太陽光発電の導入に向けた各国の取り組み ~スリランカ、アルジェリア、アフガニスタン、パキスタン~(2015年1月)

日本の太陽光発電システムは国内外でもエネルギー資源の多様化、気候変動対策、不足する電力の供給、地方電化の手段として注目を集めています。PREX では2009 年度から5年間で47 カ国129 名の研修員に対して太陽光発電関連のJICA 研修を実施しました。

本研修は、太陽光発電プロジェクトの推進に携わっている担当者に、太陽光発電の基礎技術と利用技術を包括的に理解してもらい、日本の事例を参考に、自国における太陽光発電導入のための政策・制度・組織の必要性・あり方・運営手法などを検討するための視点・問題意識を養ってもらうことを目的としており、2013 年度から3 カ年かけて年1 〜2 回実施している研修です。

研修員と日本人スタッフで研修打ち上げに行ったときの様子。 とても仲が良くて大盛り上がりでした。

一人一人がとても一生懸命学び、修了式を迎えることができました。研修員は研修監理員を日本の母、PREX 職員を日本の父と呼び、一つの家族のようになりました。

太陽光発電導入の目的と課題

今回は、アフガニスタン、アルジェリア、スーダンから1 名ずつ、マラウイ、スリランカ、ウルグアイから2 名ずつ、計6 カ国9 名の研修員が来日しました。エネルギーの多様化を進めたい、火力発電用の化石燃料の使用を減らしたい、配電線から遠い地域をバッテリーのついた太陽光発電システムで電化したいなど、各国の異なる事情から太陽光発電を普及させたいと考えています。各国の政策に基づいて途上国でも太陽光発電システムの導入が進んでいるものの、太陽光発電システムを構成する各機器や設計・施工・維持管理の質の悪さが課題となっています。したがって、今年度の研修では太陽光発電システムの各機器や設計・施工・維持管理の質を保つための取り組みを理解してもらうことに重点を置きました。

研修参加者が研修中に紹介してくれた各国の太陽光発電導入の状況を報告します。

スリランカ~住居用太陽光発電システムの設置ブーム

スリランカでの太陽光発電システムの導入は1980年代に始まりました。政府は2007 年にエネルギーの安全保障と経済的な観点から、再生可能エネルギーを導入していきたいと考えており、再生可能エネルギー政策を推進するSri Lanka Sustainable EnergyAuthority を設立しました。

スリランカの電化率は96%です。日本と同様に電力使用量に応じて電気料金が高くなるので、自家消費用に住居に太陽光発電システムを設置して電気の購入量を減らす家庭が増えており、最近では太陽光発電ブームが起きているそうです。その結果、電力系統に連系されている住居用の太陽光発電システムの設備容量が計6.6MW まで増えてきています。

研修員は、日本では住宅用だけではなく産業用の太陽光発電システムの導入量が多いことを知り、産業用の太陽光発電システムが普及するような政策を考えたいと話してくれました。

アルジェリア~南部地域での太陽光発電普及に取り組む

アルジェリアは、エネルギーを多様化することと、自国での化石燃料使用量を減らして価格設定の良い国際マーケットで販売することを目指し、太陽光発電の導入にとても積極的です。現在のエネルギー政策では、2025 年までに太陽光発電を1,800MW、集光型太陽熱発電を4,200MW 導入することを計画しています。しかし、集光型太陽熱発電に技術的な課題がみられるため、太陽光発電を重視する方針のようです。

研修員が考えるアルジェリアの課題は、南部の太陽光発電所の推進です。北部はすでに何カ所かの太陽光発電プロジェクトが推進され技術者も揃っていますが、南部は技術者の育成が必要とのこと。また、南部は砂漠地帯で特に気温が高くなるため、暑さに強く長期間使用できるような太陽光発電技術を探しているとのことでした。

アフガニスタン~民間投資を呼び込むために

アフガニスタンは長引く内戦によってインフラが破壊しつくされてしまいましたが、2014 年現在は国全体の電化率が30%まで上昇してきています。しかし、国の人口の75%が住んでいる地方の電化率は依然として4%にとどまっています。豊富な水資源を活かして、水力発電・マイクロ水力発電による電化を進めようとしていますが、水力発電資源のある地域から離れた地域について、アフガニスタン政府は地方電化を太陽光発電で推進することを考えています。数年前に太陽光発電による地方電化のプロジェクトが始動しましたが、太陽光発電システムの品質が悪く、投資家に何の保証もなされなかったため、頓挫したそうです。研修員は日本で学んだ知識を活かして、民間投資を呼び込めるような経済的なインセンティブの準備、太陽光発電導入の基準や施工ガイドラインの策定、職業訓練校の設立などの施策を検討する予定です。電化された地域では反政府勢力の活動が減少するという話で、電化の推進が国の政治的安定に貢献するのかもしれません。

(国際交流部 森、奥村)

研修概要

研修名
JICA 太陽光発電普及のための計画担当者研修
実施期間
2014 年9 月9 日(火)~ 10 月10 日(金)
研修参加者
エネルギー政策に従事している行政官・技術者 6 カ国 9 名
委託元機関
独立行政法人 国際協力機構(JICA)関西国際センター
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
● JICA 国際協力専門員 林俊行、小川忠之、新関良夫 ●吉野コンサルタント事務所 吉野量夫 ●開発コンサルタント 林泰子 ●歴史街道推進協議会●有限会社ジオプラス 塩田昭夫 ● Zambia Rural Electrification Authority(ザンビア共和国地方電化庁) ● Wazingwa Mugala ●ゴウダ ●英弘精機 ●経済産業省資源エネルギー庁 ●電気安全環境研究所 ●太陽光発電協会 ● PV 施工技術者制度運営センター ●エコリンクス ●関西電力 ●浜田 ●ジーエスユアサコーポレーション ●エナジーバンクジャパン ●シャープ

9 月16 日に行われたテレビ会議の様子。研修参加者は、前年度の研修員からの活動報告を熱心に聞いていました。

帰国後の活動報告 ~パキスタン送配電公社タラル・トゥシフさん~

研修中に前年度の参加者から帰国後の活動をテレビ会議で報告してもらう時間を設けました。2013年度の研修に参加した国営送電配電会社のタラルさんがパキスタンの現在の太陽光発電導入の状況や研修中に作ったアクションプランの進捗について報告してくれましたので紹介します。

タラルさんは2013 年8 ~ 9 月に実施された研修に参加しました。帰国後の活動として、2016 年11 月までに現在の基幹電力系統に対する太陽光発電の可能導入量の技術的評価、太陽光発電の系統連系ガイドラインの策定、再生可能エネルギー政策の見直しなどを検討するという計画をたてました。現在の進捗状況としては、計1,000MW の太陽光発電を系統連系する際の電力潮流について調査報告書を作成し、系統運用基準検討委員会などでの議論を進めています。

パキスタン政府は2020 年までに計1,000MWの太陽光発電を導入するための計画を進めています。太陽光発電事業に参入する民間企業を国際入札したところ、予定の1,000MW を大きく超える5,000MW 分の応札があったとのことです。パキスタンには適正なレベルの電気料金設定の問題や電力不足を解消するための火力・水力発電所整備の必要性という課題もありますが、電力不足軽減と化石燃料輸入量削減のため、再生可能エネルギーの導入に力を入れています。

研修のテーマ :  環境