老舗企業女性経営者対談。上羽絵惣株式会社×梅乃宿酒造株式会社(2018年3月)

上羽絵惣株式会社 十代目 取締役 石田 結実様
梅乃宿酒造株式会社 五代目 代表取締役 吉田 佳代様

   

























 

石田氏)
ネイルは40色ぐらいある中で、伝統色のネイルと限定販売のネイルを持ってきました。 よろしかったら、どうぞ試してください。

吉田氏)
とても素敵な色と名前ですね。

石田氏)
色名は、自分の子供の名前を付けるかのように私が付けています。はじめは、日本の伝統色の色名を使っていたのですが、色数が増え、日本の伝統色のルーツを知れば知るほど、先人が色に思いや情景を重ねて色名ができてきたことがわかり、色にあう名前をつけるようになりました。水茜(みずあかね)、金雲母(きんうんも)、珊瑚(さんご)、紫苑(しおん)・・・視覚で感じる色のイメージと色名が重なってお客様にストーリーを感じてもらい、「胡粉ネイル」がここまで広がったのかなと思います。

上羽絵惣株式会社は、京都の下京区に1751年に創業した顔料屋、絵具屋です。今では、日本最古で、260年以上、1200色の日本の色を扱ってきました。1751年というと江戸時代中期の絵師伊藤若冲が活躍したころです。
2005年、私が家業に戻った時は、バブル崩壊とともに日本画の市場が縮小していて「廃業」の言葉も頭をよぎりました。ですが、日本の伝統の技術と色を絶やせないと考えた時、家業を守るのが私の使命だと思ったのです。資格はない、勉強は嫌い、この私に何ができるのか?時代のせい、人のせいにはできません。人として、商売人として生まれてきたからには、人様に喜んでもらえるもの、色を通じてお客様をハッピーにする仕事をしよう、と着地点を定めました。そこからは、とにかく人と会って、色のことを一から勉強し、生まれたのが、ホタテの貝殻の微粉末から作られる顔料「胡粉(ごふん)」を使った「胡粉ネイル」です。とにかく前進あるのみでした。このネイルは、刺激臭がなく通気性に優れていることから、ネイルから遠ざかっていた女性にも人気で、日本全国の病院やがんセンターにも置いてもらっています。
読者の皆さんや若い方に伝えたいのは、「せっかく生まれてきたのだから情熱的に生きたいでしょう。得意技がなくても想いと願いを持てば、物事はそちらに進んでいく。想いと願いがないと始まらない!」ということです。

吉田氏)
胡粉ネイルはきれいですね。それに、ほんとに匂いがない。これは女性は爪に塗るとテンションあがりますね。

石田氏)
顔や服は鏡を見ないと見えませんが、手の先は常に目に入りますからね。脳が活性化するそうですよ。 爪をキャンバスに自由に色を使ってアートができます。
今はチョコレート色にチョコレートの香りがするネイルも販売していて、バレンタイン期間限定のセットもあります。※セットは2018年2月14日までの期間・数量限定販売

今は、色名をつけたり、商品にストーリーを作ったりしています。
海外への展開も考えてます。台湾の会社とタッグを組んで台湾全国に「胡粉ネイル」を展開できればと考えています。先週は、海外出身の営業部長と、台湾を訪れていました。ブロガーさんが30人ほど集まってSNSで発信してくれていました。公式ショッピングサイトでは、世界各地のお客様がお買い物をしてくださっています。皮膚の色に合わせて色をアレンジしてあげる方がいいのかなど、調査をして、石橋叩くところは叩きながら進めたいと思っています。

吉田氏)
梅乃宿酒造株式会社は、奈良県葛城市に1893年に創業し、今年3月で126年目になる酒蔵です。私は、5代目代表取締役の吉田佳代です。
奈良は“清酒”の発祥地。伝統に重きを置く業界です。当社も100年以上日本酒だけを作ってきました。しかし、時代の流れの中で、日本酒を作る寒い時期だけ職人を雇用するスタイルが、今の若い人には受け入れられなくなりました。当社に働きに来てくれていた岩手県の花巻市からの職人さんも高齢化し、人数がだんだんと減っていきました。
このままでは、日本酒を作る技術が伝承できないと考え、地域の若者を年間雇用するようにしました。更に蔵人の夏場の仕事として考えたのが梅酒です。梅酒は、日本酒の仕込が終わった5月、6月、7月に実がなり、お酒に付け込むことができます。一年を通じて職人さんを雇用するのに適したお酒でした。
しかし、梅酒は「おばあちゃんが家で作れる」お酒。日本酒を作る技術を持つ酒蔵が作るとなると、業界からは大バッシングを受けました。「業界の恥さらし」「とうとう梅酒に手をだした」と批判を受けたのです。今から14年前のことです。
逆風の中、当社は、喜んでいただけるお客様を見て、これは絶対間違っていないと梅酒を作り続けました。
最近は、日本酒を作る会社が梅酒やリキュールを作るのも普通と考えられるように変わってきました。当社を批判していた会社の中にも、梅酒を製造するところもでてきています。今の当り前は次の当り前ではないと実感しています。
研修員の皆さんには、事業は、今がいい状態であっても、常に新しいことに取り組まないと衰退してしまうということをお話ししています。
これからも「新しい酒文化を創造する蔵」として、他の業界とコラボしたり、海外に拠点を置いたり、いろいろ種まきをしていきます。将来一つでも収穫できればと願っています。

海外への輸出についても、当社は、約20年前から取り組み始めました。20年間の経験の蓄積があり今やっといくつかの収穫ができるようになっている状況です。今、日本酒の輸出のセミナーや説明会が開かれていますが、聞きに行ってすぐにうまくいくものではないと思います。
それと同じように、今新しい種まきをしないと、未来に刈り取るものができません。しんどくなってから種まきはできません。状態のいい時に、新しい手を打っていくことが必要だと考えています。

今年は、阪急百貨店を中心に洋菓子のモロゾフ株式会社とコラボして、バレンタイン用に商品を作りました。異業種とコラボレーションも積極的に進めたいです。

このゆず酒の色は、着色料は一切使っておらず、とてもきれいな色だと思っています。 来年は、ゆず酒を発売して10周年になりますので、記念イベントでネイルとコラボできたらと思います。リキュールのターゲット層は20代、30代の女性ですので実現できそうですね。

吉田氏)
働いていると、私はこんなに幸せなんだとすごく思います。若い方の中には、仕事に暗いイメージを持つ方が多いようですが、仕事のやりがい、充実感がもっと若い方に伝えられたらと思います。

石田氏)
仕事は楽しいものであって欲しいです。その方その方個性があるから、好きなことを仕事にできれば最高にしあわせだと思います。嫌な仕事を無理やりせずに、自分で探したり、自分自身をコントロールしたり、工夫を色々してみるのもとても良いと思います。棚からボタモチを待っていても何も落ちてこなくて、思いや願いをもって努力をすればきっと何かが見えてきます。

吉田氏)
私も、時代のせいにしたり、人のせいにしたり、待ちの姿勢をとるのは嫌いで、どんどん行動する性格です。逆風にも負けず、信念を持ち続け、行動される石田様のお話をお聞きしていて、同じ匂いを感じました。
待ちの姿勢で、棚からボタ餅が落ちてくるのを待っていても、何も変わりません。考えているだけでは、しんどくなるので、私は、何かあったらすぐ動きます。日本全体も一人一人がやる気スイッチを入れてどんどん行動すると、もっと前向きな社会になると思います。働くことに悲観的なイメージを持っている若い方も多いようですが、働くのってホントに楽しいですよね!私たちは仕事をしているからこんなに幸せなんだと思います。

―2018年2月6日梅乃宿酒造株式会社 梅乃屋本舗 での対談内容をまとめたものです。―