PREXシンポジウム2014「関西の国際化と途上国の人材育成」を開催

PREX は、これまで培ってきた経験を活かし、ここ数年は、中堅・中小企業のグローバル化支援、大学のグローバル人材育成支援などに取り組んでいます。今回のシンポジウムでは、日頃PREX の活動にご協力いただいている有識者をパネリストにお迎えし日本の途上国支援の活動がいかに各国の発展に寄与し、日本のパートナー育成につながってきたか、あわせて途上国の人材育成が企業のグローバル化とどうかかわっているのか経験をご紹介いただくとともに今後の課題等について議論を深めました。 本テーマに関する関心は高く100 名近くの方々にご参加いただきました。基調講演、パネルディスカッションでのパネリストのご発言、参加者の声の一部をご紹介します。

■シンポジウム開催概要

日 時:2015 年3 月20 日(金)14:00~17:00
会 場:大阪産業創造館4 階 イベントホール

【基調講演】政策研究大学院大学教授・アジア太平洋研究所 主席研究員 大野 泉氏
【パネルディスカッション】「関西企業のグローバル化と人材育成・人材交流」
【コーディネーター】大野 泉 氏
【パネリスト】
南海金属(株) 代表取締役 柳 善朗 氏
(株)中農製作所 取締役社長 西島 大輔 氏
(株)松栄堂 執行役員 藤本 悌志 氏

基調講演
政策研究大学院大学 教授 大野 泉氏
「途上国への開発協力と日本のパートナーシップづくり」

大野 泉氏

私はさまざまな援助機関で、途上国の国づくりの支援を手伝ってまいりました。13 年ぐらい前に今の大学に移り、今はアジアやアフリカからの留学生に教えております。同時に、政府開発援助(ODA)事業などを通じて途上国の産業開発支援をお手伝いしています。
新しい時代の中で、私は日本の開発協力と、日本企業の海外展開の両方に日本らしさがあり、2 つを組み合わせたら、ますますオンリーワンの国際貢献ができると信じています。目的志向、現場主義、共同主義、さまざまな相手の国の文化と社会を感じ取るセンシティビティ、現地の目線、寄り添い型、これは日本自身が援助を受けながらキャッチアップし追いつけ追い越せとやってきた国だからできることです。
もう一つ、日本というのはある意味、成熟した国です。さまざまな課題に立ち向かい、今まで解決してきた経験があります。公害問題、環境問題、神戸、兵庫を含め防災、災害復興等などです。これから解決すべき課題、高齢化問題等もあります。いろんなノウハウ、それを共有していく豊富なリソースが地域にあります。
そしてものづくりにおきましてはどのような国に比べても負けない、充実した企業支援のしくみが中小機構、JETRO、JICA、自治体、NPO、いろんなところにあります。そういった意味で官と民が一緒になって協力していくことこそ、新しい時代のより広い、より深い協力とパートナーシップにつながると思っています。それこそオンリーワンの国際貢献です。
日本の途上国への支援は、日本の歩みを映す「生きざま」です。いろんな時代の環境があり、日本の外交政策、経済政策の目標、目的におけるODA の位置づけは変わってきていますが、変わらない太い価値観、日本が大事にしている理念やアプローチというものがあります。そこを民間と一緒になって支援してきています。その中で特に産業の人材育成支援は、日本のものづくり文化、それに深く根ざしたきわめて日本らしい、官と民が一緒になってできるオンリーワンの素晴らしい国際貢献でますます重要になってくると思っています。今後より広い、深い官民連携、現地との人材・組織のつながりが必要になります。そういった意味で人材育成支援を通じた途上国とのパートナーシップづくりを考えていくことが重要だと考えています。



パネルディスカッション
「関西企業のグローバル化と人材育成・人材交流」
【(株)中農製作所 取締役社長 西島氏】

西島氏

弊社は、創業が1949 年、約65 年間東大阪で金属の部品を精密加工する会社です。2014 年の9 月にベトナムのホーチミン市に駐在員事務所を設立しました。ベトナムでの事業戦略は「人材を生かした戦略をしていこう。」「コストをかけずに進出する。」「将来レンタル工場から自社工場へ」という目標を立て日本で製造している部品をベトナムで生産しはじめています。試作の評価を終え量産化をはじめた製品がちょうど今、船に乗っており、来月には日本に届きます。約2 年前からベトナムに出ようと決め苦労しながらようやくここまでたどり着いたという状況です。
【(株)松栄堂 執行役員 藤本氏】

藤本氏

弊社はお香の会社で創業が1705 年です。お香の原材料は、ほとんどが漢方薬の材料と一緒でほぼすべてが東南アジア、インド、アラブやアフリカから入ってきます。
私個人は2003 年から2005年まで青年海外協力隊に参加してアフリカのザンビアにおりました。
【南海金属(株) 代表取締役 柳氏】

柳氏

創業は1953 年で2011 年に堺市のミッションでベトナムに行き進出を決めました。ベトナムの工場には約800 坪ぐらいのイベント広場を作り、夜は夜間学校を開き、昼も夜も仕事ができる環境を作ろうと考えました。工場の2 階は600 平米のサブフロアになっております。2 階にトレーニングセンターを作り、人材育成の場所として使おうと考えています。ベトナム工場の目的は、溶接と生産技術力を生かしベトナムやアジアの発展に貢献するということです。
途上国の人材育成や途上国との交流が、ビジネスにどういった影響を与えているのか
【藤本氏】
ザンビアでは二つ活動の柱がありました。栄養改善プロジェクトと結核プロジェクトです。当初は支援金がありましたが、2 年後に支援金がなくなり、現地でお金を稼ぎ、そのお金でプロジェクトを回しました。養鶏を始めたり、製粉所みたいなものを作ったり、いずれも自分で建物を建てるところから始めました。この経験がビジネスを知るきっかけとなり、今に生かされていると考えています。
また、当社では、現在、中国人が二人とベトナム人が一人、社員としております。入社する経緯としては、日本に留学に来て日本のことを勉強し、もっと日本のことを知りたいので伝統産業にという流れが多いです。彼らがいてくれることで最近増えている、中国からのお客さまへの対応や、商品開発に彼らの意見が生かされています。
【柳氏】
当社では現在、ベトナム人が、エンジニア3 名、ワーカー19 名、計22 名が働いています。重要な工程は、彼らが担っています。ベトナムに行こうと思った理由も、ベトナム人の実習生や社員がいたからです。今から30 年前、日本企業は、農業実習生ということで現在のアセアンのかたを受け入れました。私どもも交流の機会がありましたが、アセアン各国から来られた農業実習生の中で、ベトナム人がダントツに優秀だったので将来、ベトナムと関わりが持つ時代が来るかもしれないという思いがありました。
【西島氏】
当社では7 年前に4 名、そこから3 年ごとに3 名ずつベトナム人のエンジニアを雇用しました。最初の4 名のうち2 名は、現地の駐在員事務所で引っ張っていってもらうためベトナムに帰国しております。残りの2 名は日本工場のライン長として後輩に率先して行動し働いてくれています。
彼らの存在が、ベトナムへの進出につながりました。
中小企業では、海外に進出する時、社員が賛成してくれるかというと難しいと思うのです。状況が良くない中で社長が進出しようといったところで、「社長、そういうとことちがう。今、現場大変や」となるでしょう。当社は共に働くベトナム人社員の思いがあったので、日本人のスタッフたちも、彼らの夢を成功させるため一緒になって動いていこうと、海外に展開する雰囲気になったと結果的に感じています。
将来の夢をお聞かせください
【西島氏】
これからは短納期であるとか、高難易度の品物に特化した新しい設備を入れるとか、我々にしかできないものづくりをやっていきたいと思っております。ベトナムでは低コスト化をすすめ、量産になった場合の対応に備えたいと思います。ベトナム人は、ベトナムに帰ったらベトナム人に戻ると言われてます。信頼関係はあると思っているのですが、大事に育てた人材が転職してしまうという点では非常に不安があります。いかに現地のスタッフと我々が心を通わせ、つないでいくかが大事と思っています。
【柳氏】
私は社長になって43 年になります。「トップは人を育てる」と考え昭和57 年に南海学園を作りました。私は、企業は学校であると思っています。また日本という国は、国そのものが学校です。そして企業の事業は人材で決まると思っています。
私どもの夢は、ベトナムで人づくりをおこなう「モノづくり協働体」という構想です。近畿経済産業局の支援の中で行おうとしています。南海金属のベトナムの工場に研修センターを作るというもので、工場の一部をサブリースして、今進出しようと検討している関西の企業などに入ってもらい、ベトナム人の人材をそこで育てる構想です。
これからの時代は協働、共創の時代と理解しております。近畿経済産業局の海外進出した会社に対する支援体制は、まあこんな国があるのかと思うぐらい手厚い支援をしていただいております。今は円安の局面でベトナムに進出した会社はほとんど困っています。そういう会社さんにお話をすると、一緒にやりたいという要望があります。この大阪地域は日本のどこにもないチームワークがあります。チーム関西という言葉がありますが、ベトナムに行き、この素晴らしい関西の地域で我々は仕事をしているという実感を深くしております。
【藤本氏】
 会社の一番の目的は、今後も長く日本のお香文化を支える企業であり続けることです。社訓にお線香のように細く長く、くすくす、くすぶるところから香りはあまねく広がっていくとあります。いろいろなことに手を出すなという意味です。ですのであれこれ手を出すという方向は目指していません。
ただ最近海外からのお客さまは非常に増えています。香りは嗜好品で、ある程度生活レベルが上がってきた人々が関心を持つものです。そういう意味で中国やアジア諸国の人たちも関心を持ってくる分野です。そこにビジネスチャンスはもちろんあると思います。個人的には、いずれ売りに行けたらいいなあとは思うのですが、大きな問題は海外に売りに行って勝負できるような人材がなかなかいないということです。海外に出て現地で接する若者たちの熱気と、日本の採用活動で出会う日本の若者たちとの熱気にずいぶん差があると感じます。海外では日本から学んでやろうとか、日本とビジネスしたいとか、熱い思いを持つ若者たちに会います。逆に日本の若者には元気がないと感じます。
【コーディネーター 大野教授】
今、ある意味で、新しい国際化の時代に来ています。印象的だったのが西島さんと柳さん、両社ともベトナム人が会社の鍵として活躍されているということです。日本国内でも、日本人と協力し会社を支えるベトナム人が不可欠な人材になっているということでした。技能実習生を中心とした時代から、今は正社員として雇われたエンジニアが活躍する時代になっています。それから、両企業とも、元留学生を雇っておられる。そういった意味で、日本とアジアとは、持ちつ持たれつで成立する時代になってきているのだと、改めて感じました。
これからの時代は日本だけではなく、相手の国と一緒になって共創、co-create しながら、しかも日本の良さを加味して競争に勝っていかなければいけない、そういった時代だと思います。そういった時に、やはり途上国のかたがたの力も借りながら、日本の持つ、いい強みを活かして、官民連携を次の新しい段階に進化させていくことが大事だと思います。


シンポジウムの全内容は下のPDFでご覧いただけます。
参加者の声(アンケートより一部抜粋)
  • 基調講演で開発協力の歴史と共に、現在、未来の支援の在り方を学ぶことができた。日本独自の支援のあり方やPREXが行おうとしていることについても理解を深めた。(学生)
  • ベトナム(海外)に進出されている企業経営者の方の生の声から優秀な海外の社員(ベトナム人)が他社に引き抜かれる等、現場の悩みを知ることができた。大企業以上に中小企業の方が海外に開かれたチャレンジグな会社であることも理解できた。こうした中小企業の皆さんが頑張っておられることが広く発信されるとよい。(会社員)
  • 今までPREXについてあまり知らなかったが、説明を聞いて“人づくり 途上国と関西を結ぶ”の重要性を再認識した。「関西地域の自立と発展」のためにも今後ともPREXの事業に期待したい。(団体)