PREXシンポジウム2012「ODAによる中堅・中小企業の海外展開への支援」
概要

3月19日に、PREXはJICA関西とともにシンポジウム「ODAによる中堅・中小企業の海外展開への支援」を開催しました。
PREXの中期アクションプロジェクトでは「関西における中堅・中小企業のグローバル化支援」を推進中で、オール・ジャパンでの中小企業海外展開支援の一翼を担うJICA関西からの委託で、中小企業の海外展開状況やニーズに関する調査などを行いました。当シンポジウムでは関西の中堅・中小企業の皆さんにODAによる支援状況を紹介するとともに、海外展開推進中の企業の経験・支援のあり方について話し合っていただきました。
本テーマに対する関係者の関心は高く170名を超える方々にご参加いただき好評を得ました。
基調講演、パネルディスカッションでのパネリストの発言をご紹介します。

【開催日】平成25年3月19日(火) 13時30分~16時40分 於 大阪国際交流センター
【基調講演】JICA関西 佐々木 十一郎所長
「ODA・JICAによる中堅・中小企業の国際化支援の取組み」
【パネルディスカッション】「中小企業経営者のニーズと支援のあり方」
【コーディネーター】阪南大学 大槻 眞一名誉教授
【パネリスト】
(株)中央電機計器製作所 畑野 吉雄会長
(株)中農製作所 西島 大輔取締役
(株)浜田 浜田 篤介社長
中小機構近畿 国際化支援室 堀 昌徳室長代理
JICA関西 佐々木 十一郎所長

基調講演
「ODA・JICAによる中堅・中小企業の国際化支援の取組み」
JICA関西 佐々木所長

JICA関西
佐々木 十一郎所長

今日は、新しいJICAの側面を皆さんにご紹介し中堅・中小企業、関西の皆さまにJICAのスキームをご活用いただいて、安倍首相の掲げる「強い日本を目指す」そのために「日本の企業さんにとってもメリットのあるODAを目指す」というところをご理解いただきたいと思っています。お話は(1)ODAあるいはJICAがどんなものなのか、(2)日本を取り巻く世界情勢(特に貿易とODA)、(3)中堅・中小企業に対するODAを使った支援、(4)その支援の今後の方向性です。
まず、ODAですが、これはOfficial(政府)による開発途上国を対象としたDevelopment(開発)で1人当たりの国民総生産の割合が低い国に対する開発をAssistance(援助)するということです。ODAというのは、二国間と多国間に分かれます。二国間の中で技術協力、有償、無償という三つの大きな種類があります。2008年からほぼすべてのスキームがJICAに一元化されています。技術協力では1,500億円、有償では8,800億円、無償では1,000億円、合わせて1兆円を超える規模で政府開発援助を実施しています。
JICAは今新しい側面で、日本の民間企業の方々にODAを海外進出の端緒に使っていただける事業を始めています。これまでは民間との連携は研修員の受入れと専門家の派遣が中心でしたが今後はさらに新しいスキームを目指してやっていきたいと考えています。
途上国の課題解決に企業のビジネスを活かすため2012年度から新しく実施した事業にニーズ調査、案件化調査、途上国政府への普及事業の三つのスキームがあります。全体の予算としては約20億円の規模です。それぞれのスキームで単価の上限を決め企業からの提案の形で実施しています。今回はニーズ調査が8件、案件化調査が32件、普及事業が10件の実績があります。
例えば普及事業は「民間提案型普及・実証事業」として5,000万円から1億円に単価を上げましたので設備や資機材の購入費用にも活用できます。この1億円の中で、企業さんのモデルとなるような機材などをJICAが購入して現地に輸送して現地で引き渡すことができるスキームに変わります。
今後の方向性ですがこの三つのスキームの規模としては、2012年度は20億、2013度は40億に倍増した予算で実施する予定です(図1)。「民間連携ボランティア」は2億円の規模で企業の人材育成にも寄与したいと思っております。
最後に、PREXでは、2012年度約30のコースで300人の人材の育成をしていただきました。その過程で、いろいろな企業さんにお世話になっております。企業との窓口として、PREXや地方自治体のノウハウも借りてやっていきたいと思います。
(図1)ODAを活用した中小企業等の海外展開のための支援事業
※JICAではこの他にも民間企業が活用できるスキームを展開しています。


パネルディスカッション
「中小企業経営者のニーズと支援のあり方」  コーディネーター 阪南大学 大槻名誉教授

パネリスト:
(株)中央電機計器製作所
畑野 吉雄 会長

【(株)中央電機計器製作所 畑野会長】アメリカで開催された展示会への参加が海外展開のきっかけです。10年ほど前からはPREXの依頼でJICAの研修員が見学に来るようになり、様々な国への親近感から海外出張の機会が一気に増えています。海外市場、特に今からは「アジアンドリーム」でアジアに大きなビジネスチャンスがあります。机上で調べるだけでなく、現地に行って自分で見て聞いて確かめるところから始めるべきです。私自身「社長が歩けば仕事にあたる」「笑う門には福来る」「念ずれば夢かなう」という3つの言葉を信じ、常に大きな夢を持って積極的に行動することから、企業が発展すると思っています。

パネリスト:
(株)中農製作所
西島 大輔 取締役

【(株)中農製作所 西島取締役】 今年10月にベトナムに進出する計画です。国内での仕事の減少、取引先のニーズ、雇用の確保などが背景にある。展示会に出展する中で、金属加工へのニーズも実感しており海外マーケットも狙って行けると感じています。ベトナムでは日系進出企業をターゲットとし、ベトナムから第三国への輸出も考えています。 ベトナムへの進出にあたって、いかにお金をかけずに出るかということを考えなければなりません。ホーチミン近郊の空港近くのレンタル工場で立ち上げる予定ですが、ローカルの工業団地でコストを抑えます。ベトナムを選んだ背景には8名のベトナム人正社員の在籍があげられます。商売において人のつながりは重要です。ベトナム人社員の5年間の勤務経験の中で信頼関係を築いてきました。8名のベトナム人社員のうち、まず2名にベトナムの工場で働いてもらう予定です。

パネリスト:(株)浜田 
浜田 篤介 社長

【(株)浜田 浜田社長】 鉄のリサイクル、解体工事などの事業とともに、8年前からバッテリーのリユース事業を開始しました。ものづくりを「動脈産業」と呼ぶのに対し、リサイクルでものづくりに返すわが社のようなビジネスは「静脈産業」と言われます。JICAとの関係の始まりは鉄のリサイクルやパソコン解体の施設への見学でした。研修員から太陽光発電システムとリユースバッテリーの使用で、電力使用がピークになったときのデマンドを下げる実証実験の様子を見たいという要望があり、研修を実施するPREXに相談し太陽光とバッテリーの組み合わせ、メンテナンスを紹介するようになりました。海外にはこれから出て行きたいと考えています。先日、JICA事業でバングラデシュにも訪問し、今後JICAの制度なども活用して海外への展開にチャレンジしたいと考えています。
支援機関の支援状況について教えください
【JICA関西 佐々木所長】 近畿経済産業局「海外展開支援施策ガイド2012」でもJICA関西の制度を紹介してPACIFIC RESOURCE EXCHANGE CENTERいます。ぜひ関西の企業の皆様に活用いただきたいと思います。海外展開における課題の一つ「人」については「民間連携ボランティア制度」があります。中小企業が従業員を途上国に派遣する際の企業の負担を極力少なくするようにしています。また国際協力の求人サイト「PARTNER」に登録することで必要な人材を探すこともできます。
「ノウハウ」への支援として先程申し上げた新しい3つのスキームを含む調査等をご用意しています。

パネリスト:
中小機構近畿
経営支援課 課長代理
堀 昌徳 氏

【中小機構近畿 堀氏】 中小機構近畿には、海外展開支援として無料の窓口相談があります。専門ごとのアドバイザーがおり、全世界の案件に対応できます。何度相談に訪問しても無料のため上手に活用ください。海外にいるアドバイザーも企業への支援が可能です。F/S(フィージビリティ・スタディー)の支援もしており、進出先の決定、ターゲット、商流などに関して現地で調査するサポートをアドバイザーが同行して行います。この対象となるには審査が必要で、ホームページで募集情報を提供しています。企業は費用の3分の1を負担することで活用できます。リスクをできるだけ下げるためには可能な限り調査をすることが重要です。
展示会の支援もあり、現場でアドバイザーと通訳が同行し商談をサポートします。更に中小企業大学校では海外展開の管理者向けの研修などを行っており、人材育成の面でもサポートをしています。
海外展開の中で困ったこと、よかったことなどをお教えください
【浜田社長】 随分以前から海外を視野に入れ準備を進めていましたが、取っかかりがないままでした。グローバルな資源循環の仕組みづくりを考えていたことからJICA の調査事業でバングラデシュの現場を見ることにつながりました。他の国でも環境ビジネスの可能性を探っていますが、各国には立派な法規制があるものの形骸化していることも否定できません。やはり民間の力だけでなく、JICAなど政府に近いところと話をしながら「静脈ビジネス」の途上国での展開を考えるべきだと感じています。
【西島取締役】 国内での注文も減り明るい兆しがなかなか見えません。国内では競争原理の中で各社が価格を下げ合って戦う状況で、海外を視野に入れないといけないと考えて進んできました。ベトナムの研修生が非常にまじめにがんばってくれる姿を見て、コミュニケーションを深める中でベトナムの良さを感じるようになりました。その後ベトナム人4名を正社員として採用し、彼らの優秀さやハングリーさで、日本人社員も活気づきました。いま当社の現場ではベトナム人が主力になってやっています。
【畑野会長】 一番困るのは、言葉と人材の問題で、当社では中国人やスイス人を採用しました。海外を訪問する視察団にも多く参加しましたが、回数多く参加してもそれだけでは何もならない、何が必要かということを考えるようになりました。逆見本市ミッションに参加し、進出している日本企業の困りごとを聞く中で、こういう中に本当のビジネスチャンス、マーケットがあり、具体的な仕事が見えて進出しやすくなるということが分かりました。国内にいれば限られた情報と人脈しか得られませんが、海外では現地でネットワークができ、それがビジネスにつながっていきます。今は中国の次に、どこに出るか迷っているところです。
支援に関する要望があれば、お聞かせください
【西島取締役】 金属の部品加工は自社だけで解決できることではないため、単独で海外に出たときにビジネスになるのかということが不安です。東大阪だと地域のネットワークだけで解決できることがかなりありますが、ベトナムではそうは行きません。この点で支援があれば助かると思います。
【畑野会長】 海外では困ったときにすぐに相談したいなということが多々出てきます。アセアンの各国、少なくとも核になる国にはいつでも気軽に相談に行ける窓口・人材を置いてもらいたいです。
【浜田社長】 中小企業が海外に投資する場合、エース級の人材を海外事業に回し、資金も社運を賭けるような投資になります。入り口段階での支援はバリエーションが多いほどありがたいです。また、廃棄物処理の業態特有かもしれませんが、現地政府も絡めた、現地の業界の交通整理などの支援や情報提供などがあるとよいと思います。
企業の要望に対して、支援実施側からのアドバイスなどがあればお願いします。
【中小機構】 国の支援事業として中小企業が共同で海外進出できるよう環境整備を検討中で、ベトナムでは試行も始めています。日本からグループとして展開する際の支援制度も構築中です。海外現地企業とのネットワークも活用してもらえるようにしたいです。海外の窓口としては、中小機構のアドバイザーがベトナムやタイ、インドネシアにかなりいるので、ちょっと相談したいという時には機動的な対応が可能です。また、東南アジアの政府機関とは業務提携関係を結んでいて、現地政府への働きかけもできます。中小機構の職員が政府機関に出向している場合もありますのでご相談ください。
【JICA】 JICAは各国の政府中央省庁と一緒に様々な協力を展開している点が強みです。各国の重点分野などに関する情報を民間の方々に提供することや、個別のプロジェクトを活用いただくことなども可能です。海外の現場に日本人専門家が入って現地政府と一緒になって事業展開しており様々な情報をホームページ上で公開しています。

コーディネーター:
阪南大学 
大槻 眞一 名誉教授

【コーディネーター 大槻教授】海外にビジネスを展開させようとするとき相手国の情報をいかに手にするか、相手の国の中に信頼できる人材をいかに持つかということが大事なことであると思います。PREXから研修・見学の依頼等を受け外国の研修員を迎え入れると、相手の国の事情、どういった経済情勢であるか、どういった暮らしぶりであるか、そういったことがよくわかります。
PREXから研修員を受け入れるということは、相手の国の方にしっかりした技術を教えることになります。それは相手の国の経済を発展させる源でもあります。研修員は日本での生活の中から日本の文化を感じ取り学び取るはずです。国同士がお互いに本当の交流をするというのは、相互に歴史や文化や経済情勢を理解し合いその上にお互いの信頼関係が生まれることです。信頼関係があってこそビジネスは軌道に乗るという側面を持つと考えています。
実際に海外展開をされるときには、このJICAや中小企業機構、JETROをはじめ多くの組織が展示会への出展や視察団の派遣や融資など支援策を用意されています。これらをうまく使っていただきたいと思います。今日のパネラーの畑野さんが「未来は行動力で開かれる」というお話をしておられました。この言葉を今日のパネルディスカッションのまとめとさせていただきます。