関西に拡がるモンゴルネットワーク/JICAモンゴル日本センター現地講師育成研修(2015年4月)

中央アジアやASEAN の日本センター関連研修を実施してきたPREX ですが、モンゴル日本センター関連の研修実施は初めての経験です。モンゴル日本センターでは日本人専門家とモンゴル人教授が主にビジネスコースの講師を務めていますが、現地企業での実務経験のあるモンゴル人講師を増やすことで、受講者のニーズにより即したコースを提供したいと講師研修が実施されています。モンゴル日本センターの意志を汲み、講師候補の研修員に深く学んでもらえるようにプログラムを組み立てました。

2014 年12 月7 日、雪の北海道から空路、モンゴルの研修員たち4 人が関西にやって来ました。関西には多彩な、層の厚い中小企業群があります。厳しい競争の中、優れた商品を日本に、世界に送りこんでいます。その切磋琢磨の中から生まれてきた秀逸な経営ノウハウを学んでもらうと同時に、関西にもモンゴルと真剣に向き合い、モンゴルのことを真剣に考えている優れた企業があることを知ってもらいたいと思い研修プログラムを作成しました。

モンゴル総領事館の役割

 2012 年に開設された在大阪モンゴル国総領事館は関西のモンゴルネットワークの核となっています。チョナイ・クランダ総領事は、「モンゴルは長い間日本にお世話になっており、今も毎日のようにモンゴル人は日本に学びに来ている」とおっしゃっていました。その領事館に教えていただいた中から、今回は3つの企業を訪問しました。

東和薬品(株)ではモンゴルと日本の国旗と共に写真撮影をしました。

モンゴル人の健康に寄与する東和薬品

大阪府門真市に本社のある東和薬品(株)は1951 年に創業されました。黒柳徹子さんのCM でご存じの方も多いと思います。医療用医薬品の一つであるジェネリック医薬品の製造販売に絞り込み、製剤工夫などによって医療関係者や患者さんに喜んでもらえる製品を揃えることで差別化をはかり、業績を伸ばして来られました。同社にはモンゴル人の社員がおられます。彼女がモンゴル語で会社の概要を説明してくれました。有効性と安全性を担保しながらも子供から高齢者まであらゆる年齢層に飲みやすい、という付加価値を追求している姿を、工場見学を踏まえて研修員たちは学びました。薬事情の良くないモンゴルにおいて、少しでもモンゴル人の健康に寄与したいと考える同社は、すでにモンゴルに薬を輸出していますが、「地産地消」の理念のもと将来のモンゴルでの現地製造の構想を持っておられます。研修員たちからは、モンゴルで組むパートナーの重要性やヤギ、羊といった家畜の薬が求められていることなどの意見が出ました。

モンゴルのゲルを持って「はい、チーズ」風の旅行社大阪支店ブース前です。

モンゴル人と日本人はそっくりです。右から3 番目が大阪カシミヤ渡辺講師です。

風のモンゴルツアーを企画する旅行社

モンゴルと言えば、「ゲルで暮して広大な草原を馬に乗って駆け巡る」姿を想像する人も多いはず。そのイメージを実現してくれるのが㈱風の旅行社の「風のモンゴル」ツアーです。梅田にある大阪支店に研修員たちは訪れました。モンゴル語の堪能な日本人社員もおられます。ネパール、キルギス、グァテマラなどニッチな国へのオリジナル旅行で知られる同社ですが、「風のモンゴル」は、モンゴル人の元社員がウランバートルに戻りMONGOL KAZE TREVEL を設立したのが始まりとか。モンゴルを訪れる日本人は年間1 万4千人程度とのことですがリピーターが多く、同社は、馬の健康に気を使い、ゲルも移動式にするなどモンゴルの環境に細心の配慮をされています。馬に乗れる若い遊牧民の減少、日本語ガイドの確保の困難さ、ウランバートルの激しい交通渋滞など、現代のモンゴルの抱える問題も同社から指摘されました。また研修員たちからは、「モンゴルの素材を使った日本人シェフの料理を提供しては」などのアイディアも出されました。

今回の研修で訪問した京都・福寿園の会長が、「モンゴルには、大草原・馬・きれいな星空といった世界の他の国にはない素晴らしい資産がある。もっと自国の強みを活かしたビジネスを考えなさい」とおっしゃいました。大都会ウランバートルに住む研修員たちは、改めて日本人が感じるモンゴルの魅力について再考していました。

モンゴルと大阪カシミヤとの長い付き合い

関西でのモンゴルネットワークを語る上で忘れてはならない存在が㈱大阪カシミヤです。同社のモンゴルとの取引は、1974 年にカシミヤ整毛設備をモンゴルに納入したときにさかのぼります。まだ社会主義の時代です。その後カシミヤ原料の輸入や機械、部品の輸出を経て、合弁会社を立ち上げました。モンゴルの豊富なカシミヤ原料、日本でのカシミヤ製品のニーズを背景として、同社の機械設備に対する類まれなる技術力が、モンゴルとの長い関係を生み出したのです。モンゴル人とのビジネスのやりやすさ、やりにくさを研修員たちに問われ、勉強熱心、教育水準の高さ、外部のものを取り入れる巧みさの一方で、協調性のなさ、独自の判断で動くところなどを指摘されていました。恐らく、同社はモンゴルの経済に最も貢献しかつ最もながくモンゴル人たちと苦楽を共にしてきた日本企業ではないでしょうか。

関西の企業との意見交換会

人材を輩出してきた大阪外大

最後になりますが、関西のモンゴルネットワークに大きな貢献をしてきたのが、大阪外国語大学(現大阪大学)モンゴル語科です。司馬遼太郎も卒業生です。現在の日本のモンゴル研究は、同大学と東京外国語大学、東北大学の3 大学に集中していると言われています。今回の研修を通じて、同科の出身者に多く出会いました。今後も、研究、教育、ビジネスなど様々な分野で活躍する優秀な人材を輩出してくれることと思います。

12 月20 日に4 人の研修員たちは関西を離れモンゴルに帰って行きました。今回の研修は、最初の1週間が北海道、その後の2 週間を関西でプログラムを組みました。北海道の企業訪問では、5S の真髄とともに下請け企業の層が薄い、エリアが広く物流コストがかかる、人材流出が激しい、といった負の条件を克服するための創意工夫を学びました。帰国後、彼らは日本センター、企業、コンサルタントなど様々な分野で、日本で学んだことを活かして活躍をしてくれるとこと思います。関西に、こんなにモンゴルのことを真剣に考えているネットワークの存在することを忘れないでほしいと願っています。

国際交流部 浜橋、奥村

研修員の声

研修員のボロルさんから帰国後のお便りをいただきました。ボロルさんは、モンゴル日本センターの講師候補です。

http://www.prex-hrd.or.jp/modules/training/content0189.html

研修概要

コース名
JICAモンゴル日本センター現地講師育成研修
実施期間
2014 年12 月1 日~ 19 日
参加者
モンゴル日本センター講師候補者3 名および、ビジネスコース担当者1 名
委託元機関
JICA 関西
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
●日農機製工 ●小林経営研究所 小林好佐 所長●特殊衣料 ●柳月●環日本海経済研究所 シャクダル・エンクバヤル氏●イズミヤ総研 ●福寿園 ●ゼロ精工●風の旅行社●クリエイション 内海政嘉氏、今村敦剛氏●東和薬品 ●山田製作所●関西学院大学専門職大学院 経営戦略研究科 定藤繁樹 教授●ヒューマンラボ ●ワイズテクノロジー●歴史街道推進協議会●ホテルグランヴィア大阪●サントリー京都ビール工場 ●大阪カシミヤ●山岡製作所

研修のテーマ :  経営管理