そこに生きている人がいる/JICA 中東地域持続可能な観光開発研修(2013年10月)
中東地域 持続可能な観光開発研修

研修員の担当地域( イラク・中部の湖): 4 つの湖を併せてエコツーリズムを推進しようとしている。

本研修は、地域住民を巻き込んだ持続可能な観光開発を日本の事例を通じて学び、中東地域に活かすことを目的としています。2008 ~ 2010 年度に実施した同テーマの研修に引き続き、2011 年度からは新たに3 カ年の計画で実施してきました。本年はその最終年に当り、10 月17 日〜 11 月8 日にパレスチナ2 名、イラク2 名の行政官を対象に実施しました。プログラムでは、地域観光振興事例を見学し地域の方々との意見交換を行い、観光客や地元住民の反応を直接感じてもらう機会を設けました。

研修員の担当地域( イラク・アルマハール湿地帯):アシが多数生えており、それらを編んだ伝統的な建物などがある。

研修員が修復しているモザイク ( パレスチナ):遺跡からは発掘されるモザイクの修復を一手に担当するだけでは無く、関連のお土産の開発も担っている。

研修員の担当地域( パレスチナ・ヘブロン市):遺跡はもちろんのこと特産のぶどうを活用した観光振興を行っている。

古代から人々が生活してきた場所・中東

今年度の研修参加国はイラクとパレスチナ。同じ中東でも、観光立国と呼ばれるエジプト・トルコとは様々な面で違いがあります。ただし現在中東と呼ばれる広大な地域では、エジプト文明やメソポタミア文明が育まれるなど、古来より人々が力強く生き、豊かな生活を営んできました。

押し付けられるイメージ

 「この地域は安全だ。この情報はおかしい!」これは研修中、講師から日本の外務省の渡航情報を紹介いただいた際に出された意見です。外務省では世界の安全情報を公開しており、地域毎に危険度を4 段階評価しているのですが、実際にそこに住み現状をよく知る研修員にとって、納得できない点があるというのは毎年恒例のことなのです。確かに、より細かく見れば、安全な地域とそうで無い地域の区別は明確にあり、一部の危険地域に引きずられ、安全地域も「危険である」と判断されることに納得いかないのは、当然のことと言えます。
一方で、日本国民の安全を守る立場として、慎重に安全情報を発信する重要性も理解できます。ただ、派手な殺傷事件ばかりがクローズアップされ、ネガティブなイメージのみ世界に情報発信される状況を、研修員の1 人が「メディアに殺される」という表現をしたのを聞いた時は、どうしようもなく悲しい気持ちになりました。
ある方がおっしゃったのですが、紛争地域の痛ましい事件の情報と併せて平和なほのぼのする話を提供する現地派遣の報道関係者の方はいらっしゃいますが、情報の取捨選択を求められる編集の段階で、このような情報はカットされがちであるとのことです。そんなな中で私達は、特定地域での事柄があたかも全体の現象であるかのように捉えてしまうこともあるように思われます。

そこに生きている人がいる

だからと言って直ぐに私達がこの地域に気軽に観光客として赴くのが難しいことは重々承知しています。ただ、研修を通じ、自分に馴染みの無い地域にも人は住んでいて、日常生活を営んでいるということだけは忘れてはいけないということを学びました。研修員の中には、私達の生活からは想像もつかないような悲劇に見舞われ、恐ろしい思いをした人もいらっしゃいました。でも彼らの生活が常にそういう状態というわけでも無く、自分の住む地域に誇りを持ち、家族や友人を大切にする、私達と変わらない日々を過ごしているのです。この研修を通じて、そういうことが日本の多くの方々にも多少は伝わったのではないかと感じています。

国際交流部 折井

お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
●未来政策研究所 真板昭夫 代表取締役社長
●日本エコツーリズム協会 高梨洋一郎 理事
●麗澤大学 成瀬猛 教授 ●歴史街道推進協議会
●高島市商工会 ●道の駅 藤樹の里あどがわ
●針江生水の郷委員会 ● JTB 西日本
●大阪モノづくり観光推進協会 ●上田合金
●大阪府 堺市 ●観光庁 ●ピッキオ
●星野リゾート ●嵯峨御流華道弘友会
●京都府 伊根町 ●ホスピタリティツーリズム専門学校大阪
●京都伝統工芸館 ●京都センチュリーホテル
●日本ハラル開発推進機構
研修のテーマ :  観光振興