日本の食品衛生管理システムを広東省に展開/JICA草の根事業(2014年3月)

日本の食品工場と同じく石鹸、アルコール、爪ブラシなど必要なものがすべてそろった手洗い場になりました。

日本でも中国でも最近消者の大きな関心を集めるテーマのひとつは食の安心安全です。JICA の草の根事業を活用し、日本の食品衛生管理のシステムを根付かせるべく、専門家たちが広東省を訪問し、現場指導を行いました。

手探りからのスタート

兵庫県と中国の広東省が友好都市であることから、JICA の草の根事業「中国広東省における食の安心安全と食育の推進」事業が2012 年度よりスタートしました。手探りでスタートした事業でしたが、訪日研修、専門家派遣を繰り返していく中で、事業の方向性が明確になっていきました。広東省でモデル企業を2 社選定し、その企業に対し専門家から日本の食品衛生のあり方やHACCP の構築方法を指導し育成していきます。そして育成した企業で実施した食品衛生活動を広東省の行政が省内に横展開していくというものです。

まずは中国企業の実情把握から

2014 年度は訪日研修を2 回、専門家派遣を2 回実施しました。専門家は食品衛生行政の専門家、食品分析の専門家、個人衛生管理の専門家から構成され、各々が専門領域に応じてモデル企業の指導にあたりました。第一回目の企業訪問では、衛生管理上の多くの問題点が指摘されました。例えば日本の食品製造現場では、汚れたことがすぐにわかるように白い長靴をはくことが一般的ですが、ある工場では靴の種類も色もバラバラで中にはハイヒールで作業している女性もおり、作業安全上の問題も見られました。また衛生管理の基本である手洗いの手順が曖昧であったり、薬剤の管理方法のルールがなかったりといった問題点が散見されました。HACCP についてもCCP(管理すべき重要なポイント)の数が多すぎて、管理しきれないという状況も見られました。

5S が行き届き、余分なものが一切ないすっきりとした製造ラインになりました。従業員の服装や靴も統一されました。

関係者やお客様を案内するために整備された工場見学コース。壁には製造工程や商品について説明したパネルが掲げられています。

学びを改善のサイクルに生かす

専門家の指導に加え、訪日研修では日本の食品企業を訪問しそこでの管理方法を学び、自分たちの工場に持ち帰り改善のPDCAをまわしてもらいました。今年3 月には今年度2 回目の専門家派遣を行い、改善内容の確認を行いました。2 社ともに予算上の問題などで改善に時間を要するもの以外については、ほぼ専門家の満足できるところまで管理のレベルが引き上げられていました。製造工程では5Sが徹底され、これが半年前に見た工場だろうかと驚くこともありました。さらに、今後の水平展開のために関係者やお客様に製造工程を見学してもらうルートも整備され、製造工程や商品の説明図が壁に掲示されていました。

次のステップはモデル企業の横展開

この事業は2014 年度も継続されますが、次の課題は行政側が、モデル企業が改善してきた内容を、他の食品企業にいかにして横展開していくかということになります。日本と中国の食品行政は大きく異なります。日本では食品事故が起こると、その企業は社会からの非難を受け最後まで責任を取ることになります。そのためにつぶれる企業も出てきます。一方中国では、事故が起こった場合、責められるのは行政で、食品衛生行政の不備が問われます。ですから、食品企業側の責任が曖昧になりがちなところがあるようです。広東省も食品企業の教育には力を入れはじめていますが、是非この事業で作り上げたモデル企業を食品業界の衛生管理推進の有効な手段として活用してもらいたいと思います。

国際交流部 浜口

研修概要

研修名
JICA 草の根技術協力事業
研修内容
「中国広東省における食の安心安全と食育の推進」2 年次第2 回専門家派遣事業
実施期間
2014 年3 月2 日~ 3 月7 日
委託元機関
JICA 関西
派遣専門家
●萩原博(兵庫県伊丹健康福祉事務所)
●土屋禎(日本食品分析センター)
●窪田忠宏(サラヤ株式会社)
研修のテーマ :  経営管理