜産業は、ニカラグア経済の中で大きな割合を占めているのでしょうか?
Rogerさん:
はい。ニカラグアでは国民の約80%が農業や畜産業を主な収入源としています。
PREX:
それはまさに、国全体に大きな影響を与える課題ですね。ありがとうございます。
では次に、アダさんお願いします。
Adaさん:
ホンジュラスでは、「雇用創出」が大きな課題です。特に女性が自ら事業を始められる環境を整えたいと思っています。
2024年現在、失業率は80%に達し、多くの企業が倒産しています。
男性は海外で働かざるを得ず、女性たちは家庭を支えながら残されています。
そのうえ、マチスモ(男性優位)文化の影響で、女性はしばしば取り残されてしまいます。
私は、女性や母親たちが自立し、家族と共に前向きに進めるよう支援したいのです。
PREX:ありがとうございます。では次に、マリオさんお願いします。
Marioさん:
私が重点的に取り組んでいるのは、若者の「エンパワーメント」と「能力開発」です。
若者の存在と可能性が正当に評価され、状況に応じた情報と支援が戦略的に届けられる必要があります。
しかし現行の制度の中では理解を得るのが難しく、若者たちはしばしば過小評価されています。
だからこそ、私は個人や組織に直接働きかけ、理解を広げていくことを大切にしています。
PREX:
ありがとうございます。最後にウィリーさん、お願いします。
Willyさん:
私が注目しているのは、グアテマラにおける「格差(imbalances)」の問題です。
全企業のわずか3%がGDPの68%を占める一方で、全体の56%を占める中小零細企業はわずか5%しか貢献していません。
この格差を埋めるために、中小企業の支援や女性のエンパワーメントに取り組んでいます。
ラテンアメリカでは「貧困には女性の顔がある」と言われるほど、女性の貧困問題は深刻です。
PREX:
本日のセッションは、たくさんの学びに満ちていました。
今後もこのような経験や知見を共有できる場を作り続けたいと思います。
本日は本当にありがとうございました。
またお会いできる日を楽しみにしています。
(2025年6月11日現在)
- 2025-11-04