中米地域の帰国研修員との関係強化に向けて/中米帰国研修員フォローアップ事業(2010年10月)

コスタリカの帰国研修員との懇親会。中米貿易研修の第一期生も集まってくれました。

PREXは、帰国研修員を対象としたフォローアップ事業及び現地ニーズ調査を計画的に実施しています。今年度は、中国同窓会及び重慶同窓会を対象としたフォローアップ事業(5月実施)に続き、中米の帰国研修員を対象にしたフォローアップ事業を行いました。10月3日から14日まで「中米地域官民パートナーシップによる産業振興研修」をご指導頂いた奈良県立大学の村田武一郎教授にご同行頂き、中米のコスタリカとニカラグアにて帰国研修員のフォローアップとニーズ調査を実施しました。

PREXの中米関連事業と今回の訪問

PREXでは中米地域を対象に、2006年度から「中米・日本貿易振興のためのキャパシティ・ディベロップメント研修」を、2007年度から「中米地域官民パートナーシップによる産業振興研修」を開始し、2009年度までに同地域から約100名が訪日研修に参加しました。今回は、PREXにとって初めての中米訪問で、現地の状況にあった研修が実施できているのか、そしてPREXの研修がどのように現地で活かされているのかという点を確認するために、フォローアップとニーズ調査を実施しました。また、中米地域における帰国研修員との効果的なネットワーク構築方法も今回の調査のテーマの1つでした。

訪問国のコスタリカとニカラグア

ニカラグアの帰国研修員が、新たに開発した地場産品を村田先生へ。

ニカラグアの乳業会社(CENTROLAC)

コスタリカとニカラグアは、ともに人口500万人ほどの農牧業を主要産業とする国です。しかしながら、両国の経済規模には大きな差があり、ニカラグアのGDPはコスタリカのGDPの5分の1程度となっています。コスタリカでは、1949年に軍隊を廃止し、教育予算にGDPの6%以上を充てることが憲法で定められました。現在では、インテルなどの大企業がコスタリカへ進出していますが、優秀な人材が揃っていることが進出の要因になったといわれています。一方でニカラグアは、1980年代後半まで内戦が続き、現在も政治の混乱が続いています。国民所得や識字率は中米の間でも低い水準とされ、人口の約70%が貧困層といわれています。

現地企業への訪問

今回の出張では、帰国研修員のアレンジによって、政府機関や企業・団体等を視察する機会を得ました。ニカラグアでは、3年前にニカラグア資本で設立された乳業会社(CENTROLAC)を見学しました。ニカラグアでは、以前は国内に多くの牛乳生産者がいるにも関わらず、海外から粉末ミルクを輸入していたそうですが、同社が設立されたことによって、消費者は安価な値段で国産牛乳を購入することができるようになり、牛乳生産者の所得も2倍以上になったそうです。

よく中米の研修員が「中米には様々な資源があるけれども、全く活用できていない」と言うのを耳にしますが、地域の資源が活かされるようになれば、生産者の生活が大きく改善される可能性があることを実感しました。

帰国研修員の活躍

マリア・イサベルさんの帰国後の活動発表

コスタリカでのフォローアップセミナーの様子。

コスタリカでは8名、ニカラグアでは12名の帰国研修員がフォローアップセミナー・懇親会に参加し、帰国後の活動状況を紹介してくれました。

2008年度の「中米地域官民パートナーシップによる地域産業振興」研修に参加したコスタリカの太平洋果物生産者組合に所属するマリア・イサベルさんは、村田先生がコスタリカに来られるとの連絡を受け、セミナー当日は朝の4時に起きて、駆けつけてくれました。「研修に参加して、ものの見方や考え方が変わった。まるで違う自分になったみたいに感じた」と話してくれたマリア・イサベルさん。帰国後は、生産品の多角化や新商品の開発、農地の有効活用など、地域に収益が残るしくみづくりの構築に取り組んでいることを発表してくれました。

現地に訪問することの重要性

PREXは今年20周年を迎えましたが、帰国研修員とのネットワークをどのように構築していくのか、また同窓会組織をどのように活性化していくのかという点が今後の取り組むべき課題の1つとなっています。PREXの事業はこれまで人と人とのつながりを重視してきましたが、帰国研修員に対しては、現地を訪問する機会が少なく、ほとんどの場合はメールでのやりとりが中心となっています。今回フォローアップセミナーに参加頂いた帰国研修員の多くは、研修に携わった講師の先生や職員との再会を楽しみに遠方から来てくれ、実際に顔と顔をあわせることの重要性を改めて認識しました。今後は現地を訪問する機会を増やすためのしくみづくりを構築し、帰国研修員にとってPREXがいつまでも身近な存在だと思ってもらえるような関係ができるように取り組んでいきたいと思います。

国際交流部 コースプランナー 北村 圭

講師の声

コスタリカとニカラグアを訪問

奈良県立大学 教授

村田 武一郎

日本へ帰ってくると、商品の種類が豊富で、あまりにもカラフルかつ精緻なことに気づく。このことは、たくさんの中小企業が競い合って、多様な商品を市場に投入し続けていることの現われでもある。日本の状況が良いことなのかどうかはさておき、このような状況は、コスタリカやニカラグアでは見られない。

まず、国内の市場規模が異なる。コスタリカの人口は約452万人、ニカラグアは約567万人で、兵庫県(約559万人)の規模である。この規模で、多様な商品をということ自体に無理がある。当然、業種の多様性はなく、主産物である農産物の付加価値を高めようとしても、加工工程(洗浄~乾燥~搾汁~ボトリング~パッケージング)に必要な機械やパッケージ用品を自国で調達できないのである。

そして、従来、海外に一次産品を提供するだけに止まっていたことから、消費市場の情報を掴んでいない。その結果として、消費者が望む商品の精緻さを実現するまでに至っていない。バイヤーからは、品質向上を求められ、それを果たすための人材育成や機械の購入に、今後とも多くのエネルギーを投入しなければならない。

日本のように、国内市場が大きければ、また時代に応じた適切な産業政策が講じられていれば、例えば、大学で食品機械の技術者を育成し、自国の加工機械で付加価値を高められたものを……、と思われる。

訪日研修が与えたインパクト

一方、PREXの研修に参加してくれた人たちは、異口同音に「研修参加前と参加後とでは、ものの見方、考え方が変わった」と言ってくれた。そして、研修中に作成した行動計画を着実に実行し、さらに発展させていることに感銘を受けた。

コスタリカのPROCOMER(コスタリカ貿易振興公社)、ニカラグアのアスンシオン農牧業協同組合やCEI(貿易・投資センター)などのように、毎年職員を派遣してくれている組織では、日本で学んだ人たちが知識・情報を共有し、それを地域に広め、かつ地域リーダーとして地域の人々や企業の質の向上に奮闘している状況が見られた。

地域の総合力を発揮させる人材の育成を

学ぶ(気づく)能力がある人たちが研修に来てくれていることを喜ぶとともに、今後とも、彼らのような人たちに、多様な視点と知見(ものの考え方、優れた事例など)を持ち帰ってもらうことに注力する必要がある。

なお、彼らと接していて、また、いくつかの組織を訪問して、地域(国)の総合力を発揮させるうえでの戦略性・計画性・主体性の不足が感じられた。専門的知識を持ち帰ってもらう研修とともに、地域(国)の総合力を発揮させるプランナー・コーディネータの育成が急務であると考えられる。

事業概要

事業名
中米帰国研修員フォローアップ事業
出張期間
2010.10.3(日)~14(木)
  • コスタリカ:2010.10.4(月)~8(金)
  • ニカラグア:2010.10.8(金)~12(火)
訪問先
コスタリカ貿易庁(PROCOMER)、JICAコスタリカ事務所、コスタリカ経済産業商業省、中米域内産業技術育成センター(CEFOF)、JICAニカラグア事務所、ノチャリ協会(NOCHARI)、ピタヤ生産者協会(APPINIC)、セントロラック(CENTROLAC)、全国農業畜産組合(UNAG)