ベトナム人経営者の意識改革が必要だ!/ベトナム JICA日本センタービジネス実務研修(2010年4月)

ベトナム日本センターでは、企業経営者の育成を支援する「経営塾」を実施しています。PREXでは、この「経営塾」プログラムの一環として実施する訪日研修を4月7日~16日の10日間実施しました。ご指導頂いた上田義朗教授のメッセージをご紹介します。

兵庫県中小企業家同友会の紹介で神戸鈑金を訪問した。

ダイハツ工業を訪問し、
製造工程における生産管理方法を学んだ。

上田 義朗

流通科学大学 情報学部経営情報学科 教授

ベトナム初訪問の1994年以来、様々なベトナム人とつき合ってきた。その中で最近、ようやくベトナム人の気持ちが少し理解できるようになった。今回の研修生を通して気がついたことを指摘してみよう。

短期的な視点

仕事に熱心なことはベトナム人の定評である。しかしその観点は短期的または近視眼的である。より具体的には、自社の当面の利益には強い関心を示すが、そうでなければ無関心になりがちである。企業の長期的な発展のためには、日本の研修先のすべてが格好の教材になるはずなのだが、その意識は低いように感じられることもある。

損得勘定が判断基準

2000年7月のベトナム株式市場の開設を契機に、市場経済の浸透はベトナムで著しい。自分にとって金銭的に「損か得か」の意識は強い。私には多数のベトナム人の友人や知人がいるが、その関係は彼・彼女らにとって私が得な存在だからでないか。このように考えると人間不信になってしまう。他方、依然として日本人に比べるとベトナム人は愛国精神が強く、儒教文化の影響も強い。損得勘定を離れた国家や会社に対する献身が今こそ求められている。

上から目線の管理

日本企業の「カイゼン」などの実践が日本研修の成果として指摘されることが多い。そしてベトナム人経営者の多くは「帰国してから部下にやらせます」と言う。これでは経営者の目が届かない所では手抜きが起こる。経営者自身が「率先垂範」し、全員参加の経営を目標とするべきである。こういった日本経営の特徴を理解しなければ、日本研修の効果は表面的である。そうしないのであれば、徹底してマニュアル化した管理体制を導入しなければならない。

誇り高いベトナム人

ベトナム人は全体として誇り高い国民である。あらゆる困難と辛苦を克服して民族の独立と統一を果たしたという歴史教育の効果なのだと思う。われわれ外国人もこの点には留意して交際しなければならない。この意識が強くなると、ベトナムにはベトナムのやり方があるという態度になる。しかし少なくとも国際ビジネスの標準を学ぶ必要がある。文化や歴史を大切にして誇りに思うことと、国際ビジネスの慣行を謙虚に学ぶことは別の問題である。両者を混同してはいけない。

現在のベトナムはWTO加盟を果たし、国連の非常任理事国を経験し、アセアン議長国となっている。また隣国のカンボジアやラオスへの投資も急増している。国内インフラの整備も進行中である。このような現状は、もはやベトナムが発展途上国ではなく中進工業国になっていることを示している。このことをベトナム人経営者が自覚し、さらなる発展の段階に向けて自らの意識変革が求められる。それが今後の企業存続の可否の分岐点になるように思われる。研修生の帰国後の健闘を期待したい。

事業概要

研修名
ベトナム日本センタービジネス実務研修
実施期間
2010.4.7(水)~16(金)
研修参加者
ベトナムの企業経営者、企業幹部、大学教官等15名
委託元機関
独立行政法人国際協力機構(JICA) 大阪国際センター
お世話になった方々、企業・団体(敬称略、訪問順)
大西秀雄PREXシニア専門家、ダイハツ工業、パナソニック人材開発カンパニー、かね徳、カゴメ、三菱商事、流通科学大学上田 義朗教授、エアコンサービス、兵庫県中小企業家同友会、神戸鈑金工業、森合精機、ダイキン堺製作所臨海工場
研修のテーマ :  経営管理