地方と都市をつなぐ心の地域経営。地域が日本の元気を育てます。/鳥取県智頭町 町長 寺谷誠一郎氏(2016年2月)
鳥取県 智頭町
寺谷 誠一郎町長
智頭町 [鳥取県]
人口7,110 人(2015 年5 月1 日)智頭町の93%は山林エリア。
智頭町の活性化のための活動は1985 年、行政主導ではなく民間の集団から生まれた。
この集団を後押ししたのが現町長。

石谷家住宅(国・町指定登録有形文化財)は、智頭の宿場町「智頭宿」の中心部に位置する。当時は大庄屋をつとめていた。

智頭町を案内する智頭町長とコロンビア研修員

住民の発案で実現した森のようちえんを見学する研修員


「JICAコロンビア官民連携による地域産業・観光振興研修」では、コロンビアの行政官17名が、鳥取県の智頭町を訪問し、寺谷町長から「まちづくり」の成功事例について紹介いただきました。寺谷町長が取り組む「誰もが誇りに思うまちづくり」についてPREX国際交流部北條部長と広報担当西本がインタビューしました。

〈PREX 北條〉…智頭町は、奈良時代から交通の要衝であり、江戸時代には、鳥取県最大の宿場町として栄えました。その繁栄を今に伝えるのが「石谷家住宅」。寺谷町長は、地域振興の柱として町への寄贈を懇願し、現在は一部を一般公開しています。今「石谷家住宅」は地域住民の誇りとなっています。
また、町長は、「四面会議」「百人委員会」などの地域活性化ツールをうまく活用し、住民がわがこととしておこなう「まちづくり」を進めています。智頭町には、都市から戻ってきた若者や移り住んできた人もいます。ここに住む住民自らがアイデアをだし、アイデアを実現するために発信し、自分たちの中からリーダーを作るしくみ。これが、受け継がれた森を育みながら、地域を進化させていると感じます。

〈寺谷町長〉…
世界から反響のあった「森のようちえん」

「国にお金がない、お金がないからできない」というと国民は納得し、結局国は何もしない。わたしは、「町は町民のもの。私には知恵がない。だから、みなさんに知恵を借りたい」とメッセージを投げ「百人委員会」を立ち上げた。8 年前だ。「百人委員会」では農業、林業、福祉等をテーマに決め、メンバーが1 年間討議し、智頭町で何をするのがよいか案を出してもらう。わたしの仕事は、外から飛んできたものの中から、これだと思うものを判断し、予算をつけることだ。そして事業の結果の責任は、すべて自分がとる。それが町長の仕事だと考えている。
例えば、「森のようちえん」も「百人委員会」から飛び出してきた案を実現させたものだ。「森のようちえん」は子供を山に連れて行って自由に遊ばせるだけのようちえん。当初は、「建物のない幼稚園は文部省から認められない」「町には正式な幼稚園があるではないか」等、反対意見がいろいろあった。だが、「森を使った幼稚園で子供を育てたい」との発案者の思いや「森を活かした子育ては智頭町でこそできる、これからの教育のあり方だ」という声を聞き、作ることにした。ある時、テレビ局の取材が入り2 年間追いかけて「森のようちえん」が撮影され、1 時間の番組となった。この映像は、160 カ国に6 回配信された。反響は大きく、智頭役場は世界からの問い合わせを受ける役場となった。現在も全国から視察が絶えない。森のようちえんに子供を入園させたくて移住してくる家族もいる。

外から風を入れ、新しいアイデアを掴め

現場のすべてをリーダーが知っておくということは無理な話だ。リーダーは、何が必要か現場に判断させなければいけない。そして、いざというときに責任を取る。それが仕事だ。
あとは、ガッと窓を開いて外からの風をいれ、その中から新しいアイデアを掴んで予算化し、実行させることだ。ニセモノのリーダーがいる組織は、ねずみが回り車で回り続けるように、いつまでも同じところを走るだけ。何も変わらないし何もできない。そんな組織は多いのではないか。

「子供たちが町をつくる!」

智頭農林高校の生徒は、この智頭駅を降り、役場の前を通って学校に通う。私が町長になった当時、とにかく元気がなかった。高校を訪問して「この生徒たちは何をやりたいのか、なんでもいいから足跡が残せることに取り組ませてほしい」と話したら当時の校長は、「この学校の生徒は勉強ができないのです」と言い、小学校4 年生の教科書で生徒を学ばせていた。そんな教育があるのだろうか。
お城が堂々と力強くあるのは石垣があるからだ。石垣に、四角、三角、さまざまな形があるからお城は、地震があっても微動だにしない。「日本」という国が揺るがないためには、四角、三角さまざまな石垣が必要だ。同じ形の石垣を作ることが教育とはいえない。
次の校長は、智頭農林高校の2 年生による「百人委員会」を作りたいと言ってきた。2 年生なら1 年間、町のことを学び、自分たちで「智頭の町をこうしたい」「こんなことをしたい」と提案し、在校生の間に自分たちの提案が形になるのを見られる。「自分たちが考えたことが智頭を作っていく」という経験を子供たちにさせたいという思いを持っていた。わたしはこれを素晴らしいと思い、高校生による「百人委員会」を作った。今年、智頭農林高校の生徒たちは、「観光甲子園※」で一等をとるまで成長した。
それぞれの県・地域に個性がある。教育は地域が個性をだしてやればいい。外国の人にも来てもらい、ターザンごっこをしながら智頭町の森の中で英語を教える。そういうものをやりたい。今年の「百人委員会」のテーマは「子供たちが町を救う!」。中学生、高校生、住民が智頭のことを考え、「おせっかいのまち智頭町」をめざしたい。

※「 観光甲子園」は全国の高校生が地域の魅力を生かした観光プランで日本一を競うコンテスト。 平成25 年度は、鳥取県勢初出場の県立智頭農林高等学校が、全国75 校136 プランの中から見事グランプリ(文部科学大臣賞)に輝きました。

〈PREX 北條〉…町長、ありがとうございました。コロンビアの研修員は、日本の地域創生の取り組みに共感し、日本人の心を実感したようでした。来年の研修では、町民の皆さんと智頭の自然や地域振興の取り組みを体験し、「民泊」もプログラムに取り入れたいと考えています。そうすることで日本・コロンビアが、共通の課題についてもっと相互に学びあえるでしょう。ひき続きよろしくお願いします。