輝く30周年を迎えるための仕掛けを/関西経済同友会 斉藤 行巨 氏

斉藤 行巨

関西経済同友会 常任幹事・事務局長

スリランカから南西に下ると、ほぼ赤道直下のインド洋にサンゴの国・モルディブが浮かんでいる。大の親日国であるこの国を初めて訪れたのは約30年前のこと。日本の青年たちが栄養失調に悩むモルディブの子どもに鶏卵を食べてもらおうとヒヨコを現地に送り、育てる運動を始めることを報道するためだった。

いまでこそモルディブは年間4万人ほどの日本人が観光やマリンスポーツを楽しむために訪れ、すっかり有名になったが、当時訪れる日本人はまばらだった。しかし、特筆すべきは当時から、旧英国保護国でイスラム国家でありながら、日本との政治・経済関係が極めて密接で、国連では絶えず日本支持を貫いていた。

その背景には、日本のODAが深くかかわっていた。観光と並ぶ基幹産業の漁業の近代化や、温暖化で海面が1m上昇すると8割が水没するといわれるほど標高の低い国土(平均2.4m)を守るための防波堤建設など、地元民の暮らしと命に役立つ目に見える援助を積極的に行っていた。それをモルディブが高く評価したのだ。

ところが、少し深く現地の人々と交流すると、別の面も見えてきた。例えば、日本のODAに深く感謝しながらも「日本はずるいよ」と彼らは愚痴る。詳しく聞くと、ODAの金額の一定程度が日本側に還流するから、100%全部、モルディブで使えないというのである。

 

関西財界の有数の“ヒット商品”PREX

恐らく、モルディブ以外の国々でも同じような指摘があるだろう。事実ならば、きちんと解決されなければならないが、そうした問題を埋めて、途上国の人々と友情の橋を架けるのが民間の役割といえる。さしずめPREX(太平洋人材交流センター)はその先端を走っている。1990年春に設立されたPREXがこれまでに育成した途上国の中堅幹部が1万2000人以上との実績がそれを物語っている。PREX設立に主導的に取り組んだ関西経済同友会としてここまで成長したことを素直に喜んでいる。関西財界が過去30~40年間に生んだ有数の“ヒット商品”といっても過言ではない。

PREXをワンストップ・ステーションに

どんな組織でも30年も経つと制度疲労が起きる。惰性が組織を蝕んでくる。だから、絶えず改革の手を休めてはいけない。PREXもあと10年もすると、30年の節目を迎える。そのときに、今以上に輝いているためにはどうすればいいのか、よく考えてほしい。専門的知見が乏しいので具体論は専門家の事務局にお任せするが、素人的立場から二つお願いしたいことを述べたい。

一つ目は、研修生を徹底的に日本ファンにする仕掛けを考えていただきたい。いま日本の国際社会での存在感が薄れているといわれる。原因はいくつかあるが、PREXで研修した人々が熱烈な日本ファンになり、しかも母国でそれぞれの分野の指導者になってくれれば、日本の存在感を高める財産に十分なる。同窓会の組織化をより充実させ、同窓会間の交流を盛んにすることにあわせて、もう一工夫が必要だと思う。

二つ目は関西の企業や自治体が持っている国際交流のための組織や外国人留学生支援制度をPREX中心に統合・連携できないか検討していただきたい。PREXが国際交流や留学に関する関西におけるワンストップ・ステーションになれば、途上国側の利便性も高まるし、統合によって費用対効果もあがると思う。

PREXの設立は、1984年、関西経済同友会「経営と技術の交流センター設立構想」の提言が発端です。1988年の太平洋経済協力会議(PECC)大阪総会で、宇野関経連会長が関西の産官学の代表としてアジア・太平洋地域の人造り協力のための組織を大阪に設立することが提案され、1990年4月にPREXが設立されました。

【社団法人 関西経済同友会 ホームページアドレス】http://www.kansaidoyukai.or.jp