母国での確かな実践につながる訪日研修を目指して/JICA中米カリブ地域官民パートナーシップによる地域産業振興研修(2011年8月)

大きな世界地図を前に研修員がそれぞれ生立ち、職歴を説明しました。良いチーム作りのためのアイスブレーキングです。

本研修の目指すところは、貧困の削減を目的として、研修員が各国・地域の文化や資源を活かした新たな産業の創出に取り組むことです。2011年度の研修は6カ国から8名が参加しました。本研修は今年で5回目をむかえ、回を追うごとに帰国研修員の母国での活動に具体的な成果が多くでてきています。そのためには毎回さまざまな工夫や働きかけを行い、研修の成果が少しでも膨らんでいくようにプログラムを組み立てています。今回は初めて、過去の研修に参加した5 カ国の帰国研修員をテレビ会議でつなぎ、彼らのアクションプランの実践状況を報告してもらい意見交換を行いました。この試みは今年度の研修員への大きな刺激とモチベーションにつながりました。

アイスブレーキングと導入研修
  この研修に限らず、研修員の多くは日本へ来て初めて顔をあわせます。全員が中米カリブ地域のスペイン語圏出身とはいえ、お互いのぎこちなさがあっては4週間もの間、本音のディスカッションやアクションプランの策定はできません。まず初日は良いチームを作り上げる一歩としてアイスブレーキングを行いました。大きな世界地図を机に広げ各人が生まれた町、育った町、家族と住む町を示しながら、生い立ちや職歴を説明し、日本まで来た飛行ルートも地図上で示しました。ある女性研修員は、母国から7回も飛行機を乗り換えて大阪に到着しましたが、彼女の荷物は、どこかの空の上でまだ届かず、男性研修員のだぶだぶの服を借りて研修に参加していました。夜は街まで繰り出し、コースリーダーの先生も交えてウェルカムパーティーです。もともと根っから陽気な中米の研修員たち、緊張もほぐれて、あちこちで乾杯の声が絶えませんでした。 研修の導入部は、コースリーダーである奈良県立大学の村田先生をむかえて、母国や各研修員が直面している課題や困難、こうしていきたいという将来ビジョンを共有し意見交換をしました。また講義では、地域振興の考え方や進め方について学んでいきました。

さまざまな地域振興事例を体感
  この研修では、関西各地の地域振興の実践事例をさまざまな角度から学びます。 “川端”という生活そのものを観光資源とした滋賀県高島町針江の事例、地域資源(黒壁)、地域文化(祭りなど)を活かした官民連携のまちづくりをおこなう滋賀県長浜市の事例、点在する職人工房をネットワーク化し地域振興の拠点とした奈良県の工房街道の事例、いまや過疎地の地域振興の代名詞ともなった徳島県上勝町の“いろどり”など研修員の母国でもアイデアや方法次第で展開できそうなところを訪問しました。訪問後は各事例についてディスカッションを行い、事例から学んだことを整理し、自分たちに適用できる方法を考えます。 こうしたプロセスの中で、母国、地域の生かすべき強み、克服すべき弱みや、気付いていなかった文化や資源も整理され、自分たちのなすべきことや、進め方のイメージが膨らんでいくのです。

テレビ会議によるアクションプラン進捗ミーティング
 今年度初めての取り組みとして、6カ国間のテレビ会議を通じて、昨年までの帰国研修員が作成したアクションプランの進捗を共有し、先生の指導、研修員間のディシカッションを行いました。従来は、研修終了の半年後に進捗レポートを提出することで一連の研修終了と位置づけていましたが、それだけでは過去の研修や実践の成果が翌年以降の研修員のアクションプランや動機付けにつながりにくいという反省がありました。そこで画面越しではあるもののリアルタイムで先輩研修員のプランの実践状況を共有し、意見交換することで、年度をまたがって研修のPDCAをまわしていく取り組みを行うことができました。この研修は過去4回の訪日研修に参加した帰国研修員が41名おり、そのうち18名が多忙を押して各国首都のJICAセンターに駆けつけてくれました。今回は4カ国についてアクションプランの詳細な進捗報告をしてもらいました。成功事例ばかりではありませんが、日本で学んだことが、母国で着実な成果につながっていることが、参加者全員に行動への強い動機付けとなったことは間違いありません。その中で、もっとも刺激を受けたのは、日本で参加した今年の研修員8名でした。帰国後の自分たちのプラン実践のイメージが、研修への良いプレッシャーになった様子です。

アクションプランを携え帰国の途に
 来日当初は曖昧模糊としていた自分たちのアクションプランが、講義やディシカッション、事例の分析、テレビ会議を通じて次第に具体的で実現可能なものに成長していきました。そして、修了式の前日には全員がその成果を発表し、母国での実践を約束しました。今年度の研修員はアクションプランの発表後、3つの誓いを披露してくれました。
1.自国と中米・カリブの自然文化・歴史と人々を誇りに思う。
2.日本で受けた研修を良い機会として活かす意志を持つ。
3.仲間の能力を信じ、ともに地域・中米発展のための活動を行う。

 研修員のチームワークと切磋琢磨、帰国後の研修成果の実践に心よりエールを送りたいと思います。

研修概要
研修名
中米カリブ地域官民パートナーシップによる地域産業振興
実施期間
2011.8.25(木)~9.16(金)
委託元機関
独立行政法人国際協力機構(JICA)大阪国際センター
 

お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順):奈良県立大学村田武一郎教授、近畿経済産業局、針江生水の郷委員会、長浜まちづくり株式会社、あいとうエコプラザ菜の花館、日吉屋、味きっこう、兵庫県淡路県民局、いろどり、農園杉・五兵衛、天の川実行委員会野村代表、工房街道推進協議会


研修のテーマ :  地域振興