今後のアフリカ向け研修事業に関する考察 JICA国際協力専門員 相川次郎氏(2014 年12月)
(独)国際協力機構 国際協力専門員(農業・農村開発)
相川 次郎

ウガンダ元研修員と圃場視察

ジンバブエ農業省スタッフ(元研修員)らと協議

ODA の実施機関であるJICA は、技術協力の一環として対象国における技術協力プロジェクトと合わせて研修員受入事業を実施してきました。研修員受入事業では、開発途上国から、国造りの担い手となる研修員(おもに行政官)を受入、様々な分野で専門的知識、技術の移転を行っています。2012 年度は、143 カ国・地域から11,581 名の研修員を新規に受け入れ、前年度からの継続の人数を合わせると12,216 名でした。地域別でみると、サブサハラ以南のアフリカは、アジアに次いで全体の研修員のうち約20% を占めます。ODA 全体の予算が縮小する中で、研修員受入事業の効果の最大化は重要な課題となっており、プログラム化の議論と相まってJICA 及び関係機関の間で活発な議論がなされています。以下、小職が考える2つのポイントを共有したいと思います。

1.現地での実践にかかる支援体制

研修が終了し帰国すると、各研修員は、研修で学んだことを実践することが期待されます。しかし、活動実施のための予算不足、あるいは研修で習得したものに対する理解不足など種々の事情により、活動が進まないケースが多々見られます。一方、出身母体が技術協力プロジェクトのCP 機関であったり、研修員自体がプロジェクトCP である場合、高い確率で研修において習得したことが何らかの形で活かされます。あるいは、研修後のフォローアップが研修の一環として盛り込まれてある場合、現地で活動実施の阻害要因を取り除くことができ、より実現性が高くなります。
研修の立案計画に当たっては、研修成果の有効活用にかかる対象国における支援体制の有無を十二分に検討されるべきです。例えば、技術協力プロジェクトとの連携を考える場合、研修目的とプロジェクトの目標との整合性についてまで考えることも必要ではないでしょうか。

2.先進事例より「普通」

一定の成長を遂げたアジアと異なり、昨今経済発展が徐々に進んでいるとはいえ、アフリカからの研修員が日本の最新事例を学んだとしても、それを自国ですぐに活用することは難しいものです。また、研修員の多くは、行政に勤務する公務員です。よって、研修員は、行政官の視点で日本の事例を見ています。一方、研修中に紹介される一部の先進事例は、むしろ行政の手を借りずに民間活力によって発展を遂げてきたものもあります。先進事例が出てきた背景をよく理解せずに、表面的な事象のみに感銘を受け、ただ単に「それを自分の国でも」と考える研修員が少なくないように感じています。アフリカからの研修員は、脆弱で機能的とは言い難い行政機関が出身母体であり、業務の質的改善を目的として研修に参加しています。日本の行政機関が「普通」のこととして実践していることも、研修員にとっては、大いに参考になるでしょう。例えば、日本の普及員が農家と頻繁にコミュニケーションをとっている姿や普及機関と卸売市場が定期的に情報交換を取っている現場を見ることは、研修員にとって刺激的であるようです。行政のサービスとは離れますが、日本の一般的な農家の方々は、「普通」のこととして施肥時期や量などの投入量と金額とともに、収穫量やその販売額などマメに記帳して営農の効率化を図っています。小職が知る限り記帳をしているアフリカの農家は非常に少ないです。研修員が、公的な普及サービスの一環で営農記帳を広めることは、現実的なアクションのように思えます。研修計画に際しては、日本の「普通」を見せて、研修員に考えさせることが重要であると思われます。

研修員受入事業は、非常に手がかかります。すべての研修を上記1 で述べたような短期的な成果を求めるものにしようとすると実施回数を減らすしかないでしょう。しかし、特に本邦研修には、日本ファンを増やし長期的な成果が見込める効果があります。今後は、短期的成果重視の研修と長期的な成果を期待する研修とターゲットを明確に分けたメリハリのある調整も必要かもしれません。
今回、急きょアドバイザーとして参加の機会をいただいたタンザニア行政官向け研修では、研修員が多くのものを学び、充実した日々を過ごしたことをうかがい知ることができました。今後、上記私見を多少なりとも加味いただいたうえで、さらに素晴らしい研修を運営いただくことを願っています。