西安市の大気環境改善条例や基準づくりに貢献-JICA草の根事業「京都市・西安市の環境改善事業」(2015年6月)

京都市と西安市の友好交流の一環として、2008~ 2010 年度および2012 ~ 2014 年度に西安市の大気環境改善のための協力事業を実施しました。これは、JICA 草の根協力事業(地域提案型)として京都市およびPREX がJICA に提案し、採択されたものです。先の2008 年度からの3 年間は大気環境改善全般、2012 年度からの3 年間は、近年特に問題視されている浮遊粒子状物質対策をテーマとして取組みました。2008 年頃にはなかなか見ることのできなかった青空が、2014 年度の現地出張期間中に何度も見ることができ、取り組みの成果を実感することができました。

飛行機雲の見える西安の美しい青空

3 カ年のまとめ

1.事業の概要

西安市の大気環境改善に対する協力は、京都市環境政策局が中心となり、合計6 年実施されてきました。西安市は内陸の盆地で、風が吹かないと浮遊粒子物質がたまってしまうという特質があること、燃料となる石炭・石油の品質が良くないこと、市民の自動車保有台数がここ3 年間年率約25%のペースで急速に増えていることなどから大気環境の悪化が懸念されており、西安市政府も様々な対策を実施する中で、より効果的な事例を学びたいとして京都市へ協力を要請されました。具体的な活動としては、約2 週間の訪日研修と、約1 週間の専門家派遣を各3度ずつ行いました。訪日研修では、西安市環境保護局他の大気環境改善に携わる行政官を対象に、京都市の施策や取り組みを中心に紹介しました。専門家派遣では、セミナーを開催して京都市の経験を普及したり、現地の状況を把握し研修効果を確認したりしました。

■京都市による西安市の大気環境改善をテーマにした技術協力研修の実績

  西安への専門家派遣 訪日研修
2012年度 指導、セミナー開催
(6月、1週間、セミナー参加者96 名)
環境分野の幹部行政官(2月、2週間、5名)
2013年度 指導、検証
(12月、1週間)
環境分野の幹部行政官(8月、2週間、5名)
2014年度 指導、セミナー開催
(11月、1週間、セミナー参加者69名)
環境分野の幹部行政官(8月、2週間、5名)

西安市でのセミナーの様子

2.事業の成果

京都市で学んだ成果を反映して、西安市で次のような計画や基準がつくられたことを確認しました。

  1. 「 西安市環境保護第13 期5 カ年計画」(2016 年1 月1 日からの5 年間)
  2. 「 石炭ボイラー排出基準」(2013 年)
  3. 「 西安市『汚染防止とスモッグ削減』取り組みの実施計画((2013 年より各年)
  4. 「 西安市自動車排ガス防止条例」(2015 年)
  5. 「 テレメーターによる測定地方基準計画」(2014年)
  6. 「 西安市の環境大気品質の全面的な向上に関する取り組みの計画(2012 年〜2020 年)」

 (1)においては、訪日研修で学んだクリーン石炭の使用、石炭からガスへの燃料転換、都市計画において風の流れをつくることや緑を増やすことを盛り込むとのことです。(2)においては、訪日研修で、日本では厳しい内容を設けて取り組んでいることを学んだことから、厳しい内容としたそうです。(3)(4)(6)については、訪日研修で学んだ日本の大気汚染防止のための取り組み、例えば基準を超えた自動車を強制的に排除することなどを取り入れました。(5)は、走行中の個々の自動車の排ガスを測定するという西安にはなかったものですが、日本で実施されていることを知り、設けることとされました。

3.成果普及のセミナーを西安市で開催

2014 年11 月14 日に西安市で開催した総括セミナーには、西安市の行政官・企業担当者等69 名が参加し、プロジェクトの成果を共有しました。当日は、JICA、京都市、西安市の代表よりご挨拶いただき、帰国研修員より西安の大気環境の現状と対策のための取り組み、京都市より学んだ成果の共有がなされました。また、京都市職員より、京都市の大気汚染の浮遊粒子状物質削減のための措置と政策について講演をいただきました。
西安市による大気環境改善のための対策は、当事業終了後も継続して実施されます。京都市から学んだ成果を活用し、今後もきれいな青空が見える日が増えることを期待しています。

国際交流部 酒井

京都市 環境指導課  吉井 克英 さん

京都市と1974 年以来の友好都市である中国・西安市は、近年の急激な経済発展に伴い、多様な環境問題が顕在化してきています。とりわけ、大気環境問題は深刻であり、本市では、「JICA 草の根技術協力事業」を通じ、西安市の大気環境改善をテーマにした技術協力研修を通算6 年間実施してきました。 研修の結果、西安市では、大気環境測定局の設置や大気環境改善に係る条例が制定されるなど、目に見える成果が上がっていることから、本市が西安市の大気環境改善に向け第一歩を踏み出す一助となり、研修は結実したと自負しています。 その背景としては、西安市政府の環境問題への対応の必要性の意識とスピード感のある取り組みや実行力も上げられますが、西安市政府との連絡調整や研修全般のコーディネートを担っていただいたPREX の御尽力によるところが大きく、国際交流事業に対する豊富なノウハウと高い総合調整力をうかがい知ることができました。 また、PREX は、途上国が発展するために不可欠な企業の中堅マネージャーの育成支援機関としても大きく貢献されており、今後も途上国への幅広い支援活動を展開されることで、途上国の人材育成機関、国際的人的交流促進機関としてさらなる発展をされることをお祈り申し上げます。

西安研修員による帰国後活動報告の様子

TOPIC 研修員の活躍状況

2014 年11 月の現地出張の際、帰国研修員6 名より帰国後の活動についての報告をしていただきました。2013 年訪日研修の団長、西安市 環境科学アカデミー副院長の高榕さんは、西安市政府の諮問機関である参事室のメンバーとなり、行政政策に対する提言を行っています。事業の成果欄でもお伝えした「西安市環境保護第13 期5 カ年計画」への研修成果の反映は、高榕さんの提言によるものです。また、2008 年の訪日研修に参加した西安市環境保護局の李博さんは、自動車排ガス汚染監督モニタリングセンターのトップに昇進されており、京都市のパーク&ライドにならい、レンタサイクルを数千台投入したり、京都市の公用車がすべてハイブリッド車であったことから、市政府に公用車をハイブリッド車にするよう働きかけたり、排ガス基準を満たさない車を淘汰する仕組みをつくったりするなど、様々な取組を行っています。帰国研修員の活躍により、西安市の大気環境がますます改善されることを願っています。

研修のテーマ :  環境