ベトナムでの上下水道の構築に向けて/ベトナム都市整備システム(上下水道)の構築 上級行政官研修(2012年2月)

(1)ベトナムの研修員から上下水道の現状を報告していただき、日本側関係者との意見交換を行ったワークショップには、多くの日本人の参加を得た(2回合計で51名)。

PREXは、JICA大阪からの委託を受けて、ベトナムの中央政府及び地方政府の上級行政官44名を対象とした「ベトナム都市整備システム(上下水道)の構築 上級行政官研修」を2~3月に実施しました。ベトナムでは上水道の普及率は、都市部で約76%ですが、漏水率は約30%と極めて高く、一方下水道の方は、処理場で処理されている割合は、対象エリアの10%弱の状況です。このため、上下水道の設備が進んでいる日本の状況を学ぶことは、ベトナムからの研修員にとっては、今後の計画を立案する上で大いに参考になったものと思われます。

(2)大阪市水道局で採用されており、漏洩修繕時に使用される伸縮性を有する鋳鉄管の継手を熱心に観察している研修員。

(3)大沢地区の農業集落排水事業を視察し、熱心に質問をする研修員。

研修実施の背景

本研修は、2011年11月に関西経済連合会がベトナムにミッションを送り、ベトナムの計画投資省から上下水道の研修を実施して欲しいとの要請を受けたことに始まります。その後、関西経済連合会が、JICAと調整を重ね、JICAの研修として急遽実施することが決まりました。PREXは、JICAからの公示を受け、大阪市、神戸市を始めとする自治体、上下水道・公害・都市計画の専門家、関西の水関係の技術を有する企業の協力を得て、関西のこれまでの経験を広く紹介する研修内容で提案し採択され、実施したものです。ベトナムから要請された研修員は、44名と極めて多く、1回の実施では研修成果が期待しにくいため、同じ内容で2回に分けて研修を実施しました。

ベトナムの上下水道普及の現状と問題点

研修の初めに、自治体の方、関西経済連合会傘下の企業関係者にもご参加をいただき、研修員からベトナムの地方都市を含めた上下水道の現状について報告していただき、日本側の関係者との意見交換を図るワークショップを開催しました(写真(1)参照)。ベトナムでは都市住民への水道普及率は76%となっていますが、漏水率が30%と高いことが大きな問題点です。また料金徴収が各経費に相応するほど十分でないことも大きな問題点です。一方都市以外では、水は井戸水や河川水を利用することとなりますが、井戸水、河川水共に汚染されています。

下水道の方は、下水処理事業の対象は50~60%であり、そのうちで既に処理されている割合は10%弱と極めて少ない状況です。フランスの統治時代から、下水道そのものは整備されており、現在も雨水も合わせて集める合流式の下水道はかなり整備されていますが、下水処理場がないため、大部分は未処理のまま川に放流されているのが現状です。また、都市以外では、浄化槽が設置されている場合もありますが、一般的には汚水および生活排水は直接河川へ放流したり、土中に浸透させています。また、下水処理場が設置されている地域でも、下水にお金を払う意識が希薄なため、料金徴収に困難が伴っています。

大阪市水道局で漏水検知技術を学ぶ

日本では、水道の漏水率は5%以下ですが、ベトナムでは30%と高く折角浄水場で処理した水が顧客まで届く間に30%もなくなるため費用の無駄であり、この漏水率を下げることは緊急の課題です。日本で実際の漏水調査を行っている現場を見ていただくことは困難であるため、大阪市の体験型研修センターで漏水調査方法についてデモンストレーションを行っていただくとともに、鋳鉄管の漏洩の修繕方法についても教えていただきました(写真(2)参照)。1回目の研修では、放送局の取材もあり、この様子が放映されました。

神戸市建設局、産業振興局で合併処理浄化槽および農業集落排水事業を学ぶ

神戸市では、六甲山があり傾斜地が多いため古くから雨水排水網が整備されていたため、下水処理方式は大阪市や京都市と違い汚水だけを集めて処理する分流式が採用されています。また山岳地域や農村部等人口密度の低い地域が多く存在します。人口は155万人で、98.7%に相当する153万人が公共下水道を利用しています。人口密度の低い地域では、20~1000戸を対象とした小規模の下水処理施設である農業排水処理事業が25か所あり(対象は約1.3万人)、更に人口密度が低い地域では、各戸を対象とした生活排水と汚水とを同時に処理する合併処理浄化槽が取り付けられています(対象は約5千人)。今回は、大沢地区農業排水処理施設を見学させていただきましたが、ベトナムでもニーズが高く研修員の関心は高い様子でした(写真(3)参照)。

企業と懇談会を行い、企業のベトナム進出・市場の拡大への機会を提供

関西には、水関係の最新技術を保有しており海外展開を図っている企業が多くあります。日程が2週間と短かく、今回を自治体を中心に訪問させていただいたため、研修期間中には2社の企業しか訪問できず、なぜ来てくれないのかと言われた企業もありました。本研修はPREXが関西経済連合会の支援の下で実施している研修であり、またJICAの研修でも最近では日本企業にも裨益があることが求められるため、企業の技術を紹介し、研修員と直接交流ができる機会を設けるために、企業との懇談会を行いました。各回3社の企業から技術の説明をしていただきました。今回の懇談会が企業のベトナム進出・市場の拡大につながることを願っています。

終わりに

PREXとしては、2006年から円借款に伴う訪日研修や草の根技術協力事業で上下水道関係の研修を実施してきましたが、これまでは1都市で上下水道に特化した研修でした。今回の研修では、公害や都市計画の話も含め、関西地域の多くの自治体・企業の持っている経験を幅広く紹介する研修で、技術研修としてはPREXで初めての上下水道関係の研修でありましたが、皆さま方のご指導・ご協力で研修を無事に終えることができました。研修の準備段階からご協力・ご指導いただきました、大阪市水道局・建設局、神戸市水道局・建設局を始めとする方々には、厚く御礼申し上げます。

事務局次長 尾上

研修概要

研修名
ベトナム都市整備システム(上下水道)の構築
上級行政官研修
実施期間
第1回目:2012.2.28(火)~3.9(金)
第2回目:2012.3.12(月)~3.23(金)
研修参加者
第1回目:21名
第2回目:23名
委託元機関
独立行政法人国際協力機構(JICA)大阪国際センター
関係機関
関西経済連合会
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
関西経済連合会、光岡和彦氏、日水コン玉井義之氏、大阪市水道局、大阪市建設局、歴史街道推進協議会、針江生水の郷、サントリー山崎蒸留所、神戸市水道局、神戸市水道サービス公社、神戸市産業振興局、滋賀県琵琶湖環境部、京都市上下水道局、疏水記念館、クボタ、神鋼環境ソリューション、神戸市建設局、日本サニテーションコンソーシアム 河井竹彦氏、COM計画研究所 高田昇氏、堀場製作所、日立造船、大林組、大成機工、東洋エンジニアリング
研修のテーマ :  環境