関西圏の 活力源としての ODA/独立行政法人国際協力機構(JICA)関西センター
独立行政法人国際協力機構(JICA)
関西所長 佐々木 十一郎

巨額の財政赤字と少子高齢化に伴う内需の縮小や長引く経済停滞。東日本大震災と原発事故、それに伴うエネルギー問題。これだけ並べると、将来に対する明るい希望、それを支える活力などという言葉が力を失ってしまう。しかし、このような状況だからこそ、我々日本人は、日本人であることに誇りを持ち、自信を持ち、挑戦する心を奮い立たせる必要がある。先に発表された政府の「日本再生戦略」も『私たちの先人は、これまでにも幾多の困難を乗り越えてきた。その際、我が国は、異質な存在や新たな知識に「開かれた心」を持って「交流」し、様々な能力を組み合わせて「混合」し、無駄なものを削ぎ落しながら「変容」させ、「わびさび」に象徴される「引き算の文化」のような日本独自の新たな価値を生み出してきたのである』と述べている。

PREXの人材育成事業の心

この「開かれた心」、「交流」、「混合」、「変容」といったことがらは、まさに、これまでPREXが取り組まれてきた「人材育成」の根幹をなす考え方であろう。この過程で、対象である開発途上国の多くの人材が育成されたわけであるが、同時に、事業に携わる日本人も混合、変容に至っているのではないだろうか。そのことが、またこの事業を20年以上にわたり継続してきたことが、関西の強みを形成してきているのだと考える。井上会長も『PREXの人材育成は、企業にとっての短期的な実益ではなく、百年の計として大きな物差しで「人材─交流─発展」という思想で実施してきた』と話されている。今、世間からは、定量的な評価を求められるが、これらの成果を目に見える形で説明できないのが、何とももどかしい。

新たな変容のための方策

そこでJICAでは、より地域に密着し地元にもメリットとなる新たな戦略として、民間連携(BOPビジネス連携促進や中小企業対象のフィージビリティ調査)やグローバル人材育成(民間連携ボランティア制度)に取り組み始めた。途上国に対する協力と並行して、地元の民間企業や地方自治体の要望に的確に応え、JICAが途上国と日本国内の双方を元気にしていこうとするものである。従来から、PREXを中心に民間企業の技術やノウハウを活かした本邦研修が実施されてきたが、これをさらに明示的に促進する。韓国とほぼ同一の総生産規模(約8,400億ドル)を有する関西圏、その根幹をなす「ものづくり」を下支えしている中小企業の技術を、成長する海外市場に展開するため、ODAを呼び水として使ってもらう。このために、現在、近畿経済産業局、JETRO近畿、中小機構近畿、関西経済連合会、大阪商工会議所、PREX、関西の自治体等が持つ枠組みにJICAも参加させてもらい、情報を共有し、できるだけ一体となった支援を心がけている。 民間連携の分野では、新参でありノウハウのないJICAであるが、PREXを通じて民間企業の方々との接点が増えてきている。例えば、8月にベトナム日本センターの経営塾受講生25名を対象に2週間の研修コースが実施された。研修員は、関西の企業の現場を見て経営者の講義を聞き、日本型の経営理念や事業計画の理解を深めた。加えて、関西の中小企業8社との交流会が実施され、ベトナム進出にあたり直面する課題や懸念事項に対し、現場に根差したアドバイスが双方向でなされ、個々の企業間のネットワークが形成された。このようなPREXに育ててもらった経験を活かして、JICA関西として、関西圏の活力の源にもなれるODAを実践できればと思っている。